上 下
226 / 297

223.水辺に輝く神話

しおりを挟む
荒野こうやを6けて行く。

俺の両脇にはメイファンとミンユー。前にアスマとイーリンさん。そして、後ろをラハマが固めてくれている。

出発前にマリームが愛馬を引いて訪ねてくれた。

「私のマール号に乗ってやってくれない?」

「え? いいの? マリームの大切なお友だちでしょ?」

マリームは愛おしそうに愛馬の首をでた。

「だから、たっぷり走らせてやりたいの。それにリヴァントの馬は強いし速いのよ? アスマ様たちも一緒ならマール号で行く方が断然だんぜんいいわよ!」

そして、メイファンたちにも、ナフィーサが連れて来た馬を貸してくれ、老師を探索たんさくに出たときより迅速じんそくで快適に移動出来ている。

南に向かう旅は、暖かい方に向かう旅でもあって春の草花も目にするようになった。

「ここもダメだな……」

途中で見かけた集落しゅうらくを見て回るけど、人の気配はない。

老師が探知たんち呪術じゅじゅつを使ってくれたときも、生存者は見付けられなかった。

「歳で呪力じゅりょくおとろえた身。探知たんちは完璧ではないかもしれません。気を落とされますな」

という、老師の言葉を気安きやすめだろうとは思いつつ、街や村が目に入れば確認せずにはいられない。

はぐれ人獣じんじゅう遭遇そうぐうしたら、必ず討伐とうばつした。生存者をわれてはたまらない。

城で苦戦したのは、くまでも人獣じんじゅうの『数』だ。

多くて数体というはぐれ人獣じんじゅうなら、RPGで言えば最強パーティのようなメンバーがなんなくち取る。練習した俺の弓の出番はない。ちょっと残念。

途中、森の中に綺麗きれいな泉を見付けた。

すると、メイファンが服を全部脱いで飛び込んだ。

「誰かに見られたら……」

と、自分の言葉に少しむなしくなった。

「見てくれる人がいたら、生きてて嬉しい! ってなるし、いないなら遠慮するのもったいないし! 気持ちいいよ?」

と、笑うメイファンに、アスマもられて笑った。

「確かにそうだな! 毎晩一緒に湯船にかる者しかいないのだしな!」

と、アスマも服を脱いで飛び込むと、んなも次々に飛び込んだ。

春の日差ひざしが降りそそぐ中、俺も服を脱ぎ飛び込んで泳ぐと、冷たくてんだ水が気持ちいい。それに開放感がたまらない。人獣じんじゅうに押し込められ、雪に閉じ込められ逼塞ひっそくした日々が長かった。

「あー! やったなあ!」

と、歴戦れきせん猛者もさたちが、裸で水のけ合いにきょうじてキャッキャしている。

ぶるんぶるんれる豊かな膨らみから飛沫しぶきが飛んで来て、そんなこともあったなと思いをせる。あれは剣士以外を戦闘に参加させるかどうかで大浴場ハーレム風呂激論げきろんになったときのことだ。

「なんかうそみたいだね……」

と、身体からだを水面にかべたメイファンが言った。

「こんな日が来るなんて思わなかった」

岸辺きしべに腰を降ろしたイーリンさんが微笑ほほえんだ。

「先の見えない日々でしたからね」

春にかがやく森の水辺で、俺を囲んできらめく肢体したいを伸ばす5人の女子たち。

神話のいち場面ばめんのような美しい光景に、しばし時を忘れた。

んなぱだかで並んで横になり、日光浴を楽しんでクスクスと思い出話に花をかせた。

そして、より暖かいほうへ、南に王都を目指した――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

処理中です...