26 / 37
第二十六夜 落としどころ
しおりを挟む
第二十六夜 落としどころ
いくら牙狼がフレでも、お仕事には守秘義務ってやつがあるんだなぁ。
メッセを閉じ、牙狼に向き直る。
「わるい、ちょっと事情があって俺の話はまだ言えない。少し時間くれ。なあところでさ、記憶があやふやって話ししてたけど、ナイミリ以外にリアルの事ってどこまで思い出した? 実は俺、お前と飲みに行く約束してたんだけど、お前ブッチしててさ。更に連絡も取れないし、その後ログインもしてなかったから心配してたんだよ。」
「ナイミリ…? リアル…? 飲み会…? ろぐいん…?」
あれ? そこ微妙?
「んー、そうだな。えっと、牙狼は俺とリアルでも友達で、」
「サイと俺が友達?」
えっ、なんか今地味にショックなワードが…。いやいや、多分まだ記憶喪失範囲ってとこだよな?
「…うん。たまに飲みに行く仲だったよ?」
「…たまに飲みに行く仲…? いや、確か俺達は『結婚』してたよな?」
………は?
「ちょ、待って。いまリアルの話だけど? 牙狼、記憶と言うかアタマ大丈夫か?」
「リアルは何かわからないが、俺とサイは前世では宣誓を交わした正式な夫婦だった記憶があるぞ?」
いやいやいやいや、確かにナイミリで結婚が実装された時お試し夫婦はやった事あるけど、リアル夫婦とかどっからきたよ?!
「待て、牙狼。それはナイミリ内の話で、リアルは普通の友達だ。確かにナイミリで一瞬夫婦だったけど、特典の旨みがなさすぎて3日で離婚したからな?!」
ナイミリで結婚すると、夫婦特典で手持ちアイテムと倉庫共有、パーティーバフ、ステータスアップがつく。
が、アイテム共有はギルドでもフレでもある程度出来るし、パーティーバフは魅了無効で二人一緒のパーティー時にしかかからない。そして一番の売りであるステアップだが、個人の一番低いステ一つだけ相手との差でパーセンテージ上乗せする。しかし、同職同士で低いのが同じステだと上乗せなんか微々たるモノすぎて全く旨みゼロだ。
ここまでくるとメリットなくて二人はラブラブ♡既婚アピール出来るくらいなんだなぁ…。
尚、牙狼と俺は職的に一応ステの恩恵はあったが、プロフィールとアイコンに既婚の印である♡マークが丸見えになり、道端で出会うフレ達にいちいち結婚おめ♡と言うチャを浴びせられる苦行を強いられ速攻離婚した。
「ナイミリ…? いや待ってくれ、前世では俺はサイを伴侶として愛してたんじゃないのか? いつも一緒に旅をしてた筈。………このリッデリアでの、俺の前世の記憶は…なんなんだ?」
牙狼は信じられないと言う顔と言うか、絶望顔で額を押さえている。
「いや、お前思い出す記憶中途半端すぎんだろ!!」
「そんな、…この記憶が、サイを愛していた記憶が中途半端…だと…?」
あー、一発ぶん殴れば思い出すかな…?
「とりあえずだな、まず聞け! お前の前世の記憶だと言ってる『牙狼』の話は半分当たりだ。だが、前世は前世でもソイツはナイツオブミリオンって言うゲーム内の記憶で、お前本体は牙狼じゃなく『乾朝陽』。牙狼ってのは乾のいぬから進化した名前だよ。俺の高校時代からの友達でナイミリのフレ。ちな卒業後は飲み友に進化した。尚、お前の前世追加情報はまあまあイケメンだったが結婚もしてないし彼女もいない、だ。はっはっはっはー!」
ズビシッと前世の記憶を突き付ける。
「…乾、朝陽…? あさ…ひ、俺の名前……? え、サイは、………もしかして斉藤大和、ヤマト?」
アサヒはふるふると震えながら、ゆっくりと俺を指差した。
「はいはい、やっと正解ー。俺ヤマトだ、ヤマト。ったくもー、アサヒは前世でも寝ぼけ癖酷かったけど、死んでもそれ治んねえなぁ。」
やっと思い出したか親友め!
やっぱチェストの角如きじゃコイツは目が覚めないんだな。前世でもよく寝ぼけてて、泊めてやった朝イチなんかはアサヒんちの飼い猫(めっちゃ可愛い黒猫ちゃん)の名前で呼ばれたもんな。ココ、おいで~って。
どうやったら人間と猫を見間違えるんだ、お前は…。
ある意味ひと仕事終えた俺がやれやれとエスプレッソに口をつけようとしたら、アサヒがふらふらこちらにやってきて隣りにボスンっと座った。
横並びに座ったせいで高級レストランの個室と言うのに、なんだかいつもの居酒屋のカウンターみたいになった。但し絵面はキラキラエルフと黒の石油魔王と言うラノベもびっくり絵面だが。
「…うう、マジか~。うわ、なんか全部思い出してきた…。」
色々思い出したらしく頭を抱えるアサヒ。
はは、黒歴史でも思い出したかな?
居酒屋ならまあまあビールでも飲みなとすすめるレベルの落ち込みっぷりだ。
「まあ人生色々あるさ。今世も頑張っていこうぜ。」
とりあえず励ましとこう。
今世は残念ながら魔王だけどな!
ポンポンと肩を叩くとアサヒは顔を上げこちらに向き直った。
「……つーか、ヤマト! マジ会いたかった…っ! 俺、俺、多分あの時、飲み会の約束の日に死んだっぽい…。」
「え、マジ?」
あの日、アサヒが…?
「そう。あの日は…、いやまず、ヤマトと久しぶりに会うから、飲みで潰れてもいいように次の日有給取れるよう仕事調整してこれでもかと詰め込んでて、そのせいかいつも疲れが取れなくてずっと調子悪くて…。でも今日はヤマトに会うからってエナドリ飲んで頑張って定時に上がったんだけど、待ち合わせまでまあまあ空き時間ができてさ。なんとなくナイミリにログインしたんだ…。軽くダンジョン潜ってる時に、突然頭が締め付けられように痛くなって目の前が真っ白になった。今思えば多分、脳の血管がイカれて死んだと思う。…ごめんな、待ち合わせに行けなくて…。あの駅前のドトーチェで…、ヤマトはずっと待っててくれたんだろ…?」
駅前のドトーチェ、先に来たらコーヒーでも飲んで待ってる事、それがいつものお約束。仕事帰りの待ち合わせ故にお互いしょっちゅう遅刻するので、外で待ちぼうけよりはなっていつの間にかそうなってた。
あの日も先に来た俺はコーヒーを飲みながらアサヒを待っていた。…一応閉店まで。
「…いやまあ、確かに待ってたけど…。でも、アサヒがそんな事になってるなんてしらな、」
「俺は! 俺は死ぬ前にヤマトに会いたかった!! 最後にヤマトが好きって言いたかった!! ほんとは離婚なんてしたくなかったぁぁぁ!!」
アサヒはダンっとテーブルに手を叩きつけ、だーっと滝のように涙を流した。
え、ちょ、アサヒ?! なんか記憶が大混乱してますけどぉぉぉっ?!
「ちょっと待ったぁぁぁーーーッッッ!!」
突然部屋に響き渡るストップコール!
「エル?!」
振り返るとエルがいた。
但し、この部屋への侵入を阻む見えない壁に鬼の形相をしながらビッタリくっ付いた状態で…。
うわっ、何これ、パニックホラーかなんか…?
「牙狼さんッ! …いや、牙狼ッ!! サイは俺の嫁だーーーッッッ!! 愛想つかされて離婚されたヤツは引っ込んでろーーーッッッ!!」
エルは壁に引っ付きながら吠えた。
………今、それ?
「…お前は、確かサイにちょっかいかけてたヤツ…、ウルド(※エル所属のギルド)のエルだったな。思い出したよ。」
アサヒはふらりと席を立ち、エルの方へゆっくり歩いて行った。…何故か威圧だしながら。
アサヒの進行方向のドアの近くにいたせいで、威圧のとばっちりをまともにくらってしまった宰相さんがヒィッと言いながらその場にへたり込んだ。
「ウェラム、貴様は下がっておれ。」
魔王様然としたアサヒが宰相さんに命令する。
命令されて若干恐慌状態から回復した宰相さんは、魔王様アサヒの前に両手を広げ跪きこれ以上進むのを阻止する。
「…わ、我が君、お待ちを! これ以上はお進みくださるな! この魔狼族は危険、」
「我がこの獣程度に土をつけられると申すか? この魔王がか?」
「み、御心のままにっ…!」
ちょ、アサヒさん、魔王パワー出し過ぎっすわ…。
恐怖で再び腰を抜かした宰相さんはガタガタ震えながら、ケツ移動でズサササと隣りの部屋の隅っこまで逃げて行った。
邪魔がなくなった戸口でエルとアサヒが向かい合う。
「まさかお前も転生してるとは思わなかったよ。死んでもまだヤマトに付き纏いしてるんだな。凄い執念だ。」
「…ふはっ、転生とか笑えるわ。転生したのアンタだけだし。俺とサイはコッチに仕事できただけ。あはは、魔王にぼっち転生おめでとーごさいますー。」
「は? 誰がぼっちだと? このストーカーが。」
「いやいや、それ牙狼サンの方が界隈で有名ですけど? 自己紹介おつでーす。」
…ダメだ、こいつら。イキりキッズ並みの会話レベルなんだが。
つーか、お前らストーカーって…まさかゲーム内で俺の事ストーキングしてたの…?…マジ?
「やっぱり一度お前とはPvPしなきゃと思ってたが…。表に出ろよ、この駄犬が。」
「はっ、駄犬はお前だろ。自己紹介が尽きないな。来いよ、くそ犬ヤロウ。」
ヤンキーの如きメンチを切りあう一触即発なバカ犬が二匹…。
「…やめろーーーーッ!!このバカどもーーーッッッ!!」
スバーンッズバーンッ
うらぁっ、ハリセンならぬバトルファン(※戦扇)をおみまいじゃーッ!!
「「痛ぁっ!!」」
「うっさい! お前らとりあえず正座しろっ!」
叩かれた頭をさすりながらバカ二匹は素直に正座した。
…つーか、お前らバトルファンで殴られたのにダメージ浅すぎない? DEF(※防御力)どうなってんの?
<次回予告>
再び巡り会うのは運命、いや想いの強さだ。
望まぬ未来に抗う為に戦ってもいい筈なのだ。
次回、変わる道に。『第二十七夜 ボーダーレス』
お楽しみにね?
「アダルトタッチで正社員になぁれ!」
※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
いくら牙狼がフレでも、お仕事には守秘義務ってやつがあるんだなぁ。
メッセを閉じ、牙狼に向き直る。
「わるい、ちょっと事情があって俺の話はまだ言えない。少し時間くれ。なあところでさ、記憶があやふやって話ししてたけど、ナイミリ以外にリアルの事ってどこまで思い出した? 実は俺、お前と飲みに行く約束してたんだけど、お前ブッチしててさ。更に連絡も取れないし、その後ログインもしてなかったから心配してたんだよ。」
「ナイミリ…? リアル…? 飲み会…? ろぐいん…?」
あれ? そこ微妙?
「んー、そうだな。えっと、牙狼は俺とリアルでも友達で、」
「サイと俺が友達?」
えっ、なんか今地味にショックなワードが…。いやいや、多分まだ記憶喪失範囲ってとこだよな?
「…うん。たまに飲みに行く仲だったよ?」
「…たまに飲みに行く仲…? いや、確か俺達は『結婚』してたよな?」
………は?
「ちょ、待って。いまリアルの話だけど? 牙狼、記憶と言うかアタマ大丈夫か?」
「リアルは何かわからないが、俺とサイは前世では宣誓を交わした正式な夫婦だった記憶があるぞ?」
いやいやいやいや、確かにナイミリで結婚が実装された時お試し夫婦はやった事あるけど、リアル夫婦とかどっからきたよ?!
「待て、牙狼。それはナイミリ内の話で、リアルは普通の友達だ。確かにナイミリで一瞬夫婦だったけど、特典の旨みがなさすぎて3日で離婚したからな?!」
ナイミリで結婚すると、夫婦特典で手持ちアイテムと倉庫共有、パーティーバフ、ステータスアップがつく。
が、アイテム共有はギルドでもフレでもある程度出来るし、パーティーバフは魅了無効で二人一緒のパーティー時にしかかからない。そして一番の売りであるステアップだが、個人の一番低いステ一つだけ相手との差でパーセンテージ上乗せする。しかし、同職同士で低いのが同じステだと上乗せなんか微々たるモノすぎて全く旨みゼロだ。
ここまでくるとメリットなくて二人はラブラブ♡既婚アピール出来るくらいなんだなぁ…。
尚、牙狼と俺は職的に一応ステの恩恵はあったが、プロフィールとアイコンに既婚の印である♡マークが丸見えになり、道端で出会うフレ達にいちいち結婚おめ♡と言うチャを浴びせられる苦行を強いられ速攻離婚した。
「ナイミリ…? いや待ってくれ、前世では俺はサイを伴侶として愛してたんじゃないのか? いつも一緒に旅をしてた筈。………このリッデリアでの、俺の前世の記憶は…なんなんだ?」
牙狼は信じられないと言う顔と言うか、絶望顔で額を押さえている。
「いや、お前思い出す記憶中途半端すぎんだろ!!」
「そんな、…この記憶が、サイを愛していた記憶が中途半端…だと…?」
あー、一発ぶん殴れば思い出すかな…?
「とりあえずだな、まず聞け! お前の前世の記憶だと言ってる『牙狼』の話は半分当たりだ。だが、前世は前世でもソイツはナイツオブミリオンって言うゲーム内の記憶で、お前本体は牙狼じゃなく『乾朝陽』。牙狼ってのは乾のいぬから進化した名前だよ。俺の高校時代からの友達でナイミリのフレ。ちな卒業後は飲み友に進化した。尚、お前の前世追加情報はまあまあイケメンだったが結婚もしてないし彼女もいない、だ。はっはっはっはー!」
ズビシッと前世の記憶を突き付ける。
「…乾、朝陽…? あさ…ひ、俺の名前……? え、サイは、………もしかして斉藤大和、ヤマト?」
アサヒはふるふると震えながら、ゆっくりと俺を指差した。
「はいはい、やっと正解ー。俺ヤマトだ、ヤマト。ったくもー、アサヒは前世でも寝ぼけ癖酷かったけど、死んでもそれ治んねえなぁ。」
やっと思い出したか親友め!
やっぱチェストの角如きじゃコイツは目が覚めないんだな。前世でもよく寝ぼけてて、泊めてやった朝イチなんかはアサヒんちの飼い猫(めっちゃ可愛い黒猫ちゃん)の名前で呼ばれたもんな。ココ、おいで~って。
どうやったら人間と猫を見間違えるんだ、お前は…。
ある意味ひと仕事終えた俺がやれやれとエスプレッソに口をつけようとしたら、アサヒがふらふらこちらにやってきて隣りにボスンっと座った。
横並びに座ったせいで高級レストランの個室と言うのに、なんだかいつもの居酒屋のカウンターみたいになった。但し絵面はキラキラエルフと黒の石油魔王と言うラノベもびっくり絵面だが。
「…うう、マジか~。うわ、なんか全部思い出してきた…。」
色々思い出したらしく頭を抱えるアサヒ。
はは、黒歴史でも思い出したかな?
居酒屋ならまあまあビールでも飲みなとすすめるレベルの落ち込みっぷりだ。
「まあ人生色々あるさ。今世も頑張っていこうぜ。」
とりあえず励ましとこう。
今世は残念ながら魔王だけどな!
ポンポンと肩を叩くとアサヒは顔を上げこちらに向き直った。
「……つーか、ヤマト! マジ会いたかった…っ! 俺、俺、多分あの時、飲み会の約束の日に死んだっぽい…。」
「え、マジ?」
あの日、アサヒが…?
「そう。あの日は…、いやまず、ヤマトと久しぶりに会うから、飲みで潰れてもいいように次の日有給取れるよう仕事調整してこれでもかと詰め込んでて、そのせいかいつも疲れが取れなくてずっと調子悪くて…。でも今日はヤマトに会うからってエナドリ飲んで頑張って定時に上がったんだけど、待ち合わせまでまあまあ空き時間ができてさ。なんとなくナイミリにログインしたんだ…。軽くダンジョン潜ってる時に、突然頭が締め付けられように痛くなって目の前が真っ白になった。今思えば多分、脳の血管がイカれて死んだと思う。…ごめんな、待ち合わせに行けなくて…。あの駅前のドトーチェで…、ヤマトはずっと待っててくれたんだろ…?」
駅前のドトーチェ、先に来たらコーヒーでも飲んで待ってる事、それがいつものお約束。仕事帰りの待ち合わせ故にお互いしょっちゅう遅刻するので、外で待ちぼうけよりはなっていつの間にかそうなってた。
あの日も先に来た俺はコーヒーを飲みながらアサヒを待っていた。…一応閉店まで。
「…いやまあ、確かに待ってたけど…。でも、アサヒがそんな事になってるなんてしらな、」
「俺は! 俺は死ぬ前にヤマトに会いたかった!! 最後にヤマトが好きって言いたかった!! ほんとは離婚なんてしたくなかったぁぁぁ!!」
アサヒはダンっとテーブルに手を叩きつけ、だーっと滝のように涙を流した。
え、ちょ、アサヒ?! なんか記憶が大混乱してますけどぉぉぉっ?!
「ちょっと待ったぁぁぁーーーッッッ!!」
突然部屋に響き渡るストップコール!
「エル?!」
振り返るとエルがいた。
但し、この部屋への侵入を阻む見えない壁に鬼の形相をしながらビッタリくっ付いた状態で…。
うわっ、何これ、パニックホラーかなんか…?
「牙狼さんッ! …いや、牙狼ッ!! サイは俺の嫁だーーーッッッ!! 愛想つかされて離婚されたヤツは引っ込んでろーーーッッッ!!」
エルは壁に引っ付きながら吠えた。
………今、それ?
「…お前は、確かサイにちょっかいかけてたヤツ…、ウルド(※エル所属のギルド)のエルだったな。思い出したよ。」
アサヒはふらりと席を立ち、エルの方へゆっくり歩いて行った。…何故か威圧だしながら。
アサヒの進行方向のドアの近くにいたせいで、威圧のとばっちりをまともにくらってしまった宰相さんがヒィッと言いながらその場にへたり込んだ。
「ウェラム、貴様は下がっておれ。」
魔王様然としたアサヒが宰相さんに命令する。
命令されて若干恐慌状態から回復した宰相さんは、魔王様アサヒの前に両手を広げ跪きこれ以上進むのを阻止する。
「…わ、我が君、お待ちを! これ以上はお進みくださるな! この魔狼族は危険、」
「我がこの獣程度に土をつけられると申すか? この魔王がか?」
「み、御心のままにっ…!」
ちょ、アサヒさん、魔王パワー出し過ぎっすわ…。
恐怖で再び腰を抜かした宰相さんはガタガタ震えながら、ケツ移動でズサササと隣りの部屋の隅っこまで逃げて行った。
邪魔がなくなった戸口でエルとアサヒが向かい合う。
「まさかお前も転生してるとは思わなかったよ。死んでもまだヤマトに付き纏いしてるんだな。凄い執念だ。」
「…ふはっ、転生とか笑えるわ。転生したのアンタだけだし。俺とサイはコッチに仕事できただけ。あはは、魔王にぼっち転生おめでとーごさいますー。」
「は? 誰がぼっちだと? このストーカーが。」
「いやいや、それ牙狼サンの方が界隈で有名ですけど? 自己紹介おつでーす。」
…ダメだ、こいつら。イキりキッズ並みの会話レベルなんだが。
つーか、お前らストーカーって…まさかゲーム内で俺の事ストーキングしてたの…?…マジ?
「やっぱり一度お前とはPvPしなきゃと思ってたが…。表に出ろよ、この駄犬が。」
「はっ、駄犬はお前だろ。自己紹介が尽きないな。来いよ、くそ犬ヤロウ。」
ヤンキーの如きメンチを切りあう一触即発なバカ犬が二匹…。
「…やめろーーーーッ!!このバカどもーーーッッッ!!」
スバーンッズバーンッ
うらぁっ、ハリセンならぬバトルファン(※戦扇)をおみまいじゃーッ!!
「「痛ぁっ!!」」
「うっさい! お前らとりあえず正座しろっ!」
叩かれた頭をさすりながらバカ二匹は素直に正座した。
…つーか、お前らバトルファンで殴られたのにダメージ浅すぎない? DEF(※防御力)どうなってんの?
<次回予告>
再び巡り会うのは運命、いや想いの強さだ。
望まぬ未来に抗う為に戦ってもいい筈なのだ。
次回、変わる道に。『第二十七夜 ボーダーレス』
お楽しみにね?
「アダルトタッチで正社員になぁれ!」
※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました
あさきりゆうた
BL
BLで「最終決戦に負けた勇者」「くっころ」、「俺、この闘いが終わったら彼女と結婚するんだ」をやってみたかった。
一話でやりたいことをやりつくした感がありますが、時間があれば続きも書きたいと考えています。
21.03.10
ついHな気分になったので、加筆修正と新作を書きました。大体R18です。
21.05.06
なぜか性欲が唐突にたぎり久々に書きました。ちなみに作者人生初の触手プレイを書きました。そして小説タイトルも変更。
21.05.19
最終話を書きました。産卵プレイ、出産表現等、初めて表現しました。色々とマニアックなR18プレイになって読者ついていけねえよな(^_^;)と思いました。
最終回になりますが、補足エピソードネタ思いつけば番外編でまた書くかもしれません。
最後に魔王と勇者の幸せを祈ってもらえたらと思います。
23.08.16
適当な表紙をつけました
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる