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健全黒字経営目指します!

大事なモノがなくなるタイプ

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第56話 大事なモノがなくなるタイプ



 初鹿肉はすっごく美味かった!!
 赤身だからステーキみたいな食いごたえある系かと思ったんだけど、結構柔らかいんだよね。あとサッパリしてて、サフルの実と食べるとめっちゃ進むんだなあ…。正直、食い過ぎたね…。
 レオさんもカレーの辛さ(中辛だよ!)にびっくりしつつも、ビールを煽りながら肉と一緒にモリモリ食べてた。最終的にはカレーにご飯インしてた。結局カレーライス 笑。

 肉も粗方食い終わり、まったりお酒タイムに突入。ちょろよい片手にダラリとソファーに身を沈める。
 バーベキュー台からお役御免された焚き火がパチパチと火の粉を散らしながら燃え、ゆらゆらと揺らぐ火を見ていると何故だか心地よい。
 箱庭の焚き火は火を消さない限り、ずーっと燃えつつも薪がなくならない不思議仕様だ。竈門は燃料必要なんだけどね。

「…いいなあ、こう言うの。」

「そんなシカ肉美味かったのか。」

 隣りでビール片手にまったり寛いでいるレオさんが笑いながら言った。四本目のビールだな、それ。炭酸で腹苦しくなんないのかな 笑。

「うん、シカ肉すげえ美味かった。ジビエ料理、一回食ってみたかったから大満足。…肉も美味かったし腹も大満足なんだけどね、…なんかこう言うまったりした感じがいいなぁって思ってさ。」

 揺れる焚き火から目を上げると、夜空は驚くほど大量の星が瞬いていた。小学校の時行ったプラネタリウムの夜空だ。もし街の光が無くなったらこれぐらい星が見えるのですと解説が流れて映し出されたあの夜空だ。

「星、綺麗だなあ…。アッチじゃ街の光が明るすぎてこの十分の一くらいしか見えないんだよね。」

「そうなのか。あのコウの街は星が見えないくらい明るいんだな。コッチは田舎だから毎日こんなモンさ。まあ、今日はいちつきつきもねえから余計見えるかもしれん。」

 夜景写真でも見せればよかったかな、…ん?一の月とニの月?

「コッチって月が2つあるの??」

「ああ、2つあるな。宵のはじめに一の月、一の月が沈み始める頃に一の月より小さな二の月が出る。んで、ひと月に2回くらいどちらの月も出ない日がある。今日がその日だな。」

「へえ、面白いね。地球は一個しか無いよ。明日見れるかな?」

「今日は星が綺麗に見えるから明日も晴れだ。コウが酔い潰れない限り見えるさ。」

 酔い潰れるって…、どんだけ飲ませようとしてんだ…。

「も~、月が見たいから潰さないで下さいよ~?」

 クスクス笑いながらちょろよいを傾ける。
 はー、なんか酔いもいい感じになってきたなぁ。久しぶりにビールとちょろよいのちゃんぽんしたから、結構ふわふわになってきたぜ…。
 
「…っと!」

 そろそろ飲み切ろうともう一口いこうとしたら、口端から溢してしまった…。おふ、結構酔っ払いかも…。

「おい、大丈夫か?」

 レオさんが缶を取り上げて、こっちを心配そうに覗き込んだ。

「あ、うん、ダイジョーブ、ダイジョーブ。あはは、ちょっと溢しちゃった。酔い覚ましにそろそろ水飲もうかなぁ。」

 袖で口元をゴシゴシして、そのままソファーにぐでーっと横になる。あー、ソファーめっちゃ気持ちいいー。箱庭ソファー、めっちゃ高級ソファーじゃん。

「…水、取ってくるな。」

 レオさんが見るに見かねて、俺から取り上げたちょろよいをぐいっと飲み干し水桶まで水を汲みに行った。

「はーい、オネシャースぅ。コップはバスケットの中にあるよー。」

 焚き火に照らされたレオさんの後ろ姿をぼんやり眺める。
 やっぱめっちゃ筋肉あるよなあ。服の上からでも背筋モリモリなのわかるもん。師匠対策に森で抱きついた時、腰には手が回ったけど背中だったら多分回らなかったよな。おっぱいもすげえ筋肉だし、何カップくらいあんのかな。
 そんなムキムキ筋肉について考えてたら、レオさんが目の前で水を差し出していた。

「ほら、水。」

「アザース。…っと、」

 半分横になりながら飲んだせいで、案の定また口端からちょっぴり溢した。
 レオさんが慌ててコップを取り上げ、テーブルに避難させた。

「…ちょっと起こすからな。起き上がったらもう一度水だ。」

 レオさんはソファーに転がった俺を掬い上げようと背中に手を回した。俺もお言葉に甘えて、レオさんの首に自ら手を回して起き上がらせてもらう。これはもう介護だな…。オッさん通り越しておじいちゃんだぜ…。
 手に力をいれて体を近づけたその時、レオさんの顔が間近に…、


 合わさった視線の先、グリーンの瞳に俺の思考がトロリと溶けた。


 いつの間にか鼻が触れ合い、そのままお互いの唇も触れ合い、そして気づけば緩やかにむつみ合うようなキスになった…。
 ちょろよいの甘い紅茶味のキスは心地良く、絡まる舌は女の子の可愛い舌より全然大きく厚いが、今はその男らしい舌がたまらなく良かった。その心地良さに離れ難く、何度も追い縋り舌を絡めた。

「…っぷはぁ…。…あー、レオさんのキス気持ちイイ…。イケメンは、キスが…上手いなあ…。もっとして…も…いいか、な…、」

「……コウ、酔っ払ってるのか?それとも本気で言って…、っておい、大丈夫か?」

 …なんだか気持ちいいのが…すごくねむ…でも、まだ片付けしてない…じゃなくて…ねむ………い、


「……すぅ、」

「…うわ、寝た…。マジかよ。酔っ払うとエロ小悪魔って、どんだけエロスキル上げてんだ…?拷問かよ。…はあ、明日は酒じゃないの飲ませよう…。」

 眠りこけた性悪な酔っ払いに盛大なため息が漏れた。


§

 ふと目が覚め布団でモゾリとみじろいだ。あー、布団あったかくて気持ちいい…。でもそろそろ朝かなぁ…?

「…う、ン…、も…あさ…、」

「…ん、いや、まだ夜明け前。…あと少し寝ろよ。」

 頭をふわりと撫でられ、薄目を開ければ目の前におっぱい。但し、「お」がオスの雄の方…、は?この雄っぱいはレオさんでは?!?!

ガバリッ

「ちょっ、なんで一緒のベッドに寝てんの?!って、俺まで裸あああああ?!?!」

 飛び起きると何故か俺も裸だった…。まさか、まさか、まさか…これは…?

「…はあ、もしかして酔っ払ったら覚えてないって言うタイプか…。説明してやっから布団に戻れよ。コウは裸、恥ずかしいんだろ?何もしねえから安心しな。」

 ほら、と少し間を開けた。
 …いや、確かに裸は恥ずかしいけど、え?何?コレどうなってんの?レオさんのその残念なモノを見る目なんなの…??

 いや、待て。昨日は……。

 レオさんに強く抗議の姿勢だったが、なんかもしかして実はは俺が悪い…可能性…って言うか、確実に何かやらかしたな?!俺!!
 サアッと一気に血の気が引く。そっとケツに手をやった。あ、パンツ履いてた。

「…ヤってないから。安心しろって。とりあえずまだ早い時間だから、せめて横になってくれ。今日は街まで歩くから体力温存して欲しい。」

 レオさんが呆れ顔でため息をつき、ベッドをポンと叩く。
 あ、そういえば街行くんだった…。体力温存か、確かにそうかも…。
 少し気マズイがすごすごと布団へ戻り端っこに陣取ったが、落ちるぞと真ん中へ拉致られ何故か腕枕…。あれ、デジャヴ…?せめて雄っぱい密着は防ぎたかったので前面腕カードはした…。

 とりあえず事実確認しよう…。

「えっと…、多分俺が裸なのは、俺が自ら脱いだ…?」

「そうだな。全部、コウが自分で脱いだな。」

 …うわあ、全然覚えてない。

「…ははは、そうなんですね。あと他はしでかしたんでしょうか…?」

「大した事してねえよ。酔っ払って屋上で寝ちまったから、俺のベッドで寝かせたんだよ。吐くかもしんねえから横で見張ってたんだ。んで、ベッドにきて少ししたら急にムクッと起きて、吐くのか?と思ったら脱いだ。そして何事もなく寝た。」

 ……全く覚えてない。

「酒は知り合いがいる所でしか飲まないほうがいいぞ。」

 ………あ、これ脱ぐ以外にもなんかやった。

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