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第三十五夜 高らかに鳴らせ
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第三十五夜 高らかに鳴らせ
そんな殺伐茶会を終え、また勇者パーティーと合流した。ちなみに勇者君達は俺達が茶会をしてる間、城の騎士達の要望で手合わせと言う鍛錬をしてたそうだ。とても楽しかったそうで…。うん、楽しく触れ合いイベで良かったね…。俺達は一歩間違ったら殺り合いイベでしたけどね…。
軽く昼メシを取ってから、ジェラルドさん主導で各業界の協力者さん達と平和な面通しをし、あと衣装合わせもした。既製品の手直しになるが、城でのお披露目用に見栄えのいい服を着せるそうだ。パッケージ大事、大事。
但し俺とエルは別世界の勇者だから協力者枠で控え目に参加したいとジェラルドさんに泣きついて、そちらはなんとか免除して貰った。いくら課から介入オッケーの許可が降りててもやっぱ目立っちゃ駄目ですからね…。決して、演劇で着るようなフリフリのドレッシーなシャツとか刺繍まみれのお貴族様スーツを着たくないとかじゃないからね…?
「本日はここまでです。明日もよろしくお願いしますね。」
今夜も夜メシ会の締めに宰相さん。ちゃんと引継ぎには来るのは流石である。
と言っても明日は大したイベントもなく引き続き面通しらしい。
まあ国家プロジェクトだもんなあ。トップだけで何とかなるもんじゃないから仕方ないけど、お貴族様単騎面談はそろそろやめて欲しい。身分やら派閥やら思惑があるのはわかるけど、面通しくらいお前らまとめて来いやーって思いますぞ…。
元下っ端サラリーマン的にそんな事言えないけどね!
それから部屋に戻ってお休みタイム。
何事も起きないようなのでエルと明日の打ち合わせをして本日は解散と言うところで、アサヒから謎のメッセがきた。
「エル、なんかアサヒから謎のメッセきた。」
「俺にも来た。何かあっても予定通り。信じてくれ。って感じのヤツでしょ?」
エルもメッセ画面を出してスマホをヒラヒラふる。パッと見エルのは若干ビジネス寄りな文面だったが、どうやら俺のと同じ内容できてたようだ。
…いやマジなんだろ、これ。なんの予定だ?
「もしかして魔王サイド、結構揉めてるのか?」
「かもね。アッチはアッチで攻めの一手からの方針転換だから大変そうだよね。でも侵攻の言い出しっぺはアッチだから仕方ない。ま、あの牙狼さんが魔王だから何とかするっしょ。」
…まあ、魔王だもんな。設定だと魔族で一番強いのが魔王になるってあるしな。力イズぱわー的な物でなんとか乗り切ってもらいたい。
「んじゃ、了解って入れとくか。エルも入れとけ。」
「ほーい。送信完了ー。」
二人で了解とアサヒにメッセし本日は解散した。
ベッドに潜りウトウトした頃スマホが震えた。通知バナーにメッセにアサヒのアイコン。アサヒからまたメッセが来たようだ。
…うぉいアサヒぃ、時間考えろぉ…。もう大人も寝る時間だぁ…。
寝ぼけ眼でメッセを開くと何故かまた謎メッセ。
「…ええと、書き忘れた。ラストは聖剣で頼む。…え、何のラスト…? 課からのアドバイスだから心配しないで。…はぁ? アドバイス全然わからんが…? あとなんで締めに『一生愛してる♡』スタンプ(ナイミリの結婚イベ実装時に配布されたガチ恋勢スタンプな…)つけてんの…?? 疲れてんの…??」
ガチで謎すぎた。つーか正直眠くてアタマが回らなかったので、とりあえずオッケースタンプを送っておいた。…ん、明日、明日考えるからもう寝る。俺、閉店のお知らせです。スヤァ…。
翌日。宰相さんの予告通り面通しに明け暮れ、へとへとになった夕刻に、途中から姿を消していたジェラルドさんに呼び止められた。
ジェラルドさんは午前のクールビス的緩めな略式の軍服から一転、謁見で着ていた勲章やら肩掛けのサッシュやらに飾られた正装に着替えていた。王様と謁見してたのかな?
「さて、諸君。お待ちかねの旅立ちの時だ。」
ジェラルドさんがクルクルと巻かれた紙を広げる。広げた紙にはグライ砦と名が入った転移陣が書かれていた。
どうやらパレードの出発地に出向くらしい。
「準備が出来たら飛ぶ。荷物はすぐ王都に戻るからいつもの旅装に各自の得物くらいで良い。」
ジェラルドさんに某空賊おばさまの如く、◯秒で準備しな!的に尻を叩かれて勇者君達は慌てて転がるように準備へ走っていった。ちょっと笑った。
俺達も近くの空き部屋を借り装備変更機能でいつもの軽装備に切り替え、早々にジェラルドさんの所に戻った。ふっふっふっ、一番乗りで◯秒クエストをクリアしたぜ。なーんてな!
そうそう待たないうちにいつもの旅装に着替えた勇者パーティーも戻ってきた。カンヅメにされてた王子君も無事一緒だ。
「よし、集まったな。ではパレードの出発地になるグライ砦に飛ぶ。」
ジェラルドさんが手に魔力を込めると、転移陣が発光しグライ砦へと転移が発動した。
グライ砦は王都から徒歩で三日程度に離れた王都前の最終防衛拠点だ。横に長く続く防壁で、防衛籠城目的ではなく大規模侵攻を阻むバリケードタイプの砦である。
防壁の内部も無骨な石造りの建物がやはりバリケードみたいに前線に立ち並んでいて、最速で砦を抜ける為には大門からの大通り一本。やっとそこを抜けて開けた場所の先にあるのが、お目当てになる本丸的砦本部。なのだが…、所謂定置網漁で集まったお魚さんは哀れ一網打尽にされてしまう罠である。
勿論グライ砦を避けて通ると言う選択肢もあるが、敵地で大軍を率いて道なき道を大きく迂回するのはかなりの消耗を強いられるし、地の利は防衛側にあるのでせっかく迂回しても先回りされるのがオチだ。と言っても、世界最高峰の国力に位置するアウサリア王国がそんな王都一歩手前のここまで敵の侵攻を許す事はないのだが。
そんなグライ砦、最終防衛拠点だけあって詰めている兵も多く、それの為に商店街があったりそこに勤める人々の住宅地なんかもあった。ただの軍事拠点と言うより、人口規模的に中核都市って言っても間違いではない。
ここ、グライ砦から俺達は歩みを進める。
で、最終的に何が言いたいかと言うとだな…、
「勇者様ー!! 勇者様ー!!」「勇者様が来たぞー!!」「うおおお、勇者パーティー!!」
すでにこのグライ砦、勇者祭りだった…!
ジェラルドさんに連れられて砦の大門をくぐった瞬間、大歓声が響きフラワーシャワーが舞った。入口には正装した騎士団が国旗と団旗を掲げて整然と道の両脇へずらりと並んでいる。まるで国賓の如き歓迎っぷり…。
サクラ込みでも盛り上がり早すぎないか…?
「勇者方、我らの歓迎はお気に召したかな?」
左胸に手を当てる騎士の略礼をしたジェラルドさんがニヤリと笑った。
「…はわわぁぁ、」
勇者君はリアルはわわして、王子君の後ろに引っ込みキョロキョロしながら王子君のマントをギッチリ握っていた。他の連中は勇者君よりは冷静だし?みたいな顔を装っていたが、内心はわわしてるのか若干ぽかんと口が軽く半開いてる。
ま、突然のコレはビビるよな…。俺もちょっとビビった。
勇者君達の旅立ちの時はクエストの都合で早朝だったし、王様と王宮の皆さん騎士さん達がささやかに送り出してくれただけだもんなぁ。あとの大人数に囲まれイベって言っても、魔族の皆さんに敵意を持って取り囲まれるくらいだったし…。
「まさかここまで仕込むとは…、ははは、恐れ入った! ただ敵に向かって剣を振り回すだけではこうはいくまいよ。民に分からせるとはこう言う仕事か、ジェラルド。」
王子君は王子として、騎士団大将であるジェラルドさんを見た。
「ええ、これも私の国を護る仕事のひとつです、王子。確かに本当に良き事は黙っててもいずれ人に伝わるでしょう。だが、前線に立つ者にはその『いずれ』を悠長に待つ時間がないのです。…ふふ、ここでジジイの無駄話が過ぎると皆も飽きる。あとはご想像にお任せしましょうぞ。…さあ、本部まで凱旋です。」
ジェラルドさんが大きく息を吸い込み、「…勇者ァァァ、」と叫ぶ。同時にスラリと抜いた剣を天に向かって指した。
先程まで大歓声に包まれていた砦の大門は一瞬にして熱気が鎮まり静寂が訪れた。
そして剣は行き先へ向かって振り下ろされる。
「…凱陣ンンンーーーッ!!」
…ズンッ、と地鳴りがした。
騎士団が手に手にした団旗、国旗の棹、そしてそれを持たぬ者は自分の足で地面を叩いたのだ。
「…剣礼ィィィィーーーッ!!」
旗を持つ騎士は旗を高く、旗を持たない騎士は一斉に剣を抜き胸の前に剣を掲げた。
…瞬間、地の底から身を震わせるような重い大歓声が響きわたる。
『『『ウオオオオオオーーー!!』』』
…ああ、すげえ、、、こんな、震えがくる歓声、
年末の小井競馬場の大一番かよぉ!!
第四コーナーを回った馬群が直線に突っ込んでくる時、オッさん共が興奮で言葉が見つからなくてただ声の出るまま歓声をあげる光景をうっかり思い出した。
…すまん。
今猛烈に異世界騎士道カッコイイ!場面なのに、あの地鳴りのような大歓声へピッタリはまる光景がそれしか思いつかなかった…。いやマジで鳥肌が立つくらい凄いんだよ、あの歓声は…。
「行くぞ。」
完全に騎士団大将の顔をしたジェラルドさんが大きく一歩を靴音をも高らかに踏み出す。
俺達も場の雰囲気に姿勢を正し胸を張り本部へと続く『勇者の花道』を歩き出した。
ーーーしかし、花は突然に散る…。
<次回予告>
高らかに響きわたる大歓声、まだ作られた儚いものかもしれないがそれはいずれ彼らに力を与える。
しかし無常にも時は待たないのだ。
次回、思惑に、『第三十六夜 既定路線』
お楽しみにね?
「納品をあきらめたらそこで試合終了だよ。」
※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
そんな殺伐茶会を終え、また勇者パーティーと合流した。ちなみに勇者君達は俺達が茶会をしてる間、城の騎士達の要望で手合わせと言う鍛錬をしてたそうだ。とても楽しかったそうで…。うん、楽しく触れ合いイベで良かったね…。俺達は一歩間違ったら殺り合いイベでしたけどね…。
軽く昼メシを取ってから、ジェラルドさん主導で各業界の協力者さん達と平和な面通しをし、あと衣装合わせもした。既製品の手直しになるが、城でのお披露目用に見栄えのいい服を着せるそうだ。パッケージ大事、大事。
但し俺とエルは別世界の勇者だから協力者枠で控え目に参加したいとジェラルドさんに泣きついて、そちらはなんとか免除して貰った。いくら課から介入オッケーの許可が降りててもやっぱ目立っちゃ駄目ですからね…。決して、演劇で着るようなフリフリのドレッシーなシャツとか刺繍まみれのお貴族様スーツを着たくないとかじゃないからね…?
「本日はここまでです。明日もよろしくお願いしますね。」
今夜も夜メシ会の締めに宰相さん。ちゃんと引継ぎには来るのは流石である。
と言っても明日は大したイベントもなく引き続き面通しらしい。
まあ国家プロジェクトだもんなあ。トップだけで何とかなるもんじゃないから仕方ないけど、お貴族様単騎面談はそろそろやめて欲しい。身分やら派閥やら思惑があるのはわかるけど、面通しくらいお前らまとめて来いやーって思いますぞ…。
元下っ端サラリーマン的にそんな事言えないけどね!
それから部屋に戻ってお休みタイム。
何事も起きないようなのでエルと明日の打ち合わせをして本日は解散と言うところで、アサヒから謎のメッセがきた。
「エル、なんかアサヒから謎のメッセきた。」
「俺にも来た。何かあっても予定通り。信じてくれ。って感じのヤツでしょ?」
エルもメッセ画面を出してスマホをヒラヒラふる。パッと見エルのは若干ビジネス寄りな文面だったが、どうやら俺のと同じ内容できてたようだ。
…いやマジなんだろ、これ。なんの予定だ?
「もしかして魔王サイド、結構揉めてるのか?」
「かもね。アッチはアッチで攻めの一手からの方針転換だから大変そうだよね。でも侵攻の言い出しっぺはアッチだから仕方ない。ま、あの牙狼さんが魔王だから何とかするっしょ。」
…まあ、魔王だもんな。設定だと魔族で一番強いのが魔王になるってあるしな。力イズぱわー的な物でなんとか乗り切ってもらいたい。
「んじゃ、了解って入れとくか。エルも入れとけ。」
「ほーい。送信完了ー。」
二人で了解とアサヒにメッセし本日は解散した。
ベッドに潜りウトウトした頃スマホが震えた。通知バナーにメッセにアサヒのアイコン。アサヒからまたメッセが来たようだ。
…うぉいアサヒぃ、時間考えろぉ…。もう大人も寝る時間だぁ…。
寝ぼけ眼でメッセを開くと何故かまた謎メッセ。
「…ええと、書き忘れた。ラストは聖剣で頼む。…え、何のラスト…? 課からのアドバイスだから心配しないで。…はぁ? アドバイス全然わからんが…? あとなんで締めに『一生愛してる♡』スタンプ(ナイミリの結婚イベ実装時に配布されたガチ恋勢スタンプな…)つけてんの…?? 疲れてんの…??」
ガチで謎すぎた。つーか正直眠くてアタマが回らなかったので、とりあえずオッケースタンプを送っておいた。…ん、明日、明日考えるからもう寝る。俺、閉店のお知らせです。スヤァ…。
翌日。宰相さんの予告通り面通しに明け暮れ、へとへとになった夕刻に、途中から姿を消していたジェラルドさんに呼び止められた。
ジェラルドさんは午前のクールビス的緩めな略式の軍服から一転、謁見で着ていた勲章やら肩掛けのサッシュやらに飾られた正装に着替えていた。王様と謁見してたのかな?
「さて、諸君。お待ちかねの旅立ちの時だ。」
ジェラルドさんがクルクルと巻かれた紙を広げる。広げた紙にはグライ砦と名が入った転移陣が書かれていた。
どうやらパレードの出発地に出向くらしい。
「準備が出来たら飛ぶ。荷物はすぐ王都に戻るからいつもの旅装に各自の得物くらいで良い。」
ジェラルドさんに某空賊おばさまの如く、◯秒で準備しな!的に尻を叩かれて勇者君達は慌てて転がるように準備へ走っていった。ちょっと笑った。
俺達も近くの空き部屋を借り装備変更機能でいつもの軽装備に切り替え、早々にジェラルドさんの所に戻った。ふっふっふっ、一番乗りで◯秒クエストをクリアしたぜ。なーんてな!
そうそう待たないうちにいつもの旅装に着替えた勇者パーティーも戻ってきた。カンヅメにされてた王子君も無事一緒だ。
「よし、集まったな。ではパレードの出発地になるグライ砦に飛ぶ。」
ジェラルドさんが手に魔力を込めると、転移陣が発光しグライ砦へと転移が発動した。
グライ砦は王都から徒歩で三日程度に離れた王都前の最終防衛拠点だ。横に長く続く防壁で、防衛籠城目的ではなく大規模侵攻を阻むバリケードタイプの砦である。
防壁の内部も無骨な石造りの建物がやはりバリケードみたいに前線に立ち並んでいて、最速で砦を抜ける為には大門からの大通り一本。やっとそこを抜けて開けた場所の先にあるのが、お目当てになる本丸的砦本部。なのだが…、所謂定置網漁で集まったお魚さんは哀れ一網打尽にされてしまう罠である。
勿論グライ砦を避けて通ると言う選択肢もあるが、敵地で大軍を率いて道なき道を大きく迂回するのはかなりの消耗を強いられるし、地の利は防衛側にあるのでせっかく迂回しても先回りされるのがオチだ。と言っても、世界最高峰の国力に位置するアウサリア王国がそんな王都一歩手前のここまで敵の侵攻を許す事はないのだが。
そんなグライ砦、最終防衛拠点だけあって詰めている兵も多く、それの為に商店街があったりそこに勤める人々の住宅地なんかもあった。ただの軍事拠点と言うより、人口規模的に中核都市って言っても間違いではない。
ここ、グライ砦から俺達は歩みを進める。
で、最終的に何が言いたいかと言うとだな…、
「勇者様ー!! 勇者様ー!!」「勇者様が来たぞー!!」「うおおお、勇者パーティー!!」
すでにこのグライ砦、勇者祭りだった…!
ジェラルドさんに連れられて砦の大門をくぐった瞬間、大歓声が響きフラワーシャワーが舞った。入口には正装した騎士団が国旗と団旗を掲げて整然と道の両脇へずらりと並んでいる。まるで国賓の如き歓迎っぷり…。
サクラ込みでも盛り上がり早すぎないか…?
「勇者方、我らの歓迎はお気に召したかな?」
左胸に手を当てる騎士の略礼をしたジェラルドさんがニヤリと笑った。
「…はわわぁぁ、」
勇者君はリアルはわわして、王子君の後ろに引っ込みキョロキョロしながら王子君のマントをギッチリ握っていた。他の連中は勇者君よりは冷静だし?みたいな顔を装っていたが、内心はわわしてるのか若干ぽかんと口が軽く半開いてる。
ま、突然のコレはビビるよな…。俺もちょっとビビった。
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「まさかここまで仕込むとは…、ははは、恐れ入った! ただ敵に向かって剣を振り回すだけではこうはいくまいよ。民に分からせるとはこう言う仕事か、ジェラルド。」
王子君は王子として、騎士団大将であるジェラルドさんを見た。
「ええ、これも私の国を護る仕事のひとつです、王子。確かに本当に良き事は黙っててもいずれ人に伝わるでしょう。だが、前線に立つ者にはその『いずれ』を悠長に待つ時間がないのです。…ふふ、ここでジジイの無駄話が過ぎると皆も飽きる。あとはご想像にお任せしましょうぞ。…さあ、本部まで凱旋です。」
ジェラルドさんが大きく息を吸い込み、「…勇者ァァァ、」と叫ぶ。同時にスラリと抜いた剣を天に向かって指した。
先程まで大歓声に包まれていた砦の大門は一瞬にして熱気が鎮まり静寂が訪れた。
そして剣は行き先へ向かって振り下ろされる。
「…凱陣ンンンーーーッ!!」
…ズンッ、と地鳴りがした。
騎士団が手に手にした団旗、国旗の棹、そしてそれを持たぬ者は自分の足で地面を叩いたのだ。
「…剣礼ィィィィーーーッ!!」
旗を持つ騎士は旗を高く、旗を持たない騎士は一斉に剣を抜き胸の前に剣を掲げた。
…瞬間、地の底から身を震わせるような重い大歓声が響きわたる。
『『『ウオオオオオオーーー!!』』』
…ああ、すげえ、、、こんな、震えがくる歓声、
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…すまん。
今猛烈に異世界騎士道カッコイイ!場面なのに、あの地鳴りのような大歓声へピッタリはまる光景がそれしか思いつかなかった…。いやマジで鳥肌が立つくらい凄いんだよ、あの歓声は…。
「行くぞ。」
完全に騎士団大将の顔をしたジェラルドさんが大きく一歩を靴音をも高らかに踏み出す。
俺達も場の雰囲気に姿勢を正し胸を張り本部へと続く『勇者の花道』を歩き出した。
ーーーしかし、花は突然に散る…。
<次回予告>
高らかに響きわたる大歓声、まだ作られた儚いものかもしれないがそれはいずれ彼らに力を与える。
しかし無常にも時は待たないのだ。
次回、思惑に、『第三十六夜 既定路線』
お楽しみにね?
「納品をあきらめたらそこで試合終了だよ。」
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