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1.転職!転勤!→異世界
チートはタブレット様
しおりを挟む第4話 チートはタブレット様
そして、話は冒頭へ戻るーーー。
イケオジ様の瞬間移動的なものであのシャレオツオフィスから一転、単身新しい職場に送り出されてきたのだ。
新しい職場は洞窟。と言うか八畳そこらの円形のドームっぽい洞穴だ。外に繋がる道以外は奥行きも横道も縦穴もなんも無い。更に言うと俺と手持ちの通勤バック以外何も無い。
そう、家財道具など生活に必要な物が全くない。ないない尽くしである。
「…単身すぎる…。」
頭を抱えるしかなかった。
ピコーンッ
ケツの下から電子音と小さな振動がした。座布団にしたバックからだ。
バックをケツの下から引き摺り出し開けてみると、中には見知らぬタブレットが入っていた。ロゴは有名な欠けたリンゴマークかと思いきや丸いリンゴにGODの文字。何、このパクリ製品…、いや、これ多分神からの支給品か!
スライドして画面を開けてみる。見慣れたようなでもほんの少しだけ違うようなアイコンが並んでいて、そのひとつのメッセージアプリに通知がついていた。
『総括チーム: お疲れ様です。
こちらプロジェクトの総括チームのアカウントです。
鈴木さんとの連絡はこのアカウントでやり取りします。どうぞよろしくお願いします。
今回は急な異動でしたのでこちらで地球の引越し作業と荷物の発送をしました。あちらで使用されていた荷物はタブレット内のストレージアプリに収納してます。』
ほうほう、タブレットに収納…?
これはある方面に名高い空間収納ってヤツだな?
『総括チーム:尚、仕事上で必要なダンジョン等の構築アプリ、その説明書pdfもつけときました(pdfはファイルフォルダに有) 。
基本操作はこのタブレットと手持ちのスマフォで行います。
どうぞよろしくお願いします!』
そんなメッセージは可愛い猫スタンプで締められていた。
「おーいっ!この世界、タブレットとスマフォ使えんのかーいっ!」
と、勢いよくツッコんでみたが、よく見たらセルラー用の電波アイコンはなかった。
「…当たり前か、ここ異世界だもの…。」
多分Wi-Fiもあるわけない。が、何故か繋がるから神会社直通の謎電波通信モデルなのかもしれない。
一応自前のスマフォも確認の為ざっと画面見たが、電波アイコンやネットブラウザアプリ、ネットに繋ぐアプリ一切合切消えていた。
ぐぬぬ、暇つぶし用にゲームくらいは残して欲しかった。残念なり。
かわりに見知らぬアプリが何個かあった。
まず目についたのは謎の検索アプリ。でっかくGのロゴがあるが有名な某検索アプリと書体が違うヤツがインストールされていて、開いてみるとメニューはカテゴリー検索とフリーワード検索、あと何の配慮かわからんがネコチャン画像ライブラリー。
「なんなんだコレ…。」
猫種別やカラー絞り込み、本日のネコチャンまで…。ほんと何の配慮だよ…。
いや、ネコチャン画像見るけどね!
とりあえずカテゴリー検索を覗く。
ずらりと並ぶ大カテゴリー、世界、地名、歴史、生活、文化などなど。大項目をタップするとさらに詳細な情報の小カテゴリーが開く。所謂百科辞典みたいになっていた。まだ使ってはいないが、フリーワード検索はそこから情報をピックアップして拾ってくるんだろう。
試しに大カテゴリー、世界の中から"イミナルディア"をタップした。
イミナルディア
イミナルディア界は宇宙モデルをはじめ、気候、植生、生態等、隣接した地球界に類似した世界である。
現在は人族が文明の主権を握っており、各国にもよるが平均文明レベルは地球界の歴史区分で近世前期あたりに該当する。
尚、地球界と大きく異なる点は魔力による魔法技術の発展、人族以外の知的生命体として獣人、精霊、竜人などの存在が挙げられる。又、地球界の害獣に相当する種として魔獣と呼ばれるモンスターも生息している。
※魔力、魔法、種族についてはリンク先を参照
「よおおし! ファンタジーきたーーーッ!!」
魔法きたよ、魔法!!
やっぱり異世界ときたら魔法でしょう!!
ピコーン
タブレットに通知がきた。
『イケオジ: ごめんね、魔法は使えません。』
(ごめん寝ネコチャンのスタンプ)
は? ウソだろ?
俺、神の御使いポジションでは?
『rinrin村長: 異世界お約束チートは?!』
と言うか俺のアカウント名…。なんで勝手に村長にしたよ…。後でなおそ…。
『イケオジ: チートはタブレット内に色々アプリとして詰めときました。
君がタブレットの所有者兼管理者だから実質チート持ちです!』
『イケオジ: 箱庭で使ってたスキルがチートになってるヨ! 素材もほぼ無限ストック!
無いのは村人とか商人とか人型オブジェクト。動物はモンスターオブジェクトのみ使えるかな。
そこら辺はアプリ開いて確認してみてね。』
『イケオジ: ひとつ言い忘れていた。
君自身にひとつだけチートを付加していたよ。言語能力だ。
君は何処でも種族関係なく会話できる。最強チートだよ。ちなみに文字も難なく読み書きできます。ちょう便利(スマイル絵文字)』
ピコンピコンと怒涛の如くメッセージが流れる。
イケオジ様の文字打ちスピード半端ない。いや、もしかして不思議神パワーで入力してるのか? 音声入力ならぬ神の声入力みたいな??
『rinrin村長: 了解です。確認してみます。』
なんとか短文で返信した。
やはり外付けキーボードがないとタブレットの文字打ちはキツい。
このメッセージアプリ、スマフォに連携と言うか移行できないかな? もしくはスマフォを左手デバイスにして入力できたら楽なんだよなー。ふー、やれやれ! とマルチタスク作業あるあるしながら、了解のスタンプでも打とうかとスタンプ欄を開いた時、
ピコン
『イケオジ: 但し注意して欲しい。』
ピコン
『イケオジ: 言語能力以外は君の魂の器の都合で付加出来なかった。
身体は地球と同じであると思って欲しい。
簡単な病気や怪我の治療はエイドアプリである程度できるが、命に関わるような大きなトラブルは対応できない可能性がある。』
ピコン
『イケオジ: 出来るだけ早く拠点を作って身を守ってくれ。
そして護衛となる協力者を見つけて欲しい。』
そして沈黙するメッセージ。
俺は、
もしかして、
この世界で簡単に死ぬ可能性?
箱庭ではモンスターの襲撃や高所から落下でライフが無くなるとリスポーン(※蘇生し所定の位置に戻る事)したが、ここではそれは無いのか?
ノーダメージのイージーチートモードは無いのか?
この世界で俺は初心者なのに?
「…マジかよ…。」
…いや、本当はわかっていた。
言葉での説明はなかったけれど、地球の存在をなくされて異世界へ単身渡ると言う事の重要性。
この異世界で俺は1人の人間として生きていくと言う事実。
これは『ゲーム』ではないのだ。
『rinrin村長: アドバイスありがとうございます。今から作業に着手します。』
イケオジ様にそう返信し、メッセージアプリを閉じた。
俺はやるべき事をやる。
仕事とはそう言う事なのだ。
切り替えの早さは(略 ので、うっかりモンスターにやられて死ぬ前に拠点を作ろう!!
とりあえず説明書はじめに読みたい派なので、ファイルから説明書を開いた。
「…何なに? お、これ箱庭のヘルプとおんなじじゃん。おわあ、このpdfめっちゃ凝ってるな! ええと操作は…ああ、合成は画面の素材のタップと…、」
操作や合成は箱庭とだいたい同じだった。
大きく違うのは作業台とアイテムの種類、あとリアル同期。
作業台はコンソールになると書いてあるが、ちょっとイメージがわかないので設置してから検証。
アイテムは多分こっちの世界の物が大分追加されてる。見た事がない素材が結構あった。他、モンスターオブジェクトが入れ替わっているな。まあ、モンスターはこっち産のに置き換わったんだろう。
朗報! 箱庭の初心者殺し、近寄ってきたら突然爆発する緑の極悪モンスターはいないようだ! あー、良かった。さすがにこんな所で爆死は御免だもの…。
そしてリアル同期は言わずともな、です。
オブジェクトを配置したり穴を掘ったりするとリアル(現実世界)にも即反映と言う訳だ。
…この機能がなきゃ、俺はただの異世界引きこもりゲーマーだわな…、うん。
箱庭アプリのだいたいを把握したのでいよいよアプリ起動ですよ!はー、ワクワクしてきた!
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