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79.長弓の射手

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望楼ぼうろうから見下みおろす宮城きゅうじょうの北側の屋根には、玉篝火サーチライトが7台、並んで立ってる。

日没直前の空は、群青色ぐんじょういろ茜色あかねいろを西に追いやろうとしている。

玉篝火サーチライトとなりには、長弓ながゆみ射手しゃしゅたちが立っている。志願者しがんしゃは1人増えて7人。シーシは人数分の玉篝火サーチライト製造せいぞうを間に合わせてきた。

一列に並ぶ射手たちの真ん中にはメイファンが左手に長弓を持って立っている。その足下あしもとには、大きなかごが置かれ、大量の矢が入れられている。

北側城壁では、すでに剣士たちが展開てんかいしており、日没直前になって玉篝火サーチライト点火てんかされた。

まきに火が回り、光量こうりょうが最大になると同時に完全に日没し、人獣じんじゅうたちがうなり声を上げて城壁上にび上がって来た。

望楼ぼうろうよりは低い宮城きゅうじょうの屋根からでは俯角ふかく(下向きの角度)が充分じゅうぶんに取れず、玉篝火サーチライトの足を少し高くしたけど、円形の光は第2城壁そのものをらし出している。

城壁の上の剣士たちに後ろから光があたると、自分が影になって視界のさまたげになるので、これ以上は下げられない。玉篝火サーチライトからの光は、剣士たちの頭の上を飛びえてらしている。

その光の中を第2城壁を乗りえた人獣たちが、次々にりてくるのが見えた。

視界しかいを確認したメイファンが、ほかの射手しゃしゅたちにも確認し、望楼ぼうろうに立つ俺の方を見上げて手を挙げてうなずいた。

俺も手を挙げ合図あいずを返すと、メイファンは他の射手たちにも合図を送り、長弓をかまえた。

かまえーっ!」

という、メイファンの声がひびいてくる。そして。

はなてーっ!」

というごえで、一斉いっせいに7本の矢がはなたれた。

5本が眉間みけん命中めいちゅう! 1本はほほに、1本は肩にさった。うん。なかなかの命中率めいちゅうりつ。まったくはずした矢がなかっただけでも手ごたえを感じる。

再び「構えーっ!」「放てーっ!」という、メイファンの声が響いて次々に矢が放たれる。

昼間のうちに、色々ためしてもらって、色々話し合った結果、無理な連射れんしゃスピードは求めないことに決めた。なにせ一晩中ひとばんじゅう続く。

体力や気力との兼ね合いも考慮こうりょして、おおよそ30秒に1発を15分続けて5分休憩。というサイクルで矢をはなってもらうことにした。

それで、夜が10時間として、一人の射手が一晩に放つ矢が約1,200本。7人で8,400本。

シーシに最初は5,000本でいいって言ってしまってたけど、すでに2万本を用意してくれていた。ありがたい。

一晩に10万体はっている剣士に比べての8,400体だけど、少しでも剣士の負担ふたんらせるか? け石に水か? 人獣じんじゅう大波おおなみに変化はないか?

次々に放たれる矢の効果こうかを、俺は目をらして見ていた。

城壁をび上がってくる人獣たちに、最初は何の変化も見られなかった。

けど、30分が過ぎた頃から、ほんの少しだけ、城壁から人獣じんじゅうび上がるペースが落ちた。

剣士たちの動きが「斬って、斬って、斬って」だったのが、「斬って、フッ。斬って、フッ。斬って、フッ」くらいのテンポになっていた。

ふと見ると、玉篝火サーチライトの光が照らす城壁の足下あしもとで、ぼんやりと照らし出される、弓で射抜いぬいて倒した人獣じんじゅうに群がる人獣じんじゅうたちが見えた。

凄惨せいさんにも見える共食ともぐいの光景こうけいだったけど、それで人獣じんじゅうたちの足が止まってる。

1時間が経過けいかする頃には、剣士たちの動きが「斬って、フーッ。斬って、フーッ。斬って、フーッ」くらいになった。

――よし。効果こうかあり! いける!

望楼ぼうろうから見えるメイファンの小さな背中が、大きく、きとして見えた。
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