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N・R・S大隊

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 ……という事で、日野さんは鈍った腕を研磨する為にあんな感じで、コアモンスターを殲滅しているわけなんですが……。

 正直、「鈍ってて、アレなんだ……」というのが俺達の正直な感想。

 よくあの人達、3期生や豪山パイセン達と地形を変えているのを目撃するが、彼ら曰く「大事の前の小事であるし、そもそも誰も地形の原型を知らないので特に問題なし」とのこと。

 ま、まあね……間違ってない……間違ってないけど……。

 ちなみに植物と仲の良い藤山パイセンと、たまに彼ら(自然破壊脳筋組)が喧嘩して、植物結界で吊るされてたりするけど(日野さん以外)、最近このやり取りにも慣れて来た。

 この時、ふと……俺の脳裏にはメテオコアがここに落ちた理由は、「もしかして地球を守る為に、人類を駆除する為に誰かが呼んだんじゃ?」とか考えてしまう……。

 あ、勿論軽い冗談です、うん。

 ……話を戻すけど、これらの行動は、【惑星リッド】に行った時用でもある。

 というのも、あちらの惑星でもドンパチやっているみたいだから、尚更強くなっていないと。

 もしかしたら、こちらのコアモンスター達よりも遥かに強い相手かもしれないし……。

 だからこそ、日野さんはあんなに張り切って、コアモンスター達を殲滅している。

 当然俺らもそう。

 ちなみに日野さん率いる傘下の大隊には【N・R・S大隊】というネーミングがつけられている。

 これはニューレッドサンの略称であり、日野さん曰く「そのままじゃなんかダサい」から……とのこと。

 ま、まあ、隊の名前って大事だし、指揮に関わるからね……うん……。

 なお【N・R・S大隊】には3期生から現在の5期生の猛者達で構成されている。

 んで、俺らは現在、日野明率いる【N・R・S大隊】傘下の【クロノ小隊】に現在属しているってわけ。

 なお、【クロノ小隊】隊長は……。

「皆、日野大隊長の部隊の戦闘があらかた終わったみたいだし、あちらに合流しようか」
「はい!」

 今、俺らに指示を出した人物、黒野瑠璃が我が小隊の隊長である。

 瑠璃さんの正体は、俺の契約している天使クロノに使える忠実な僕。

 天使クロノ曰く、現在、地球外の科学、星天文明で作られた特殊ボディに身を宿しているらしいけど……。

 年齢は最低でも数百年は生きているし、まだ、色々と謎が多い。

 これは天使クロノもそう。
 
 あ、そうそう、瑠璃さんは、この間の戦闘と最近の開拓実績が実を結び、最近中佐から大佐に昇進した。

 瑠璃さん曰く、日野明さんと上手く連携が出来、結構な土地面積を居住出来るレベルまで開拓している実績が、レッドサンの上層部に受けが良かったからだそうな。

 てなわけで、当然俺達【クロノ小隊】の皆もそれぞれ昇格し、ヒャッホイ状態だ!

 という事で、俺らはここにいるワケです。

 ちなみに、藤山パイセンは割と遠くの植物が生い茂った場所で、他の【N・R・S大隊】メンバーと開拓作業していただいている。

 まあ、ここいらの編成は適材適所ってやつで……。

 そんな事を考えながら、俺らは崖下にいる日野さんのいる場所に合流することに……。

「……しかし、本物の太陽は眩しいな……」

 俺はそのあまりの眩しさに、思わず手をかざしてしまう。

 ジリジリと照りつける太陽が暑く……更にはその照りつける光がとても眩しく感じる……。

 というのも、俺らが住んでる地下って、調整された安定した人口太陽だからこんな地上での暑さはないし、そもそも四季ってものが存在しないからな……。

 ちなみに、今いる地上は夏って季節らしく、昼間だからか体感35度前後の温度はありそうとのこと。

 だからか、俺達にとっては、この「夏は蒸し暑い」という地上では当たり前の出来事がとても新鮮に感じるのだ。

 俺らは星天文明から作られた見た目は普段着、でも特殊繊維で作られた軽装の服を着ているから何とかなっているが……。

「うーん! この服涼しいからいいよね!」
「ですね! 桜井さん」 
 
 ピンクのワンピースを自身の手で触りながら、にこやかに砂地をかけていく桜井さんと、それに同意する優。

「まあ、私達の星の文明から作った、冷風機能のハイテク使用だから当然だな……」

 そんな2人の話を聞いていた瑠璃さんは、自慢げに軽く頷きながら砂地を軽やかにかけていく。 

「日野さーん!」

 俺達は近くに見えて来た、日野さん達に元気よく、力いっぱい手を振り近づいていく。

「おお……クロノ小隊は仕事が早いな……。どれ、旗がいちにーさん……全部で計5個……か……大したもんだ」

 背に大剣を担いだ日野さんは、俺達の背後に見える、レッドサンデジタルフラグを数え、俺達を褒めちぎる。

 流石は日野さん、我らが大隊長。

 褒めるべきところをキチンと評価してくれるのは、上に立つものとして素晴らしいと思う。

 口だけではなく、ちゃんと評価者に正当な評価を伝えてくれる上司は多くはない。

 器の小さい将だと、評価はしないは叱責のみというウンコっぷりだしね。

 やはり、人間付き合うべき上司は強く徳の高い人格者……本当にこの隊に入れて、俺はラッキーだったよ。

 とか考えているうちに、……あれ?

 日野さんのこちらを見て微笑んでいた笑顔が急に険しくなってしまう?

 そして、それと同時に何やら地面から小さな小さな……異音が聞こえた気がした……。

 ん? ……後何か、砂地が少し揺れて……?

「……皆の衆っ! ……抜刀及び戦闘態勢ッ!」 

 日野さんの気合の入った大声と共に、途端に俺達の目の前に砂塵が舞う!

 日野さんの大声と、目の前の出来事に咄嗟に戦闘態勢をとっていく【N・R・S大隊】!

 ここら辺は流石、選抜された選りすぐりの猛者達といったところだろうか。

  最大ボリュームでのスピーカーが壊れたような凄まじい異音……いや奇声が周囲に鳴り響く!

 だが、この隊は歴戦の猛者が集いし大隊……。

 一瞬……ほんのわずか一瞬……その凄まじい奇声に怯んだものの、即座に抜刀し、戦闘態勢を取り、砂塵が舞い巨大な何かがいる中心を円状にジリジリと散開していく。

 砂塵が少し治まり、遥か頭上からはパラパラと落ちてくる砂粒。

 その少し晴れた、頭上から覗くは、青い複数の複眼!

 し、しかもその複眼がかなりデカイし、キモい!

 一つ一つの眼が大人の握りこぶし大程あるぞ!

 砂塵が晴れていく隙間に、その複眼以外にも澄んだ青色の巨体が次第に見えてくるが……。

「瑠璃! この大きさ……コアの濃さ……もしやコレは?」
「……お察しの通り、6つのマスターコアから派生した破片から育った【パーツコアモンスター】ですね」

「パ……パーツコアモンスターだと? ま、まさかこんなところに……」

 日野さんと瑠璃さんの言葉にざわつく3期生の猛者達。

「い、一体な、何です? このモンスターは?」

 優は例の青い盾を構え、瑠璃さんに尋ねる。

「説明している暇はない! 一言で言うと、さっきの雑魚とは比べ物にならない強敵だ!」
「さ、さっきのモンスターが雑魚⁉」

 瑠璃さんの一言に驚く【N・R・S大隊】。

「アセイーツ、セク、ウェアー!」

 俺は咄嗟に拡張器で音を拡散させ、高らかに歌い、『天使の刻印』の中の刻印を発動させる!

 指示待ちするまでもない。

 どう考えても、使うべき歌だしね。

「皆っ! これが無紅君の武器強化の歌【インクリスドアタックパワー】だ!」

 流石、日野さん! 言葉で説明することにより、効果内容を共用出来るしね。

「おお⁉ 武器のパワー出力が最大値を遥かに振り切って……」

 途端に隊の下降気味だった士気が上がるのが、理解出来る俺。

 そう、これが【インクリスドアタックパワー】のもう1つの隠れた効果。

 攻撃力の大幅な上昇による、気持ちの向上ってやつだ……うんうん。

 更に俺とほぼ同時に、優も同様に動く。

「青き氷の盾よ! 我が声に応え、我が同胞達を守り給え!」 

 優の言葉に反応し、優の手に握られていた青き盾は眩い光を放つ!

 優の『天使の刻印』も発動し、同時にその青き神々しき光は俺達【N・R・S大隊】を優しく包み込む!

「優もやるな……。火力と防御力の大幅な上昇は当然隊に大きな恩恵を与える」

 瑠璃さんはいつもの青き剣を両手に持ち、攻撃態勢にシフトする。

 これは優の【神氷の盾】を完璧に信頼しているからだろう。

 【神氷の盾】……。

 これがまた、なかなか壊れた能力の盾で、一回だけだが致命傷を身代わりしてくれる優れた能力だったりする。

 前、豪山パイセンが、日野さんの必殺の一撃を食らって死ななかったのが、未完成だった優のこの盾のおかげだったっていう……。

 まあ、未完成だったので、豪山パイセンはしばらく安静状態だったんだけどね……。

 話を戻すが、この優が皆に張った盾……実は守りだけの効果に留まらないわけで……。

   砂塵が舞う中、再び奇声を上げ、その巨体をくねらせ巨大な口を開き俺達に襲い掛かって来る!

 その巨大な口? の中は透明で鋭利な牙のようなものが複数……というか沢山見える。

 恐らく飲み込まれたら最後……あの無数に見える透明な刃……。

 死……をイメージしていいものだろう。

「皆の衆っ! 緊急散開しながら、回避行動に専念せよっ! 桜井殿は絶対に死守するように!」
「応っ!」

 瞬時に隊に大声で指示を出す日野さん!

 その声には先程と違い、凄まじい緊張感が伺える。

 レッドサン開祖にして最強の1期生の日野明をして、そう感じさせるほどの強敵……。

 そのげきに当然ながら隊の皆に、程よい緊張感が走る……。

 その巨体に似合わぬ素早い攻撃……というか口撃!

 俺達は何とかそれをかわしていく……。

「……はわわわ……!」

 可愛らしい悲鳴を上げ、桜井さんも何とかソレをかわしていく!

 ちなみに桜井さんはひと時の終戦後、瑠璃さん……いや天使クロノから教育的指導を数か月受けた。

 そう……俺が昔受けた、エグイスパルタなやつね……。

 俺と優も然りだ……。

 という事で、体力と戦闘力は昔とは段違いなのである……。

 詳細は後日にまた詳しく語りたいと思う……ええ……(意味深な遠い目)。

 ……砂丘に深く沈んだソレは再び、荒々しくも砂塵をまき散らし、俺達を攻撃して来る!

 そんな事を繰り返し……数分後、とある異変に気が付く俺達。

「瑠璃……」
「はい……間違いないですね……」

 俺達の前方でアイコンタクトを取り合う、日野さんと瑠璃さん……。

 多分、皆も気が付いていると思うけど……。

「気を付けろ! こいつは1体だけじゃない! 複数体いるぞ!」
「今の見た目は巨大ワーム型だ!」

 晴れぬ砂塵の中、日野さんと瑠璃さんの大声が砂丘にこだまする……。

 素早い攻撃と、見えづらい砂塵の中、1体と思われた巨大ワームは実は複数いることが判明する!

 

「承知っ! 心得た!」

 日野さんと瑠璃さんの大声に呼応し、3期生の猛者達と豪山パイセンは各自最前線に躍り出る!

 わざわざ危険に身を晒すのは、おそらくオトリ役だろうけど……。

 そんな事を考えながら、俺はやや前方にいる日野さんに目を向ける……。

「瑠璃……後の指揮は頼んだぞ……」
「はっ!……久しぶりに例の技を出されるんですね……」

 静かに頷き、大剣を刀の姿に変え、居合の構えをとっていく日野さん……。

 あ、コレって豪山パイセンを一瞬で倒した必殺の居合の構えだ……。

 俺達クロノ小隊はその構えを見て、思わず身震いしてしまう……。

 ちなみに前方にいた、豪山パイセンも尋常じゃない日野さんの様子にこちらをチラチラと見ている模様……。

 ま、まあ……一番の被害者だしね、豪山パイセン……。

 ……徐々に日野さんの腰が低くなり、更には日野さんの刀の刀身を注目すると……何と次第に真っ赤になっていくのが目に見えて分る。
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