【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

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246.霊縁(11)シュエン・ディエ

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――むにゅん。

と、メイファンのふくらみが泡だらけに背中を滑った。

「また、めんどくさいこと考えてるでしょ?」

「ええ?」

大浴場ハーレム風呂は今日もキャッキャとにぎやかだけど……、その半分とは霊縁れいえんが結ばれてて、ちょっと振る舞いに困り始めてた。

――むにゅん(下)。

「大丈夫よ。今度はマレビト様が焦りすぎ」

と、かつてアスマを諭したような優しい声音で言った。

――むにゅん(上)。

「マレビト様が一人ひとりを大切にする人だって、んな分かってるから大丈夫」

「そ、そか……」

――むにゅん(下)。

大浴場ここでは、誰にも全然、自分から手を出さないままだしさっ」

「そ、それは……」

――むにゅん(上)。

「ひひっ! マレビト様のシキタリだねっ!」

「そ、そだな。そうかもな」

――むにゅん(下)。

んなをまとめてくれるけど、絶対に一人ひとりを見てくれてるって分かってるから、大丈夫」

「うん……」

――むにゅん(上)。

「チラッと見てくれてるよね!」

「あ……」

「ひひっ!」

大浴場ハーレム風呂の風景は変わらない。人数は減ったし、リーファも加わったのに今日も明るくふんわりと包まれて、照れ臭くて少しソワソワと居心地が悪い。

そして、出る頃には結局、あれこれ悩んでたことを吹き飛ばされてる。

 ◇

「ちょっと、見てないで手伝いなさいよ」

と、寝室で荷物を広げるシュエンが言った。女子の荷物はどうしてこんなに細々と多いんだろう? 

第2城壁の南側に立つようになった小さな市場を2人で歩いた。

「ええぇ? 私に?」

「うん。似合うと思うんだけど」

リヴァントの遺民いみんたちが並べてた金属製のアクセサリーをプレゼントした。

「……ありがと。大事にする」

と、シュエンが胸にキュッと押し当てた。

市場と言っても、まだまだ幼稚園や保育園のお店屋さんごっこのレベルだ。でも、労働がおカネという分かりやすい価値に置き換えられないのが続くと、気持ちが持たなくなるのを、俺もリーファも感覚的に分かっている。

材料も宮城きゅうじょうの備蓄から提供し、売れたときだけ材料費を納入してもらう。

「おっ! シュエンさん、今日はマレビト様とお出掛けですか?」

と、すれ違う人たちから声を掛けられている。俺の見えないところで、シュエンが街の人たちを支え、信頼関係を築いてくれていたことが分かる。

「大浴場のんながいたから、私はギリギリ正気を保ってられたと思うのよね」

「うん」

んな、私が居ることを当然のように受け入れてくれてさ。あんなふうにしたいんだよね」

と、言うシュエンは住民全員に対する食事の配給が終了した今、司徒府しとふでいわば福祉を担ってくれている。その仕事のひとつとして、家族を亡くした高齢者や孤児たちの共同生活を支えてくれている。

「あっ! これ、マレビト様に似合うと思うな」

と、クゥアイのお祖母ばあさんが広げてたお店で、上着をプレゼントしてくれた。

それから、獲れたての新鮮な川魚を買って部屋に戻った。少し離れた川で、剣士団に護衛されながら漁を行うようになっている。

シュエンが調理してくれて一緒に食べた。

「美味しい!」

「へへっ。良かった」

元々、漁師のいなかったジーウォで、元はチンピラだった兵士たちが漁に挑戦してくれている。身体からだを動かす仕事が性に合っているようで、活き活きと働いている。

「料理は、病気で亡くなったお母さんに教えてもらったんだ」

「へぇ」

治癒ちゆ呪符じゅふも効かなくて、もう先が短いってなった時に『お父さんに食べさせてあげてね』って、教えてくれたの」

「料理の上手なお母さんだったんだね」

「そうなの! お父さんには食べてもらえなくなったけど、んなに食べてもらえて、お母さんも喜んでくれてるんじゃないかな? へへっ」

回廊かいろう戦を支えた饅頭も出してくれて、2人でほほ張った。

「やっぱり、美味しいな」

「でしょう? お母さんのレシピなんだよ」

――ぱにゅ。

「へへっ。2人だと広いね」

と、大浴場で背中をくれて、湯船にかる。

「マレビト様って、ホント頑固がんこよね」

「ははっ。それ、ユーフォンさんにも言われたな」

「何にも断らないクセに、子づくりだけは頑として断るんだもん。なよっとして見えるのに、芯が強いっていうか……」

シュエンは俺の肩に頭を乗せた。

「こっちだって恥ずかしいんだから、照れてないで、ちゃんと聞いてよねっ」

「あ、うん……」

「私、なんでもするから……」

と、上目遣うわめづかいに見上げる、切なそうな表情に、息が詰まった。

「もう……、断らずにもらってほしいな。私の純潔はじめて……」

そのまま寝室に戻って、霊縁れいえんは結ばれた――。

「えへへ。ありがと……。嬉しい……」

と、涙をこぼしたシュエンを朝まで抱きめて過ごした。温かくて柔らかで、あまり強く抱きめたら折れてしまいそうで、そっと触れる肌はつややかだった。

「絶対、私の部屋にも来てよねっ!」

翌朝、いつもの調子でそう言ったシュエンは満足そうに自分の部屋に帰って行った。

 ◇

次に俺の寝室に荷物を広げたのはディエだった。

「大浴場の一番遠くからマレビト様を見ていたのです」

大夫たちの談判だんぱんを受けた司徒府しとふの部屋で、赤紫色のキレイな髪を揺らし、はにかむように笑った。

「遠くで湯にかる私たちをマレビト様は、そっとしておいて下さいました」

「まあ、色んながいたよね」

「親や親戚から押し出されるようにあの場にいた者たちからすれば、そんなマレビト様のことが、とても安心できたのです」

「そっか。なら、良かった」

「でも、お近くにつどう者たちだけでなく遠くの者たちも、しっかり見てくださっていました。だからシュエンがすくわれ、ユエがすくわれました。そして……、私も、その一人です」

大浴場に向かうバルコニーのようになった回廊かいろうを歩くディエは、感慨深げな表情を見せた。

「マレビト様はいつも柔軟で、たくましいお方です」

「そ、そうですか……?」

シュエンに、なよっとしてて頑固がんこって言われたばかりだった。

「道を踏み外そうとしていた父たちに、毅然きぜん相対あいたいしてくださいました。ここぞというとき、厳しい一面を見せてくださったマレビト様に父はすくわれ……、私もすくわれました」

――ぷるり。

「あまり、機会に恵まれませんでしたので……」

と、ほほを赤くしたディエが背中をくれた。

「ずっと……、遠くから……、おしたい申し上げておりました……」

そのまま距離はグッと縮まって寝室で、結ばれた。そして、視界で渦巻く紋様もんようがひとつ増えた――。

ずっと遠くから見てたプリッと引き締まったお尻を、めっちゃでさせてもらった。

「こんなのでした」

って、気恥ずかしそうに笑う、ディエの笑顔は近くてまぶしかった。

本当に色んな人たちが、それぞれの立ち位置から俺を支えてくれてたんだなって、改めて胸が熱くなって、で続けた――。
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