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194.抱き締め大浴場(3)

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湯船にかって冷静になると、んなに情けないところを見られたような気がして、少し赤面せきめんした。

アスマはメイファンとシュエンがさかんに話しけて、笑顔を見せている。

ちゃぷっと、湯を顔にかけると、ラハマとユーフォンさんが泳ぐようにそばに来た。

「アスマ様も、初恋なのだ」

と、ラハマが言った。

権謀けんぼううず王宮おうきゅうで育たれた。誰かに純粋じゅんすいかれるというのは、初めての経験なんじゃないかと思う」

「う、うん……」

対象たいしょうが自分でなければ、もう少し冷静に思いれるんだけど。

「ご自身でも自分の気持ちに戸惑とまどわれているんだと思う」

「そうなのかもな……」

「元々のことを急がれる性格と相俟あいまって、あるじを傷付けることになってしまったなら、われからも謝罪しゃざいしたい」

「いやいや。そんな大袈裟おおげさな話じゃないよ」

ユーフォンさんが、めずらしく眉間みけんしわを寄せ、うんうんと首を振っている。

「王宮でマトモな恋愛なんて出来ないしねぇ」

「ダーシャンの王宮でもそうであったか?」

と、ラハマがたずねた。

「やっぱり『何か裏があるんじゃ?』とか、『私のことおとしいれようとしてない?』とか、そんなことばっかり考えてるウチに、タイミングのがしちゃうのよねー」

ユーフォンさん、前に「恋はタイミングです!」って力説りきせつしてたなぁ。お色気大作戦を始めた頃。

「ダーシャンには、マレビト様にめぐりえたら純潔じゅんけつささげるシキタリもあるし、尚更なおさらよお」

「女同士の足の引っ張り合いも、スゴそうだな」

「そうなのよ。分かってくれる?」

われは聖堂騎士ゆえ、聖職者どもの下劣げれつな視線さえ気にしなければ、色恋いろこいとはえんどおかったが、アスマ様のお立場は利権りけんの固まりだからな。純粋な愛情を向ける者など、親兄弟でもおられない。それは息苦しかったことだろう」

「やだ、下劣な視線って。……エロ親父の視線って、ほんと不愉快ふゆかいよね。なんかからむのよね。視線が身体からだからみつくって言うか」

「いや、としの近い男のニタニタした視線も、いつも品定しなさだめされているようで、充分不快ふかいだ」

「あ。それ分かる。その点、マレビト様が『チラッ』って見るの、微笑ほほえましいよね」

え? この話の流れで、俺に来ます?

「うむ。比較ひかく対象たいしょうが悪すぎるが、むしろ爽快そうかいでさえある。王宮や聖堂では感じたことのない初々ういういしさに……」

ラハマが少しほほの上を赤くして、言葉をまらせた。

「いいのよ! ラハマちゃんだって言っちゃって!」

「……む、胸がときめいた、な」

「いやーん。ラハマちゃんだって初々ういういしいじゃない。……恋、しちゃったんだあ?」

と、ユーフォンさんが悪戯いたずらっ子のようなみで、ラハマの顔をのぞんだ。

「……こ、恋と呼べるようなものかは、分からん」

ラハマが顔をにして、俺の方をチラッと見た。

……チラ見。爽快ですかね? めちゃくちゃに可愛いですけどね。

「わ、われのことはともかく、アスマ様のことは迷惑めいわくをかけた。どうか事情をおふくみいただき、長い目で見ていただきたい」

「迷惑だなんて、そんな……」

「おびと言ってはなんだが」

と、ラハマは俺の右手を取った。

そして、その手を自分の左のふくらみに押し当てた。

えっ? なにしてんスか、あなた?

「今のわれは何も持たぬ。せめて、んでくれ」

「いや……、えっ? ……はっ?」

「男と言うのは、いつでも女の乳を揉みたいものなのだろう?」

いや、かたよった性知識。エロ聖職者基準になってません?

ていうか……、お、おっぱい、手の平で真正面からさわったの、何気なにげに生まれて初めて……。や、柔らか……。ラハマも大っきいし……。

ラハマのそばの女子から順に気が付いて、広がるどよめきが湯船をらした。

ア、アスマが呆気あっけに取られた顔で見てますよ? ラハマさん?

その時、ユーフォンさんが湯船からザバッと立ち上がって仁王立ちになった。下から見上げると、かなり立派ですよね。ユーフォンさんも。

推奨すいしょう!!!」

な、なにを声ってるんですか。

「これが【お色気大作戦】の精神です」

アスマが、後ろにいたマリームに「お色気大作戦とはなんだ?」と、たずねている。マリームは1回参加してましたよね。あきれたようにスンってなってましたけど。

「でも、ラハマちゃん。これはマレビト様、本気で戸惑とまどってるから」

「ややっ。そうなのか?」

お色気大作戦初日に抜き打ちで実行して、あれだけ戸惑とまどわせた張本人ちょうほんにんが……。

あと、ラハマもユーフォンさんじゃなくて、俺に聞いて?

「よおし。お互い純潔じゅんけつの身の上だけど、お姉さん、ラハマちゃんとアスマちゃんに、恋の指南しなんしちゃおっかなぁ」

よせ……、と言う前に、ラハマもアスマも深々ふかぶかと頭を下げた。

「よろしくお願いする」

「よろしい。後で私の部屋に来るように」

……不安しかない。

あと、ラハマ。そろそろ、おっぱいから手を解放かいほうしてくれないかな? 動かすに動かせず、指がそうなんだけど……。
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