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健全黒字経営目指します!

あざとい(あざとい)

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第69話 あざとい(あざとい)



「はっはっはっ!嬢ちゃん、レオナルドを嫁にでも貰う気か?そんな払ったら一年中朝から晩の寝所の中までレオナルドがびっちりくっ付いてくんぞ?…と、悪い。説明が足りてなかったな。さっきの10トニーは飛び込みの1日だけだ。長期はまた別さ。そこは人によるが、専属で長期なら護衛の仕方が変わるからよ、備えが減んのさ。だから長期の日割りならレオナルドでも10もかからねえ。」

 おー、長期割ってヤツか。…携帯電話屋さんかな?家族割とか未成年割もあったりして 笑。

「そうなんですね。勉強になります、教授!」

 はっ?!うっかり教授って言ってしまった!!

「教授?…嬢ちゃん、実は本当にどっかの王族じゃねえのか?こんな場末の斡旋所で教授なんて照れるなあ、おい。」

 ジュードさんが口元を押さえ嬉しそうにしてる。うっかりやらかしてしまったが、照れる眼帯オジ様、ありですね!

「オヤっさん…。」
「ジジイ…。」

 ジト目のお二人はお黙りよ!ちょっと俺が間違っただけだからね!!

「コホン!ええと、金額は1500トニーに変更します。レオさんもそれでいい?」

「それでいい。クソジジイ、訂正を頼む。」

 レオさんは何故かムッとした顔で手形をずいっとジュードさんに押し出す。

「ワハハ、ひがむな僻むな、小僧。じゃあ訂正の手続きすっから、小僧共はニックのとこでも行ってろ。終わったら呼んでやる。」

 ジュードさんは笑いながらシッシッと手で追い払う。
 あ、そうか、訂正の魔法は秘匿されてるんだっけ。

「チッ。ジジイ、コウに変な事すんなよ?コウもジジイに変な事されたらすぐ受付まで逃げてくるんだぞ?」

「レオナルド、オメエ過保護にも程があんぞって言いてえとこだが、オヤっさんのスケベ心は信用できねえな。いつもの御法度ごはっとだぜ?コウちゃんのケツは俺のモンだ。」

 ゲスい笑顔でお下品中指ポーズ、って師匠!なんで俺のケツが師匠のもんになってんの?!

「うるせえ、早く散れ。じゃねえとホントに食っちまうぞ?」

「死ね、クソジジイ。」
「さいてー、オヤっさん。」

 仲良し2人組、同じお下品中指ポーズで去っていった。マジで仲良しすぎんか、あいつら…。

「やれやれ、これだからケツの青い小僧共は…。さあて、じゃあやるか。嬢ちゃん、まずは隣りに座ってくれ。」

「あ、はい。」

 言われるがままにジュードさんの隣りに席移動した。

「いい子だな、嬢ちゃん。ほら、このペンで間違った金額を二重線で抹消だ。その後に正しい金額を下に書き込む。」

 オーケーオーケー、こっちも書類訂正はおんなじっすね!…訂正印は、いらないよなあ。日本みたいな個人ハンコ無いだろうし。

「はい、コレを抹消して正しい金額ですね。」

 手渡されたペンにインクをつけ訂正していく。
 ボールペンじゃないからちょっと書きにくいが、万年筆っぽくほんの少し倒し気味に書くといい感じに書けた。あとこのインク、インク壺内では黒いのに紙にのると、あら不思議!赤インクに変わります!…いや、マジでどうなってんだろ、これ。

「そうだ。嬢ちゃん、なかなか慣れてんな。」

「地元で書類仕事は結構してたんで、こう言うのはまあまあ得意です。」

 結構手書きの書類もあったんだよね、俺の職場。ハンコレスとかそんな言葉無かった 笑。

「ふうん、嬢ちゃんは働きモンなんだな。…よし、赤だから本人に間違いねえな。これはな、魔法のインクで本人なら赤、偽モンなら色が消えるんだ。面白えだろ?」

 …え?俺、これ書いた記憶ないんだが…?
 これ不思議イケオジパワーで書いたヤツじゃないの??

「ふ、不思議だな~!魔道具なんですかね?」

「ああ、作り方は秘匿されてるからどんなカラクリかわからねえが、あの契約の命環めいかんと同じ魔術師が作ったんだそうだ。じゃあ、次だ。次は俺だな。ここからは訂正に関する魔法となる。と言っても、俺が唱える文言は嬢ちゃんには聞こえねえし、見てても魔法属性すらわからねえよ。ホントのとこは口外禁止の契約無しでもいいのさ。ま、内緒にしといてくれ。んじゃまあ、少しだけボンヤリすると思うが、騒がず静かにしててくれよ。」

 ジュードさんがベストのポケットからを出し、を唱える。

 ーーー『何か』は本当に見えないし聞こえなかった。

 ジュードさんがを取り出した瞬間から、俺の全感覚が深い水の中にいるみたいに全てがボンヤリしたのだ。息が自然に吸えるのが不思議だった。多分、魔道具なんだろうな…。

ドンっ!

「…っ!!」

 何かを叩く音がした瞬間、全てがカチリとハマるように元に戻った。
 テーブルを見れば木のハンマーが手形を叩いた跡があった。跡をよく見れば、ちょっと飾り文字で読み難いがリオガ傭兵斡旋所となっている。どうやら木のハンマーは斡旋所のハンコだったようだ。

「あれ?インクが黒い?!」

 さらによく見たらなんと驚く事に、赤いインクで訂正した所が全て黒に変わっていた。

「そいつも何があったかわからねえように色が変わんのさ。さあ、これでしまいだ。ま、一応さっきのは守秘義務になってるから人に言わねえようにな。言っても罰はねえが、斡旋所じゃ良く見られねえからよ。」

 ジュードさんがほらと俺に手形を渡す。

「あ、ありがとうございます!俺、こう言うの全くわからなくて…。また何かわからない事があったら教えて頂けると助かります。」

 感謝の気持ちをこめて深くお辞儀をする。座ってるからなんか変なカッコだけどね!

「いいさ。これも俺の仕事だから、甘えられる時ゃ甘えとけよ。」

 頭をぽふぽふと撫でられた。
 も~、また子供扱いして~!

「ふふっ、そんな事言うと調子に乗って甘えちゃいますよ?」

 にゃんにゃん☆
 あの「一晩で100万稼ぐ!アイドルキャバ嬢の全て」動画の甘え技を真似しました。てへ!

「……お、おう。」

 ジュードさんの時が一瞬止まり、そして今、目が泳いでる。

 うあああ!!調子に乗って何やってんだ俺ぇ!!ちっさいオッさんがにゃんにゃん☆やっても可愛くねえわああ!!

「ご、ごめんなさい。何でもないです…。気にしないでください…。」

 もう恥ずかしくて顔上げられん…。穴があったら深く深く埋まりたいデス…。

「…はあ、人たらしか。こりゃ小僧共が過保護になるのも仕方ねえな。…なあコウ、レオナルドに愛想尽きたら俺んとこ来いよ。俺ならコウを目いっぱい甘えさせてやれるぞ?」

 優しく頬を撫でられ顔を上げさせられる。目が合うとジュードさんの顔が近づきチュッと音を立て、また顔が遠ざかった。

「ふえっ?!?!」

「今度こそお開きだ。嬢ちゃん、小僧共の所に帰りな。そろそろアイツら飽きて、ニックの毛でも毟り始めんぞ。」

 ジュードさんはヒラヒラと手を振り、葉巻に火をつけた。

「…へ?あ?…あ、はい。ええと、ありがとうございました!」

「ああ、またな嬢ちゃん。」

 俺は混乱のまま席を立ち、お辞儀をして執務室を出た。

 …いや、え?は?さっき、チュッって?
 あれ、ジュードさんが、キス…してきたな?

「………ええええっ?!?!」

バンッ!!

 斡旋所に続くドアが凄い勢いで開いた!

「コウ?!どうした?!何かされたのか?!」

 勿論ドアから飛び出してきたのはレオさんでした。

「…何でもないデス。ちょっと色々と驚いただけ。ええと、守秘義務だから言えないけど。」

 …驚きすぎたわ。まさかキスされるなんてさ。だが推しから恋は始まらないって言うか、ジュードさん男だし!はあ、こっちの世界マジ油断ならねえ…。

「…本当に何もされてないのか?今ならエイトールもいるからジジイをやれるぞ?」

 …アンタ、やるって何をやる気なんだ? 物騒な気配しかないんだが?

「守秘義務です。って言うかハイ、訂正した手形。これでちゃんとした報酬になるね。」

 訂正された手形を持ち主の手に返す。

「あ、ああ、そうだな。…本当に、「何もない。」…、そうか。わかった。」

 苦い顔のまま、レオさんは手形をズボッとポーチに突っ込んだ。雑な扱いだな…、150万…。


「…ちょっとおおおお!レオナルドさあああん、早く戻ってきて下さいよおお!!エイトールさんが俺の菓子、全部食おうとしてるううう!!」

 ニックさんの悲痛な叫びが斡旋所から聞こえた。あー、毛じゃなくて菓子を毟り取ってたか…。ニックさんセーフセーフ!


「戻ろ、レオさん。俺、そろそろ腹が空いてきた!」

「そうだな、もう昼だしいちに出るか。」

「へへ、いちのご飯楽しみだな!」

 さあ、次はリオガグルメだ!!

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