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1.転職!転勤!→異世界

直接語りかけてきました

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第15話 直接語りかけてきました



「………。」

「………。」

 ちーん。
 所謂いわゆる賢者タイムのアタマの中でご愁傷様ですってもう一人の俺が言ってる。言うな…。わかってる…。

 目の前のドアには白濁した液体がぶっかかっており、背後には筋肉だらけの現地人がくっついているこの状況。

「…はあー、すげえ良かった。」

 その現地人がめっちゃ甘い空気を纏って、うなじにチュッチュッとキスをしながら俺の腹を撫でているこの状況。

 完全に事後。
 完全にアウトーーーッ!!!!

 うああああああ!!ナニコレ!!!!
 ヤッてないけどヤッちっまったーーーッ!!!!

「正直、素股でここまで盛り上がると思わなかった。コウの身体はエロくて最高だな。次、街に戻ったら腰抜けるまでチンポくわせてやるな?」

 耳元でセクシーボイスが優しく不穏ワードを囁いてくる。そして、今度は口へとうなじから唇がキスしながら登ってくる。
 それは完全に事後のイチャイチャです。
 イケメンはアフターケアもイケメンです。

 そーじゃなーくーてーッ!!

「おい、やめろ!!離せ、レイプ魔ー!!」

 緩んでいた腕から上手いこと身体を引き抜き、まだベトベトで事後な股間をそのままにパンツ類を一気に引き上げる。

「…れいぷま?なんだ、そのれいぷまってのは?俺の事か??」

 キョトンとした現地人。
 
 アーーーーッ?!言葉の意味通じてなーーーい?!言語チートさんどうなってんのーーーッ?!

「レイプ魔って強姦野郎って意味ですからーーーッ!!」

 叫びながらざっと現地人から距離をとる。
 くっ、ドアから離れてしまった!失敗した!

「ハア?強姦野郎だと??」

 強姦野郎と騒いだ事で一気に空気が悪い方へ変わった。俺を捕まえようとしたらしいが股間が丸出しな事に気づき、チッと舌打ちしながらゴソゴソとビッグマグナム様をしまう。

「と、とりあえず!!ここから出て行ってくれませんか?!もう、さっきのは無かった事でいいですから!!」

 ダイジョーブ、おまわりさんには通報しません!!俺の中で、さっきのはちょっと犬(大分大型犬)に噛まれた事になりましたし!!ダイジョーブ!!
 だから頼む、出て行ってくれ!
 俺の尻に安心安全を!

「ハア???何言ってんだ???だいたいさっきのは強姦じゃねえだろ?だいたいお前、強姦されてんのにあんなキスしたり、腰擦り付けてチンポ強請ねだったりすんのか?」

「うっ…!」

 コヤツ、痛いところを突いてきおる…!
 ちんこ強請ねだる事はしてない(多分)!が、キスは…確かに許したよ…?ちょっと、ちょっとだけ気持ち良くなってね…?ほら、そこは男の子だし…?
 
 一瞬怯んだ隙をつかれ、また腕を掴まれ今度は床に転がされた。(と言っても何故か気を遣われたっぽくラグの上にだが)
 しかし、現地人さんは馬乗りで俺を押さえつけている。全く動けない。

「なあ、お前、一体ここで何してる?」

 こちらを見下ろす、その表情は無。
 そこにもう愉快なエロ現地人は無い。
 何故かゾッとした。

「何者だ?」

 まるで人殺しの目。
 人殺しなんて会った事はないがソレとしか認知できない、鋭く暗い目。

 ヤバい、ヤバい、ヤバい、

 ヤバい、ヤバい、ヤバい、

         俺、に殺される、のか?




チャラランラン、チャラー、チャラランラーン
チャラランラン、チャラー、チャラランラーン

「あっ!電話だ!」

 なんと言う事でしょう!

 着 信 で す 。 え ?

「は?何だ?」

「す、すいません、なんか電話きたんでソレ取ってください!!その黒いの!!」

 慌ててスマフォのほうに視線を送り、現地人さんにこちらに寄越すよう頼む。
 現地人さんは何故か素直にスマフォを取ってくれた。俺はスマフォを受け取り電話に出た。

「はい、もしもし、鈴木です。」

『コウさん!通話、スピーカーにして!早く!』

 え、誰?!なんでスピーカー?!
 すごく緊急っぽい声色にスピーカーへすぐ切り替えた。すると、

『…レオナルド…、レオナルドよ…、聞こえますか…、今、あなたに直接語りかけています…、眠るのです…、眠るのですよ…、ほぉら、あなたはだんだん眠くなぁぁる…、眠くなぁぁぁるぅぅぅ…。』

 スピーカーから謎のリラクゼーションサウンドと、怪しい催眠術が流れてきた…。

「………すぅ。」

ドサッ

「うげっ!!」

 現地人さん=レオナルドさん(?)が寝落ちたーーーッ!!
 マジ寝落ちてきたーーーッ!!(物理)
 重っ、マッチョ重っ!!

 ヒィヒィ言いながら重い体の下からなんとか這い出て、呆然とスマフォを見つめる。総括チームと画面に表示が出ていた。

『ふぅ、なんとか間に合った…。〈おー、リアム先輩、流石っすわー〉〈よっ、語りかけのプロ!〉〈ヒュー!プロカッコイイ!〉(ザワザワ)』

 何やら電話の向こうでは総括チームさん達が盛り上がってる、っぽい。

「あ、あの、すいません、何が一体起こってるんですか…?」

『あ、コウさん無事?今、ボスに代わるからね。…、はい、ボスよろしく、』

『やあ航君、大丈夫かい?』

 馴染み?のイケオジボイスで一気に緊張がとける。あああ、もう!もう!

「無事だったけど無事じゃありませんから!!大丈夫じゃないですから!!つーか、これどうなってるんですかーっ!!なんでソッコー現地人来てんの?!?!」

 うああああイケオジの嘘つきー!!

『いやあ、シン君、あ、シン君ってイミナルディアの神ね。彼がアソコはあんまり人来ないから大丈夫ですよって言ってたから…。』

「…むしろ、あの現地人さんよく来てるみたいな事言ってましたが…?」

『…後で説教しときます。ーーーでも、君も少し油断しすぎだよ?赴任した時しっかり自衛するよう話はしたけど、簡単に拠点に入られて接触まで許してる。もし私達が緊急コール入れなかったら最悪の事態もあった。』

 耳が痛いが、事実だ。
 ここには仕事で来たのに…。

 異世界でのリアル箱庭に浮かれて、ただただ部屋作りを楽しんでた。動画では初動の防衛機構大事とか散々語った癖に俺は何をしてるんだ。
 たられば、な話ばかりが浮かんでくるが、そんなのは今更の言い訳に過ぎない。

「すいません、俺…、仕事なのに気を抜いていました。チームの皆様にご迷惑をおかけし誠に申し訳ございませんでした。」

 完全に自分のミスで行き場のない悔しさにギリリと歯噛みする。

『…うん、そうだね。次は反省を生かして頑張ろうか。大丈夫、君はちゃんと自分のミスを理解しているから、これからの事にもしっかり対処できる。私は信じてるよ。』

 イケオジ様から優しく寄越された信頼に少し目頭が熱くなる。

 おい、泣きそうになるな、俺。
 しっかりしろ、俺。
 
 ぐいっと袖で拭い、すっと背筋を伸ばす。

「はい!期待に応えるよう頑張ります!」

『良い返事だ。じゃあ、…あっ、と、忘れてた。拠点の話をした時に協力者を募れって言ったよね?』

「あ、はい、そう聞きました。」

 言ってたな。あの時は本当のがなかったからある意味聞き流してしまったが。

『良かったら…、そこで寝てるレオナルド君を協力者にしないかい?』

「はい????」

『オーケー!じゃあ、いまリアム君に語りかけて貰うね!…おーいリアム君、お願い~!』

 ちょっと待て!イケオジ!
 それは了解じゃない!!
 前と同じ展開ぃ!!

「待っ…『…レオナルド…、レオナルドよ…、聞こえますか…、今、あなたに直接語りかけています…、仲間になるのです…、あなたはコウの仲間になるのですよ…、ほぉら、あなたはだんだん仲間になぁぁる…、仲間になぁぁぁるぅぅぅ…。ハイッ!!』…マジかあ…。」

ぱちっ

 現地人さん改めレオナルドさんが目を覚まし、ゆっくり起き上がる。寝起きで焦点が合わない風だったが、数秒してこちらと目が合う。

「俺はレオナルドだ。今日からコウと組む。よろしくな。」

 ニッと笑い何故かハグされた…。親密に…。
 異世界、距離感バグりすぎだろうが…。

『じゃあ、そろそろ異空間通信量が限界値だから切るよ。なんかあったらメッセしてくれ!』

 怒涛展開な俺を置き去りに、語りかけのプロはそう言って電話を切ってしまった。

「…どうしてこうなった…。」

 異世界転職して何度目になるかわからないが、また頭を抱えるハメになった…。


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