上 下
176 / 297

174.黒い輝き宴のあと(1)

しおりを挟む
ヨウシャさんのでふわふわしてたけど、えんもたけなわというところで舞台に上がった。

ミンリンさんとシーシをまねき入れ、いよいよ『回廊決戦かいろうけっせん』の構想こうそうを発表する。

交渉こうしょうごとの苦手なミンリンさんだけど、シーシと何度もリハーサルしたらしい。2人が掛け合う漫才のようなプレゼンに、広場にはどよめきと歓声かんせい交互こうごおとずれた。

そして、プレゼンの熱狂覚めやらぬ中、俺が口を開いた。

「まだまだ準備しないといけないことが、たくさんあります。成功させるには多くの方の協力と参加が必須ひっすです」

広場をめる住民のみなさんの目には、希望の火が灯って見えた。

「もとより全員の力を合わせずして、立ち向かえる相手でもありません。どうかこの、決戦を成功させるために、力を貸してください」

俺が頭を下げると、住民の皆さんは歓声で応えてくれた。

それからしばらくうたげは続き、みんなが熱く語り合ってるさまながめた。

ふと、ツイファさんの紫色の髪が目に入った。

――そうだ。ツイファさん。

そっと手招てまねきして呼んで、コソコソと話しける。

「し、城で近々16歳をむかえる純潔じゅんけつ乙女おとめがどのくらいいるか、こっそり調べてもらえませんか?」

「はあ……」

「け、結構、ドキッとするんスよ。突然、新しい人が大浴場に来たら。心の準備をしときたいって言うか……」

ツイファさんは、クスッと笑った。

「ツ、ツイファさんくらいしか、たのめる人、いないんですよ」

「かしこまりました。内密ないみつにお調べいたしますね」

「頼んますっ」

と、俺は手を合わせた。

ツイファさんは、いつものまし顔でお辞儀じぎをして、そっと目立たないように離れていった。

たぶん【闇の者】の使い方として、おかしい。

でも、ドキドキするしなぁ……。

せめて、事前に……。

なんて思ってたころ、空が茜色あかねいろに染まり始めた。今日は外征がいせい隊の出陣はなしにしてある。

とはいえ、そろそろ戦闘開始おひらきの時間だ。

舞台上でエジャが最後の挨拶あいさつを始めた。花婿の家の一員となり、かまどあずかることになる花嫁が、一家のよめとして最後をめくくり、参列した客を送り出す。

エジャの挨拶はなみだじりだったけど、堂々としたものだった。

――ヤーモン、しりかれそうだな。

なんて、んなが想像をたくましくしていたその時、エジャの緋色ひいろの花嫁衣装がてられてちゅうった。

茜色の空に舞う緋色。

俺も含めたみなが、呆気あっけに取られてエジャを見ると、既に剣士のよろい姿だった。

うたげの続きは……」

と、エジャは剣を抜いて夕陽ゆうひを指した。

「城壁で!!!」

たちまち、みな雄叫おたけびで広場がちる。

城壁の外の人獣じんじゅうが、ビビって凶暴化してしまうんじゃないかという勢いの大音声だいおんじょうだった。

「片付けはやりまーす! そのままに向かってくださーい!」

と、シュエンが声をっている。

結婚式の演出に使われていた荷運にはこやぐらが、城壁に向けて移動し始める。

ふたつの舞台は、シーシたち職人しょくにんチームが撤去てっきょを始めている。

すべてが機能的きのうてき有機的ゆうきてきに動いていく。

「エジャに、いいところを持って行かれましたな」

と、フェイロンさんが俺のそばに来て笑った。

「結婚式は花嫁さんのもの、って聞きますから」

「ははっ! 違いありませんな」

日没前、結婚式も宴もなかったかのように、すべては取りはらわれ、清掃せいそうされ、みな戦闘せんとう配置はいちについている。

そこに、黒の装甲そうこうに身をかためたアスマとラハマが長い槍を持って現れた。

――カッケー、なぁ! もう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...