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運命

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 それから数時間後、俺はフラフラしながら瑠璃さんの休憩室を出ていく。

「あ……」

 その時、桃井さんの休憩室を出て来た優とばったりと出くわす……。

「よ、よお……無紅」
「お、おう……」

 さっきの件があったからか、若干気まずい俺達。

「まあ、立ち話もなんだ俺の部屋で話さないか?」
「え? いいのか? 桃井さんにまた何か言われるんじゃないか?」

「え? いやまあ、陽菜は今寝てるんで……」
「ほお……?」

 俺は優が顔を赤らめているのと、えらい肌艶がいいのと、その物言いで色々察した。

「ふむ、では、優君ののろけ話でも聞きますかね?」
「ば、馬鹿っお前っ! お前こそ、瑠璃さんの部屋で何していたんだ? お前こそ顔艶が偉いいいぞ?」

「えっ! うーん? 俺の場合は瑠璃さんにストイックファイターで扱かれて、ダウンしていたらしく、さっき若干寝ていたらしいが?」
「……えっ! あ、あー成程、そ、それで闘夜とか……」

「闘夜? 何の話だ?」
「えっ! いや、独り事だ! そうか、色々お互い大変だったな……」

 鼻を何やら膨らませ、にやけているメガネが何か言ってますが?

 こうしてなんやかんや言いながら、俺達は今度は優の休憩室へ向かう。

「よお?」

 部屋に入ると何と驚いた事にそこには豪山パイセンがいるではないか?

「えっと?」
「俺が呼んだんだ」

 成程、優は何か3人で話したい内容があるわけか。

「じゃ、優、例のステージに行くか」
「そうですね」

 よく見ると2人ともVRスーツを装着しようとしている。

 成程、この感じだとアルカディアアドベンチャーで何か話したいと言うわけか。

 俺も2人に習って、急いでVRスーツに着替える。

「じゃあ、無紅。設定を豪山先輩に合わせて」
「おっけ!」

 こうして俺達はアルカディアアドベンチャーの世界に久しぶりにダイブする。

「ここは……?」

 紅葉した葉が周囲の木技からハラリハラリと落ちてくる。

 赤い門……。

「思い出さないか? ここは桃井さんと俺とお前で来た山上の神社だ」 
「あ、ああ……」

 目の前の賽銭箱を見て思い出した。

 確か、あの時3人で色々お願いしたんだっけな。

 それはいいが、何故此処に豪山パイセンを?

「そうか、お前達この神社に来ていたのか……」
「え?」

「ここはな、藤花の一族が管理する神社なんだ」
「ええっ! じゃあ?」

「そうだ、俺はゲームではなく地上で此処に来たことがあるんだ」

 そ、そうか、アルカディアアドベンチャーは実際の地球の地上を模したコアモンスター討伐のシミュレーター。

 この土地に藤花先輩と豪山パイセンが絡んでいるなんて、何とも不思議な縁だよな。

「こう言っちゃなんですが俺達不思議な縁がありますよね」
「そうだな……まるで何かに導かれているように」

 真面目で確信を付いているパイセンの会話内容に思わず黙ってしまう俺達。

 実際豪山パイセンは馬鹿じゃない。

 むしろ、合理的でそれに物凄く勘が良く、確信を突くところがある。

「なあ? ところで無紅君よ。お前さんは天使クロノから何か聞かされている事はないか?」
「え? ああ……本国までの移動の手順なら」

「他には?」
「あ、えっと、クロノ達の故郷が絶賛星間戦争真っ最中だってことかな?」

「それだ! 俺達にも詳しく教えてくれ」

 あ、そっか、この事はまだ誰にも話してなかったしな。

 俺は端的に2人に説明する。

「……成程、となると戦争に巻き込まれる可能性が高いか」
「ですね」

 豪山パイセンと優は俺の話を聞いて頷く。

「クロノも本国に帰れるワープが使えるか分らないって話していたしね……」
「そうか、じゃ、そろそろ戦闘準備していた方がいいかもな」

「え? 何で?」
「おそらくだが俺達は戦争に巻き込まれる。というかもう巻き込まれている」

「は? ええっ!」

 優の話を聞き、俺の驚く声が優の部屋に響き渡るのだった。
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