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166.はにかみ会同(2)

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重臣じゅうしん会同かいどうに、そのままアスマ達も残ってもらった。

とびらが開き、ほおあかく染めたエジャが入って来る。

その後ろには、フーチャオさんの奥さんのミオンさんもいる。

「ん? なんで、俺のよめが?」

と、いぶかしがるフーチャオさんに、ミオンさんが悪戯いたずらっ子のように舌を出して笑った。

ヤーモンがエジャの隣に立った。

「急な話ですが、俺、このと結婚しようと思います」

数瞬すうしゅん、その場にいる皆が、豆鉄砲をらった鳩のようになったけど、すぐに大きな祝福の拍手はくしゅが起きた。

エジャが、はにかんだ笑顔をヤーモンに向けると、ヤーモンも微笑ほほえみ返す。

「明日! 明日、二人の結婚式をしたいと思います! 住民全員をまねいて盛大にお祝いさせてもらいたいです!」

と、俺が宣言すると、皆から大ウケにウケて、すぐに準備する段取りの話し合いを始めた。

「スイランさん。牛をつぶしましょう! みんなに行き渡るように出来るだけ多く。でも、この後の食糧しょくりょうこまらないよう、残りの食糧をもう一度、精査せいさしてもらえませんか?」

「かしこまりました」

と、いつもの実務的じつむてきな口調でこたえたスイランさんも、どこか心がはずんで見える。

「シュエン、料理は出来るだけ華やかな見栄みばえに」

まかせときなさいよっ! あるものだけで、ビックリするようなの作るからっ!」

自信満々のみで、シュエンが親指を立てて見せる。

「ミオンさんには、花嫁衣装をつくっています!」

「花婿の衣装も間に合わせますよ!」

と、ミオンさんが自分の腕をたたいて見せた。

エジャとヤーモンが照れ臭そうに笑い合っている。

「戦闘の前になってしまうので、お酒は出せませんが、出来る限り盛り上げたいと思っています!」

と、俺の言葉に、薬師くすしのリンシンさんがウキウキと口を開いた。

「お酒のわりと言ってはなんですが、薬草を用いた少し気分のスカッとするお茶を用意しますわ」

ジュースみたいなものかな? 少しでも盛り上げようとしてくれてるのが嬉しい。

「ミンリンさん、シーシ。新作戦の発表の場にもしたい! たぶん、これ以上に、2人の結婚に華をえられる話はないと思う」

「まあ」

と、ミンリンさんが嬉しそうに声を上げた。

「光栄でございます……」

フェイロンさんが「新作戦……、ですか?」と言うと、シーシが「ニシシ」と笑った。

「明日のお楽しみなのだっ!」

フェイロンさんが、フフッと笑った。

「それでは明日。我らが天才司空しくうからの発表を楽しみに待つといたしましょう」

俺はヤーモンとエジャに、改めて目を向けた。

「おめでとうございます。俺が召喚されてから、こんなに目出度めでたいことはなかった。みんなでお祝いさせてもらえて、本当に嬉しく思います」

「いえ、そんな……」と、エジャがほおあかくしたまま頭を下げた。

「もし、2人が良ければ、その場でアスマたちの参戦さんせんを、みんなしらせたい。北の蛮族こと、リヴァント聖堂王国の武人が兵士団に加わり我々と共に、人獣じんじゅうと闘ってくれると」

「なんと、そのような場で……」

と、アスマが立ち上がった。

「どうだろうか?」

俺が問い掛けると、ヤーモンとエジャは見詰みつめ合い、そして、うなずき合った。

なんだか、ちょっとけちゃうなぁ……。

2人を代表して、ヤーモンが口を開いた。

「俺達の結婚式で、新しい仲間をむかえることが出来る。とても光栄なことだと思います。ぜひ、よろしくお願いいたします」

エジャがアスマに近寄ちかより、その手を取った。

「複雑な思いはおたがい様ですのよ?」

と、アスマの顔をのぞき込むように笑った。

「やるとなったら、徹底的にやりましょう。共に人獣じんじゅうに立ち向かう、その最高の狼煙のろしを上げる機会といたしましょう」

アスマもエジャの手を握り返した。

「かような目出度めでたき場をおりするからには、必ずや役に立ってみせよう」

ただただ心が浮き立つ時間。明日のうたげが待ち遠しくなる時間。そんな時間が過ぎていく。

エジャのはにかんだ笑顔は最高にかがやいてる。

その笑顔を、悲劇のベタなフラグになんかしない。みんなで生き残る。みんなで勝ち抜く。

俺はそうちかいながら、みんなの笑顔をずっとながめていた――。
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