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61.剣士府の演説(4)

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俺とシアユンさんが、剣士府けんしふのフェイロンさんの執務室しつむしつに案内されると、剣士長のフェイロンさんはもちろん、司徒しとのウンランさん、司空しくうのミンリンさん、村長むらおさのフーチャオさん、みなすでそろってた。

フーチャオさんがにぎやかに何か話していたけど、俺の顔をみとめると、みなが立って出迎でむかえてくれた。

まもなく講堂こうどうに剣士さんたち全員がそろうので、しばらくここで待つように言われて、席をすすめられた。

俺が座ると、フーチャオさんが待ち切れないといった風情ふぜいで、続きを話し始めた。

いわく、剣士たちをザワつかせてるのは、俺の娘の弓だ! どうだ、スゴイだろう俺の娘は! と、メイファンの弓の腕前うでまえさかんに自慢じまんしている。

狩人かりうどの全員が全員、メイファンほどの腕前なわけじゃないんですぜ! ウチの娘は特別なんですよ!」

フーチャオさんがニコニコ顔で続ける娘自慢むすめじまんを、フェイロンさんも苦笑にがわらいしながら黙って聞いている。

うまい! と、思った。

狩人かりうどと弓矢の話を、盛大せいだいな娘自慢にすりえて、笑わせてしまってる。剣士たちの前に、剣士長フェイロンさんの肩の力を抜かせたのは大きい。

しかも、狩人かりうどの中でもウチの娘が特別と念押ねんおしすることで、狩人全体への警戒感けいかいかんやわらげてる。

剣士たちからすれば、ともすれば見下みくだしていた狩人や弓矢から、剣にまさるともおとらない威力いりょくを見せつけられた。それは、急に現われた得体えたいの知れない存在のようにうつっていてもおかしくない。それをやわらげてる。

世知せちけるとは、こういうコトだ。

心の中でフーチャオさんに感謝しつつ、俺も苦笑いを浮かべながら話を聞いた。

やがて、講堂に全剣士がそろったとしらせが来て、俺達は席を立った。

フーチャオさんのおかげで、みんな、ヒョイっとピクニックにでも行くように軽くなった腰を上げてた。司空府しくうふで会ったときには顔を青くしてたミンリンさんも、まだ少し笑ってた。

色んな種類の尊敬そんけいできる大人にかこまれて、マレビトを支えてくれてる。

フェイロンさんに続いて俺とシアユンさんが講堂に入っても、約300人の剣士たちは、まだ少しザワついてた。

――幼馴染に。

――スパッと。

それは……、もういいんだけど。と思いつつ、俺達に続いてウンランさん、ミンリンさん、フーチャオさんが順に入って来ると、講堂の中はしずまり返った。

思った通りだ。

俺がいくら『300年りに召喚された、伝説のマレビト様』だからといって、見た目はただの若僧わかぞうだ。高校を卒業したばかりで社会経験もない。

きびしい戦闘を続け、生き残っている百戦錬磨ひゃくせんれんまの剣士たちから見れば、たよりないボウヤに見られても仕方ないし、実際、ボウヤだ。虚勢きょせいっても仕方しかたがない。

そんな俺が姿を見せるより、城の最高幹部さいこうかんぶである『三卿さんきょう一亭いってい』がそろって足を運んだ。そちらの方が、剣士たちにはひびく。

整列して立つ剣士たちの前に、俺を真ん中に『三卿さんきょう一亭いってい』が立ち並び、向き合った。

剣士たちの緊張きんちょうした視線が、俺に集まる。

これから、俺がする話でジーウォ城に立てこももるみな命運めいうんが決まる。守りたい。守るんだ! みんなの、おっぱ……。笑顔を。

こんなときに、何考えてんだ、俺?

と、頭をかかえたくなったとき、フェイロンさんが手をかざすと、皆が一斉いっせいに礼をした。

「マレビト様である。これより、みなにお言葉をたまわる」

フェイロンさんの言葉で、再び、みんなの視線が俺に集まった。
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