上 下
6 / 50
第一章 ネウイの町

#5 ザーシャ、ラーシャと出会う

しおりを挟む
「さて・・・と、無事に宿も取れたことだし冒険者ギルドに行ってみるか」

 僕たちはさっきのところまで戻ってきた。まだ日暮れまで時間がある。今日のうちにできることはしておくべきであろう。ナビによるとここを曲がった裏路地を突っ切っていくのが一番近いようだ。

『―――!』

 しばらく進むと、どこからか言い争う声が聞こえてきた。声を頼りに辿っていくと路地の引っ込んだところで4人が言い争いをしていた。うち二人はガラの悪い男で、もう片方は僕と同じぐらいに見える女の子二人。話の内容から予想するに借金の返済を巡るトラブルらしい。

「話が違うわ!大銀貨3枚だったはずよ!」

「借金には利息っつうもんがあんのよ。嬢ちゃんたちには理解できないかもしれんがな」

「それでも大銀貨6枚はありえないわ!」

「なんだぁ?そんなルールねぇし。利息が払えんならその体で払ってもらってもいいぜぇ」

 男たちが卑劣な目で女の子たちを見ながら、ぎゃはははと下品に笑う。それに対して女の子たちは悔しさで唇をかんでいる。なんなんだ、これは。まあ、利息が暴利は百歩譲っていいだろう。地球でも普通にあることだし。ないと金貸しもやっていけないだろうし。ただ、利息が契約と違うだの体で払うだの、こんなことをしてゆるされるのか?

「レナ、ここではこんなことが許されているのか?」

「ううん。利息のことは法がないから何も言えないけど、借金を形にわいせつな行為を求めることは禁止されていたはずだよ」

「そうなのか。じゃあ少しばかり助けてあげるとしますか。レナはここにいて」

「やだ。絶対についてく」

「危険だぞ。ここにいたほうがいいんじゃないか?」

「大丈夫。お兄ちゃんが一緒だから。だめ?」

 レナが上目遣いをしてくる。・・・かわいい。・・・じゃなくて!理由が理由になってない!僕がいるからってなんだ!確かにレナに指一本触れさせないつもりだったけど。それでもどうなんだ?一応、義理の兄妹となったとはいえ、今日会ったばっかりの人間に全幅の信頼を寄せるのはどうかと思うぞ。

「分かった、分かった。絶対に離れるなよ」

 とか言いつつも許可してしまう僕は甘いのだろうか?

「うん!分かった!ずっとそばにいるね」

「じゃあ、行くぞ」

▼△▼△▼△▼△▼△▼△

「あのー、少しいいですか?」

「ああ?なんだお前らは?」

「通りすがりの旅人ですよ。まあ、そんなことよりも借金の形にそういう行為を求めるのは違法だったと思いますが、あなたたちは罰を受ける覚悟がおありで?」

「あんだ、兄ちゃん。やるのか?」

「そのきれーな嬢ちゃん置いてけば許してやるぜ」

 男たちが嫌らしい笑みを浮かべる。

「そういうのはいいからかかってこい」

 僕がキレ気味にいうと男たちは同時に襲い掛かってきた。はじめに前にいた男の股間に蹴りをいれるとそいつは蹲《うずくま》って動けなくなる。後ろにいた奴には後頭部に手刀を入れて意識を奪う。その間にさっきの男が話を聞けるほどに回復していたので大銀貨3枚を渡しながら、これ以上僕らに構うようなら容赦はしない。と言ってやったら、男はすごい勢いで首を振った。

「さっさと消えろ」

「はいぃぃ!」

 男はもう一人を抱えてすごい勢いで走り去っていった。

「さて、君たち大丈夫かい?」

「え、ええ。大丈夫よ」

「あの・・・助けて、くれて、ありがとう、ございました」

「そうか、怪我がなくてよかった。一応、自己紹介をしておくと僕は葵で、こっちは妹のレナね」

「レナです。よろしくお願いします」

 改めて女の子たちを見ると双子のようで姿、顔、髪の色がそっくり、というか僕には同じにしか見えない・・・一応髪の長さが違うのと見た感じの性格の差で判別できるけど。ロングの女の子は活発そうで、もう一人の女の子は髪は肩のあたりまででおとなしそうに見える。さっき、言い合いをしていたのはロングの子だ。

「とりあえず、ここじゃなんだから少し移動しようか」

 ということで僕らは表通りに移動したところにあるカフェに来た。

「改めてさっきは助けてくれてありがとう。あたしはザーシャで、こっちは妹のラーシャよ」

「ラーシャです。よろしくお願いします」

 ロングの活発そうな子が姉のザーシャで、短めの髪をした女の子が妹でラーシャというらしい。ザーシャはさっきとあまり印象が変わらないが、ラーシャの方は少しまともに話せるようになった。人見知りらしく、知らない人と話すのは苦手なのだそうだ。

「最初に言いたくないならいいけどなんであんなことになってたの?」

「ああ、あたしたちは孤児院の出でね。それで成人したから施設を出ることになったんだけど、出てすぐのころは全くお金が稼げなくてね。それで借金することになっちゃたんだけど、どこも貸してくれなかったの。まあ孤児だし、成人したばかりのどこ誰かもわからないあたしたちに貸してなんてくれないのがふつうなんだけどさ。それからあたしたちは冒険者として生活できるようになってコツコツお金を貯めて今日返済する日だったんだけど、とんだ目にあったわ」

 この世界では成人は15歳であり、目の前の二人は見た目、地球で17歳ぐらいだと思われるがいかんせん、こっちは一年が455日、15か月であるので見た目で判断することができない。

「お二人は今何歳なんですか?」

 ナイス、レナ。僕には女の子の年齢を聞くなんてできないからね。何て言われることか。

「二人とも17よ。見ればわかると思うけど双子でね、これまでいつも一緒に過ごしてきたわ」

 こっちの人は成長が遅いのだろうか?

「二人とも僕と同い年だったのか。見た目から同じぐらいだろうなぁとは思ってたけど」

「そうだったの!?」

「見た目と雰囲気から私たちより年上だと思っていました」

「そんなに大人に見えるかね?」

「見えるよ。特にさっきは怒ってたから特に。というかお兄ちゃん、さっきのやりすぎじゃない?」

「そうか?ああいう輩は痛い目を見ないと分からないからあれぐらいでちょうどいいか、むしろ優しかった方だと思うぞ」

「そっそう・・・」

 レナたちが多少ひきつった顔をしているが、これで懲りずにもう一度こういうことがあると思うのでもう少し厳しくしてやればよかったと今後悔している。これを言うと何を言われるかわかったもんじゃないので口にはしないが・・・。

「それで?ザーシャたちはこれからどうするの?」

「とりあえず冒険者ギルドにいって依頼を探してこの町を離れるわ。このままここにいたらあいつらにどんな目にあわされるのか分かったもんじゃないから」

「それなら私たちも一緒に行っていいですか?私たちはこれから登録しようと思ってて」

「そうなの?じゃあ一緒に行きましょうか。ああ、ついでっていうのはあれだけど私たちとパーティー組んでもらえないかしら。さっきの感じを見てるとレナはどうかわからないいけど、アオイは相当な手練れでしょ?」

「うん、まあ、そうなのかな?」

「何で疑問形なの」

「自信がないから、だね」

 なんてったって今まで日本の安全な環境にいた高校生ですから。
 こうして僕はザーシャ、ラーシャと出会った。


―――*―――*―――


更新履歴
2021/11/22
 葵、ラーシャ、ザーシャの年齢を16から17に変更
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八
ファンタジー
スキルが全ての世界で、主人公──レイは、スキルを持たない無能力者であった。 そのせいでレイは周りから蔑まされ、挙句の果てにはパーティーメンバーに見限られ、パーティーを追放させられる。 そんなレイの元にある依頼が届き、その依頼を達成するべくレイは世界に十本ある塔の一本である始まりの塔に挑む。 そこで待っていた魔物に危うく殺されかけるレイだが、なんとかその魔物の討伐に成功する。 そして、そこでレイの中に眠っていた《殺奪》という『スキルを持つ者を殺すとそのスキルを自分のものにできる』という最強のスキルが開花し、レイは始まりの塔で数多のスキルを手にしていく。 この物語は、そんな《殺奪》のスキルによって最強へと駆け上がるレイと、始まりの塔の最上階で出会った謎の堕天使の美少女が力を合わせて十本の塔を巡る冒険譚である。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

前世が官僚の俺は貴族の四男に転生する〜内政は飽きたので自由に生きたいと思います〜

ピョンきち
ファンタジー
   ★☆★ファンタジー小説大賞参加中!★☆★        投票よろしくお願いします!  主人公、一条輝政は国際犯罪テロ組織『ピョンピョンズ』により爆破されたホテルにいた。 一酸化炭素中毒により死亡してしまった輝政。まぶたを開けるとそこには神を名乗る者がいて、 「あなたはこの世界を発展するのに必要なの。だからわたしが生き返らせるわ。」 そうして神と色々話した後、気がつくと ベビーベッドの上だった!? 官僚が異世界転生!?今開幕! 小説書き初心者なのでご容赦ください 読者の皆様のご指摘を受けながら日々勉強していっております。作者の成長を日々見て下さい。よろしくお願いいたします。 処女作なので最初の方は登場人物のセリフの最後に句点があります。ご了承ください。

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...