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80.活き活き大浴場(1)

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けて、大浴場で話題の中心はメイファンだった。

最終城壁内の北側で一晩中ひとばんじゅうひびいたメイファンの「はなてー!」というけ声は、仮設住宅かせつじゅうたくおそろしい夜にえる避難民のみなさんを勇気付けた。

北側城壁で剣士の指揮しきるイーリンさんも、自分たちの頭上ずじょうを飛ぶ7本の矢に、どれだけはげまされたかと、みなあつかたっている。

――ぷにゃ(右上)。

口々におどろきと称賛しょうさん感謝かんしゃとの言葉がかたられ、その中心でメイファンはそうに小さくなっている。

――ぷぷにゅ(左下)。

少し離れてメイファンを見ているミンユーは、姉がみなめられていることがうれしくてたまらないという様子だ。

――ぷにゅん(右下)。

俺の背中をいるメイユイも、メイファンの話が気になって仕方ないといった様子で……。

――ぷにゃり(上)。

……にしても、ちょっとざつじゃないですかね? ……お、おっぱいって、そんな雑に押し当てていいものなんですか?

――ぷにゅうん(右上)。

いや、ミンリンさんみたいに丁寧ていねいに丁寧に洗われても気恥きはずかしいですし、シーシさんみたいにド密着みっちゃくされたら、もっと気恥きはずかしいですし、自分でもベストな形がなんなのか、まったく分からないんですけど……。

――ぷにぷにぷにぷにん(右上で小刻みに動く)。

メイユイさん。なんか、メイファンの話にはげしくうなずいてますね。

――ぷにゅっ(左上)。

ところで、今日は腕の担当たんとうはいないんですね。

――ぷにゅう(左下)。

そうですね。メイユイさんなら洗えますもんね。みなさんの判断はんだんがシビアで生々なまなましいですね。

――ぷにゅうん(左上で円をえがく)。

メイファンの話が気になってに押し当てられる、という、どうツッコんだらいいか分からない状況じょうきょうだけど、そのメイユイを含めて、大浴場のみんなの反応に胸をなで下ろしているのも本当だ。

あの、ぶるんぶるんと、飛沫シブキった全裸の大激論が、つい先日のことであることを思うと、格段かくだんに変化が見られる。

この大浴場ハーレム風呂みんなは、おそらくジーウォ城の中でも、特にマレビトに好意的な人間の集まりだと思う。それでも、最初は大激論になった。

人獣じんじゅうほふるのは人間】という、『4代マレビトの新シキタリ』は、すぐに三卿さんきょう一亭いってい連名れんめい布告ふこくされてる。

とはいえ、それが住民の皆さん全員に浸透しんとうするか、理解してもらえるかは別問題べつもんだいだ。

――だけど俺は、みんなで生き残りたい。

その時、みんなの中で楽しげにお喋りしてたシーシが、雑に背中を洗われてる俺の前に来て、こしろした。

……胡坐あぐらはやめなさい。全裸で。近いし。

と、そんな俺の気持ちはおかまいなしに、シーシさんは真剣しんけんな表情で口を開く。

篝火かがりびの屋根は改良かいりょう余地よちありだね。雨が思ったよりんでた」

昨晩ゆうべ夜明よあけ1時間くらい前に、ポツリ、ポツリと雨がり出した。城壁に並ぶ篝火かがりびの炎は、シーシの取り付けてくれた屋根のおかげ火勢かせいに変化は見られなかった。

ただ、30分ほどすると雨足あまあしが強くなり、やがて豪雨ごううになった。それでも篝火かがりびの炎の明るさ、火勢かせい充分じゅうぶんたもたれていた。

ずぶれになりながら矢をはなち続けてくれてるメイファンたちの弓勢ゆんぜいも豪雨に負けず、確実に人獣じんじゅうたちを仕留しとめていく。

剣士たちの剣技けんぎえにも影響えいきょうは見られない。

夜明けまでの短い時間ではあったけど、ついに、豪雨の中で城壁を守り切った。

その間に、宮城きゅうじょうの西にり出してる司空府しくうふから飛び出して行ったシーシが、城壁の下にる姿を見ていた。

屋根付き篝火かがりびの様子を、ずぶれになりながら確認していた。

「屋根の傾斜けいしゃを工夫すれば、もう少し炎にあたる雨をふせげると思うのだ」

と、メイユイに雑に背中をてる俺の前で、全裸で胡坐あぐらをかいたシーシが真面目まじめな顔で考え込んでる。

うーん。赤面しますよ。赤面しちゃいますよ? 昨日、シーシさんが言ってくれたように堂々と赤面しちゃいますよ?

「と、言うと?」

と、こたえるのが精一杯せいいっぱい

「こう、少しだけ横方向に丸みを付けてばせば、もう少し雨をがせると思うのだ」

「そ、そうか……。そうだなっ」

と、そこにはずむようにけて来たクゥアイが、俺の前で両膝りょうひざいて胸をクンッとらした。……近い。

……な、なんのご用でしょうか?
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