上 下
2 / 24

第2話 頭が痛い、ため息がこぼれる

しおりを挟む
「いや~、俺って種が強いみたいでさ~、もう1発だったよ。さすが、王族って感じじゃない?」

 いけしゃあしゃあと得意げに語るこのお方を、ビンタ出来るくらいの立場にありたかった。仮に今ここで欲望のままにそうしたら、私だけでなく家に迷惑がかかってしまいますから、我慢するしかないのです。理不尽。

「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」

 良いかな? じゃないですわよ、このボケナ……何でもありません。

「あの、殿下。王族の婚約ゆえに、いくらご本人でも、そんな簡単におっしゃるなんてことは、ちょっと……」

「ああ、そうだな。本当は父上と母上が直々に詫びに来るみたいだったけど、やっぱり色々と準備が必要でさ。だったら、俺が取り急ぎ伝えてやろうと思って。偉いだろ?」

 どこがでしょうか? このおバ……お茶目さん♪

「つまり、国王と王妃もご存じということですね」

「ああ、さすがに子供が出来てしまったら、どうしようもないからな」

 どうしようもないのは、あなた様の知性でございます。好き勝手に子種を吐き出して、サルでございますか?

「シアラ、お前は美人で優秀だ。胸も決して小さくない」

「ありがとうございます」

「だから、きっとすぐに次の相手が見つかる。何なら、俺が見繕ってやろうか?」

「あはは、結構でございます」

 とりあえず、このバ……を早く、目の前から消し去りたい。

「うむ、分かった。じゃあ、俺はもう行くから」

 あっさりと踵を返したバカは……あ、バカって言っちゃった。まあ、もうこの際良いでしょう。あのバカ王太子は、ウッキユキな歩調で去って行く。恐らく、この後、愛しのデカ乳女さんとイチャコラするのでしょう。私はイラッとした。

 もちろん、女として嫉妬している訳ではなく、単純に人として苛立っている。なぜ、あんなサルバカ男が王太子なんだと。

「ああ、でもそうか。聞いたことがあるわ」

 本当は、もっと優秀な王太子がいた。それはあのサルバカ王太子の兄上なんだそうで。

 知力・体力ともに優れていて、おまけにイケメン。次期国王としてふさわしい王太子だったけど、権力に興味が無いからと、放浪の旅に出てしまったそうな……自由奔放な所は、兄弟そっくりね。

「はぁ~、これだから王族は」

 とりあえず、両親が帰ったら報告しなければ。妹のエリーはしばらく他の公爵家に居るから、手紙で伝えましょう。

「はぁ~……」

 私はもう1度、深くため息を吐いた。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

大好きな彼女と幸せになってください

四季
恋愛
王女ルシエラには婚約者がいる。その名はオリバー、王子である。身分としては問題ない二人。だが、二人の関係は、望ましいとは到底言えそうにないもので……。

泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される

琴葉悠
恋愛
 エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。  そんな彼女に婚約者がいた。  彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。  エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。  冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──

美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……。

四季
恋愛
美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……とんでもないものでした。

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

私の婚約者を奪った妹が婚約者を返品してきようとするけど、返品は受け付けません。 どうぞご幸せに。

狼狼3
恋愛
ある日。 私の婚約者を奪った妹。 優越感に浸っているのか、私を見下しながらそう告げた妹に、そっと呟く。 奪うのはいいけど、返品は受け付けないからね? 妹がどうなるのか、私は楽しみで仕方なくなった。

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

恋愛に興味がない私は王子に愛人を充てがう。そんな彼は、私に本当の愛を知るべきだと言って婚約破棄を告げてきた

キョウキョウ
恋愛
恋愛が面倒だった。自分よりも、恋愛したいと求める女性を身代わりとして王子の相手に充てがった。 彼は、恋愛上手でモテる人間だと勘違いしたようだった。愛に溺れていた。 そんな彼から婚約破棄を告げられる。 決定事項のようなタイミングで、私に拒否権はないようだ。 仕方がないから、私は面倒の少ない別の相手を探すことにした。

処理中です...