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第2章

5.

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 キーリの言葉に、アレンは楽しそうに笑った。そしてそのまま二階から下りていき、キーリも着いていく事にした。
 あの様子からして、ラルと話すのは無理そうだというのはキーリもわかっていたからだ。
 しかし、疑問も残っている。ゲーム内でもラルはああいう性格だったかどうか、というものだ。
 スキップしようが、選択肢から選ばなければならない。その際に選ぶものは、彼の寡黙さと冷たさを問うものが多かったという記憶がキーリにはある。
 出てくる立ち絵もあのような姿に覚えはない。あれがキャッチコピー通りならば、詐欺としかいえない。
 ただ、ストーリーを読んでいないキーリの知識では絶対に違っているとも言い切れない。

「ああ、チクショウ。読んでおけばこんな事には……」

 鬱々とした感情が胸奥を埋め尽くして、階段を下りる足取りも重い。先に下りたアレンはそんなキーリを見詰めていた。

「落ち込むなよ、キーリ。兄貴は極度の人見知りでさ。あんまり部屋からも出ないし、初対面の相手にはいつもあんな感じだぜ」
「部屋から、出ない?」

 その言葉にキーリは驚く。何故なら、ラルが本当に『夜の狼』のボスならばもっと活動的なはずだ。盗賊集団だというのに部屋に居ては何も盗めない。
 それがキーリには理解できず、ますます鬱々とした感情が大きくなっていく。
 すると、アレンはそのキーリの背を大きく叩いた。それは強めの勢いがあり、音が響き渡る。その痛みにキーリは飛び跳ねた。

「痛っ、馬鹿力、痛いって!」
「落ち込むなって! 兄貴と話したいなら俺が協力してやるからさ、あはは!」
「きょ、協力……?」
「おう。いいかー? 兄貴が苦手なのは知らない人間だ。つまり、お前が兄貴にとって知っている人間になればいいんだよ」
「つまり?」

 それにはキーリも、納得からくる小さな感嘆の息を漏らす。アレンはラルの弟だ。画期的な提案をしてくれるのでは、とキーリの心は軽くなる。
 キーリが期待に満ちた目を向けると、アレンは自分の胸を強く叩いた。任せろという態度は頼もしく、アレンは胸を張る。

「毎日、お前がここに来て兄貴に顔を見せる! それで解決だ!」

 堂々と言い切ったアレンの表情は誇らしげだった。しかし、それを聞いたキーリはその場で凍り付く事となった。
 そうしてキーリは、アレン達の家に通う事となる。
 キーリの当初の予定ではラルとはすぐに仲良くなれる予定でいた。何故なら攻略相手の好感度を上げる事に関してなら、キーリも自信があったからだ。
 しかし蓋を開けてみれば、好感度どころか、声すらかける前にラルは逃げる。結局キーリは渋々ながらアレンの言う通りにするしかなかった。
 そして、キーリが思う以上に長い間アレンの家へ通う事となる。
 ゲームのように一瞬で好感度が上がる事など、一切なかったのだ。

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