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122.呪力の発現(2)
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召喚された最初、シアユンさんに、それからイーリンさんに子種がほしいと迫られた。
けど、俺が拒否ったら、すんなり引き下がって無理押ししてくるようなことはなかった。
初代マレビトの例もあるから、とりあえず行ってみるというスタンスになるのも分かる。城は危機的状況だし。
あれ?
「えっ……? みんな? ……皆さん知ってますよね? フーチャオさんも、フェイロンさんも?」
「はい」
……ガ、ガビーン。再び。
俺がいつまでも里佳のことを想ってて、だからいつまでもマレビトの呪力が発現しなくて、それで死闘が続いてて……。
それでも、文句ひとつ言わずに「幼馴染にフラれたのツラいよなぁ!」って感じで接してくれてたのか。
いや、城の人、皆そうなのか。
城壁に向かう剣士たちも……、兵士たちも……。
ヒソヒソと聴こえてきた囁き声は、「幼馴染にフラれたばっかりじゃ、しょうがねぇよなぁ。俺らが踏ん張らないと」って、自分を奮い立たせてたのかもしれない……。
片腕を喰われてしまった、あのニイチャンの「何人とヤッたんだ?」も、あるいは呪力の発現を期待してのことだったのかも……。
「マレビト様」
と、シアユンさんの声に、ハッとなった。一人で考え込んでしまってた。
「ご自分を責めてはなりません」
「あ……、はい……」
「これが、この世界に生きる者全てが逃れられない、理なのです」
そうかもしれないけど……。
「当たり前のことを申し上げますが、我らも望まれて純潔を捧げたく思います」
「そ、そりゃ、そうですよね」
「ヤラレ損はまっぴら御免でございます」
ビキニ姿で正座してる皆が、クスリと笑った。
その、一人ひとりの表情を見てしまう。
いや……、誰となら子供つくれる? そういうことしたい? そういうことできる? って、見てしまってる。
でも、誰の顔を思い浮かべても「里佳の代わりに」って思ってる。
里佳の代わりに、そういうことできる? って考えてしまってる。
里佳と比べてしまってる。
俺は、望んでない。
里佳でない誰とも……、望んでない。
「マレビト様」
もう一度、シアユンさんの呼び掛けに、ハッと我に返った。
真っ直ぐに俺の目を見詰めてくれてる。
照れてモジモジしてるとき以外のシアユンさんは、いつも冷静で流れるように話し掛けてくれる。今もそうだ。
だけど、たった1回だけ口籠ったことがある。
噛んだり迷ったりじゃなくて、口籠って、言い淀んだことが1回だけある。
初めて望楼から剣士たちの闘いを観ていた夜のことだ。
「初代マレビト様は祖霊と、え、縁を結び」って、『縁を結ぶ』って言葉を口籠った。
後々、そんなことは一度もなかったから、気になってた。
突然、召喚された俺の境遇を慮ってくれてたんだろうなって思ってたけど、それだけじゃなかった。
――無理すんなよ。
って、シアユンさんはずっと俺のことを気遣ってくれてた。
大事な幼馴染のこと、無理して忘れることないよって、思い遣ってくれてた。
「マレビト様……」
と、シアユンさんは、もう一度、俺に呼び掛けてくれた。
賊に襲撃されたあの晩、怯える俺の頭を、そっと胸に抱いてくれたときと同じ、優しい響きの声だった。
「私たちは皆、シーシ殿の言葉に納得しているのです」
けど、俺が拒否ったら、すんなり引き下がって無理押ししてくるようなことはなかった。
初代マレビトの例もあるから、とりあえず行ってみるというスタンスになるのも分かる。城は危機的状況だし。
あれ?
「えっ……? みんな? ……皆さん知ってますよね? フーチャオさんも、フェイロンさんも?」
「はい」
……ガ、ガビーン。再び。
俺がいつまでも里佳のことを想ってて、だからいつまでもマレビトの呪力が発現しなくて、それで死闘が続いてて……。
それでも、文句ひとつ言わずに「幼馴染にフラれたのツラいよなぁ!」って感じで接してくれてたのか。
いや、城の人、皆そうなのか。
城壁に向かう剣士たちも……、兵士たちも……。
ヒソヒソと聴こえてきた囁き声は、「幼馴染にフラれたばっかりじゃ、しょうがねぇよなぁ。俺らが踏ん張らないと」って、自分を奮い立たせてたのかもしれない……。
片腕を喰われてしまった、あのニイチャンの「何人とヤッたんだ?」も、あるいは呪力の発現を期待してのことだったのかも……。
「マレビト様」
と、シアユンさんの声に、ハッとなった。一人で考え込んでしまってた。
「ご自分を責めてはなりません」
「あ……、はい……」
「これが、この世界に生きる者全てが逃れられない、理なのです」
そうかもしれないけど……。
「当たり前のことを申し上げますが、我らも望まれて純潔を捧げたく思います」
「そ、そりゃ、そうですよね」
「ヤラレ損はまっぴら御免でございます」
ビキニ姿で正座してる皆が、クスリと笑った。
その、一人ひとりの表情を見てしまう。
いや……、誰となら子供つくれる? そういうことしたい? そういうことできる? って、見てしまってる。
でも、誰の顔を思い浮かべても「里佳の代わりに」って思ってる。
里佳の代わりに、そういうことできる? って考えてしまってる。
里佳と比べてしまってる。
俺は、望んでない。
里佳でない誰とも……、望んでない。
「マレビト様」
もう一度、シアユンさんの呼び掛けに、ハッと我に返った。
真っ直ぐに俺の目を見詰めてくれてる。
照れてモジモジしてるとき以外のシアユンさんは、いつも冷静で流れるように話し掛けてくれる。今もそうだ。
だけど、たった1回だけ口籠ったことがある。
噛んだり迷ったりじゃなくて、口籠って、言い淀んだことが1回だけある。
初めて望楼から剣士たちの闘いを観ていた夜のことだ。
「初代マレビト様は祖霊と、え、縁を結び」って、『縁を結ぶ』って言葉を口籠った。
後々、そんなことは一度もなかったから、気になってた。
突然、召喚された俺の境遇を慮ってくれてたんだろうなって思ってたけど、それだけじゃなかった。
――無理すんなよ。
って、シアユンさんはずっと俺のことを気遣ってくれてた。
大事な幼馴染のこと、無理して忘れることないよって、思い遣ってくれてた。
「マレビト様……」
と、シアユンさんは、もう一度、俺に呼び掛けてくれた。
賊に襲撃されたあの晩、怯える俺の頭を、そっと胸に抱いてくれたときと同じ、優しい響きの声だった。
「私たちは皆、シーシ殿の言葉に納得しているのです」
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