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133.攻める大浴場(3)

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薬師くすしさんがいても、くすりがなくてはどうしようもない。

腕をわれたニイチャンの治療ちりょうで、簡単に外科的げかてき施術せじゅつもやってくれてたようだけど、薬自体がないと出来ることがかぎられるのは明らかだ。

宮城きゅうじょう在庫ざいこは使わせてもらってるの……?」

と、俺の問いに、ホンファは首をった。

あとでも良かったんだけど、左右の腕とこぶし気恥きはずかしいし、背中は黙々もくもくとシアユンさんがるし、俺はスイランさんを呼んだ。

両膝りょうひざいて、背筋せすじばす。ち、近いですね。眼鏡めがね外してますもんね。

「もちろん、マレビト様のご指示があれば大丈夫です」

という、スイランさんの言葉に、ホンファの表情は明るくなった。

「ただ、以前もお伝えしましたが、薬のたくわえはそれほどありません」

ホンファをうながして、在庫の内容をスイランさんに質問してもらう。

本来なら直接口をきくような身分みぶんではないのだろう。ホンファは遠慮えんりょがちにたずねていく。

そして、いくつか質問したホンファの表情は、司徒府しとふたくわえられてる薬の量と内容が『ないよりマシ』な程度ていどだと、物語ものがたっていた。

傷薬きずぐすり薬草やくそう栽培さいばいが始まっておりますが……」

という、スイランさんにもホンファは愛想あいそ笑いを向けている。

それに気付かないスイランさんでもないので、少し困った表情になった。

行商人ぎょうしょうにんでもおれば、いくらでも買い上げるのですが……」

すると、ピコンッ! って顔をしたメイファンが、ユエを呼んだ。

――ちょ、待っ……。

たゆーんっ! たゆっ、たゆ……。

ユーフォンさんが仕立したてたノースリーブにおさまりらず、がはみ出してしまうユエが目の前でれてる。

また、近いなっ!

「ユエ? お父さん、行商人だったよね?」

と、メイファンが俺の左腕をまま、ユエにたずねた。

「私も行商人だよ」

「そっか。じゃあ、お薬って持ってる?」

「あるよ! たっぷりあるよ! ……でも」

「なに?」

「高いよ……?」

「心配いりません」

と、スイランさんが、かけてない眼鏡をクイッと上げた。

司徒府しとふで、すべて買い上げましょう。ウンラン様の許可きょかは必要ですが、問題ないでしょう」

スイランさんは、まだウンランさんが流行はややまい療養中りょうようちゅうだと思ってる。少し胸がいたんだ。

ホンファにユエが持ってる在庫を質問してもらうと、表情がみるみる明るくなった。

「そ、それだけそろえていただけるなら……、薬師くすしとしてはたら甲斐がいがありますっ」

と、俺の右拳みぎこぶしを、くむくむ洗いながら、ホンファが、自負じふちた表情を浮かべた。

……い、一回、中断ちゅうだんしてもいいんですよ?

「最終城壁の中まで、たくさん持って来てくれてたんだね」

と、メイファンが言うと、ユエがうれしそうに笑った。

荷物にもつは全部、私が持つことになってたから!」

父親にしいたげられてたんだろうなと、少しチクッとしたものを感じたけど、高価こうかな薬が手に入るのはありがたい。

――ふぁ。

背中のシアユンさんが、そっとはなれた。

そうですね。「終わりました」も言えないくらい、全身ですもんね。

メイファンも、握った拳の隙間すきまから手の平を攻めようとしてないで、終わりにしてもらっていいんですよ?

先輩メイファンが終わらないと、後輩ホンファも終われないじゃないですか……。

あと、自分で洗えますし――。
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