10 / 101
1.転職!転勤!→異世界
第一現地人(に)発見(された)
しおりを挟む第10話 第一現地人(に)発見(された)
アカン、これ現地人きた…!
ここに現地人まだ来ないんじゃないの?!
イケオジ、どう言う事?!?!
俺が心中アワアワしてる中、現地人さんがどっかりと俺の斜め向かいに勝手に座り込む。…うあ、土足だ。最悪だ。後で掃除だわ。
「なあアンタ、何処から攫われて来たんだ?小綺麗なナリしてるから貴族なんだろ?金次第だが家まで送ってやるよ。」
ヤバい、なんか誘拐に誤解されてるし、金ヅル扱いの気配がビッシビシ感じる!
「あ、あの、えーと、どうやってコチラまで来たんです?道は塞がってたと思うんですが…。」
緊張し過ぎて文脈無視の質問してしまった!
「ああ、土で埋まってたな。普段ここはただの洞穴なんだが、不自然に入り口が土に埋まってたからロックス(※土魔法)で吹っ飛ばした。たまにここ野宿で使ってたから気になったんだわ。」
おっと、ここ未使用じゃなかったんだ。あと意外に人里近いっぽい?
あとロックスってなんだろ…。あの土壁5ブロック、多分5メートル分は入り口に詰めたけどそれ吹っ飛ばすとかマジ怖すぎる。これは後で外部のカモフラもしないとヤバいな。
「んで、中に入ったらいつもの洞穴が様変わりしてんじゃねえか。驚いたぜ。前よりずっと広くなってるし、天井に灯りだろ?しかもでっかい変な魔道具なのまである。で気づいた訳だ、あ、これは実は遺跡だなってな。今まで隠蔽の魔法かなんかで洞穴に見せかけてたんだろう。」
すいません…、それ隠蔽の魔法じゃなくて、昨日ガチ改造後の洞穴です…。出来たてほやほやのダンジョン(仮)です…。
「よく見ると奥に遺跡にしては不自然なドアがあったから一応確認で入った。そしたらアンタがここで倒れてた訳だ。閉じ込められてたようだけど、縛られたり打たれた傷とか無いし部屋は豪華だし…高位貴族の身代金目的か?」
最後のほうは俺に聞くと言う訳ではなく自問自答のようだ。うーむ、と唸りながら腕を組んで首を傾げる現地人さん。
普通遺跡に住んでる人がいるとはあんまり思わないよなあ。入り口塞がれてたし。
まいったな、どう説明すればお引き取りいただけるのか…。
俺もうーむとなりながら首を傾げた。
「ま、考えても仕方ねえ。アンタ、名前は?家名は何家だ?」
「え、はい、鈴木航です。家名って言うのは鈴木ですけど…。」
あ、うっかり名乗ってしまった。
「スズキ家??聞いた事ねえな。名前もお貴族にしちゃ短くて変わってんな。もしかして国外の貴族か?」
現地人さんが小さくめんどくせえ、元とれっかなとかブツブツ呟いている。
「とりあえずここ出るぞ。いつ誘拐犯が戻ってくるかわかんねえからな。一旦、近くの街に寄って手配書かけて、あとそっからは帝都だな。領事館まで行きゃなんとかなるだろ。」
よっこいせ、と現地人さんが立ち上がり、ついでに俺も手を引かれ立ち上がってしまう。
うお、この人デカいな!168センチの俺より頭ひとつ分以上はデカいから180センチは余裕で超えてる。体も筋肉で分厚いし、まさにザ前衛職って感じだ。何食ったらそんなデカくなるんだろ、羨ましいわ…。
現地人さんは掴んだ手をそのままに歩き出そうとしたが、不意に現地人さんの視線が俺の足元に落ちた。そう俺はおウチ裸足族。
フワッと一瞬の浮遊感の後、腹にドフっと衝撃。
「うぶっ!」
気づけばまるで俵のように肩に担がれていた。
「悪りぃけどしばらくコレで我慢してくれや。片手開けるにはコレが一番なんだ。」
ケツをポンと叩かれる。
って、アカーーーンッッ!!
俺、完全に連れ去られのピーーーンチッッ!!
「あ、あ、あの!!すいません!!俺、攫われてないです!!貴族じゃないし!!大丈夫!!大丈夫!!」
慌てて現地人さんの背中をぱんぱんと抗議タップする!って言うかめっちゃ僧帽筋ムッキムキだな、現地人さん!俺のタップ、ノーダメで通じてないんじゃ?!
「いや、マジ、ほんと大丈夫なんで!ここ、俺のウチなんで!!」
さっきより少し強めに叩き直した。
やっと現地人さんが俺を肩から外してくれた。が、何故か縦抱きにされた。今度はパンパンな胸筋様に歓迎されている。
…あれ?普通下に降ろすとこでは…?
「は?ウチ??」
「え、はい、ここは俺の家なんです…。すいません。…なんで、誘拐犯とか悪い人はいないし、住居だから危険はないですから…。」
ま、家って言うか職場なんだけど!
説明面倒だから住んでる事だけバラす。遺跡好きが高じて親元から離れて遺跡暮らしてるとか適当な理由にしよ。
それにしても縦抱きにされたからめっちゃ顔が近い…。北欧系のイケオジ様とは系統が違う、濃い目のラテン系イケメンだ。目力強すぎる。すまんがその顔を...しまってくれんか。俺には強すぎる...。
少し身を捩って距離を取ろとしたが、胸筋様と前腕筋群様に挟まれうまくいかない。ガタイ良すぎぃ!
「あの、…降ろしてもらってもいいですか…?」
この筋肉の檻は俺には破れそうもないぜ…。ならば、いっそ素直に聞いてみた。
押してダメなら聞いてみろ、ってな。コレは去年定年になった先輩の教え。やり口はシンプルだけど意外に効くんだな、コレ。
今回は物理的な押しだけど…。
「お、おう。無理に抱えちまって悪かったな。」
現地人さんは微妙に戸惑いながらも素直に降ろしてくれた。
数分ぶりの床、やはり人は地に足をつけ暮らすのが一番だ。え?地に足の使い方が間違ってる?細けえ事は気にすんな!要は抱っこはもういいって事です、はい。
「ありがとうございます。こちらも勘違いさせてしまってすいませんでした。」
よし、ここから穏便にお帰りいただくぞ~。
さり気なくドアへ向かって歩く。現地人さんもキョロキョロしながらも後ろについてくる。いい感じ、いい感じ。
戸口へ立ち、ドアノブに手を置いて必殺ちょっと困った笑顔(謝罪用)だ!この笑顔とふんわり的を射ない返事コンボで有耶無耶退場だ!
「本当にここが家なのか?脅されてるんじゃねよな?」
「はい、大丈夫です。」
にこぉ。
「家族もいるのか?」
「ああ、そうですね。」
にこぉ。
「アンタ以外人の気配がないようだが、いま出払ってるのか?」
「ええ、まあ。」
にこぉ。
「………一人でここにいるのか?」
「そうですね、はい。」
にこぉ。
「おいお前、いま適当に返事してるだろ?」
「ええ、大丈夫……で……ス…」
…あ、やべ、返し間違えた。
現地人さん真顔ですね。
ドンッ
ドアノブを握っていたほうの腕を捻り上げられドアに顔から押し付けられた。勿論、顔よこには現地人さんの拳がドンしてる…。
「お前、何モンだ?その魅了眼、人族じゃねえだろ?妖精族か?人、誑かしに来たのか?なあ?」
耳元で現地人さんが…
って、アカーーーンッッ!!!!
俺、エマージェンシーーーッッ!!!!
穏便どころか生命の危機ーーーッッ!!!!
「ウワアアアア!!!!人族です!!!!間違いなく人族ですから!!!!さっきは適当に答えてごめんなさいいいい!!!!本当にすいませんんんん!!!!」
全力謝罪一択!!
ジタバタとしながらも出来るだけ視線を現地人さんに合わせて謝罪する。ほんと適当してすいません。許してください。
捻られた腕と自ら捩った首が地味に痛くて涙目だ。
しかし、現地人さんの手は緩まない。寧ろ、じわじわと体重が掛かってきて逆手になってる腕が正直ヤバい感じになってきた。
これはかなり怒ってらっしゃる?腕の一本、謝罪に持ってかれるヤツ?
「…うっ、ほんとごめんなさ…、グスッ…」
もう半泣きに謝る。全泣きでもいい。うう、腕折られたくないよおお!!
0
お気に入りに追加
265
あなたにおすすめの小説
病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!
松原硝子
BL
三枝貴人は総合病院で働くゲーム大好きの医者。
ある日貴人は乙女ゲームの制作会社で働いている同居中の妹から依頼されて開発中のBLゲーム『シークレット・ラバー』をプレイする。
ゲームは「レイ・ヴァイオレット」という公爵令息をさまざまなキャラクターが攻略するというもので、攻略対象が1人だけという斬新なゲームだった。
プレイヤーは複数のキャラクターから気に入った主人公を選んでプレイし、レイを攻略する。
一緒に渡された設定資料には、主人公のライバル役として登場し、最後には断罪されるレイの婚約者「アシュリー・クロフォード」についての裏設定も書かれていた。
ゲームでは主人公をいじめ倒すアシュリー。だが実は体が弱く、さらに顔と手足を除く体のあちこちに謎の湿疹ができており、常に体調が悪かった。
両親やごく親しい周囲の人間以外には病弱であることを隠していたため、レイの目にはいつも不機嫌でわがままな婚約者としてしか映っていなかったのだ。
設定資料を読んだ三枝は「アシュリーが可哀想すぎる!」とアシュリー推しになる。
「もしも俺がアシュリーの兄弟や親友だったらこんな結末にさせないのに!」
そんな中、通勤途中の事故で死んだ三枝は名前しか出てこないアシュリーの義弟、「ルイス・クロフォードに転生する。前世の記憶を取り戻したルイスは推しであり兄のアシュリーを幸せにする為、全力でバッドエンド回避計画を実行するのだが――!?
寝不足貴族は、翡翠の奴隷に癒される。
うさぎ
BL
市場の片隅で奴隷として売られるゾイは、やつれた貴族風の男に買われる。その日から、ゾイは貴族の使用人として広大な館で働くことに。平凡で何の特技もない自分を買った貴族を訝しむゾイだったが、彼には何か事情があるようで……。
スパダリ訳あり貴族×平凡奴隷の純愛です。作中に暴力の描写があります!該当話数には*をつけてますので、ご確認ください。
R15は保険です…。エロが書けないんだァ…。練習したいです。
書いてる間中、ん?これ面白いんか?と自分で分からなくなってしまいましたが、書き終えたので出します!書き終えることに意味がある!!!!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
カクヨム、小説家になろうでも投稿しています。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる