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49.初めて迎える夜
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「あっ! マレビト様、お帰りなさい!」
と、メイユイは屈託のない笑顔で俺に話しかけてきた。
「なにしてるの?」
「はい! 今日からここで、泊まりで護衛させていただきますっ!」
「え……? なんで?」
寝てるところに、あられもない姿のイーリンさんが圧し掛かってたときのことを思い出して、少し赤面する。
「だって、マレビト様、宮城の外に出るときでも、私のこと忘れて置いて行くじゃないですか? ここで護衛してたら忘れられないかなって。あっ! シアユンさんの許可はもらってます!」
衛士の装甲を脱いで、黒いチャイナな上着に、髪色と同じ緋色のズボン姿のメイユイが、大真面目な表情で敬礼して見せた。
その迷いのない表情に、思わず吹き出してしまって、肩の力が少し抜けた。
ふと、メイユイが張った胸から突き出された膨らみが目に入った。装甲の胸当てで押さえつけられてた膨らみが、遠慮なく前に張り出してて、俺にバイーンっと主張してくる。
更に言うと、ズボンの上に巻いてる緋色の幅広の帯がコルセットみたいになってて、余計に膨らみが強調されてる。
……今、俺、しましたね。チラ見。してしまいましたよね。気付かれたかな? 気付くものなんですよね? 女子は。里佳情報によると。
寝室には入って来ないでね、って言い出すタイミングを失って、よろしくねとだけ言って、寝室に戻った。
上着を脱いで窓際の椅子に腰かける。ベッドに横になったら、出るのが嫌になりそうだ。
今日は一日、色んなことをしてきたけど、異世界に召喚されてからずっと、一日のメインイベントは日没の後だ。と、大きく吸い込んだ息を吐き出すと、声が聞こえた。
「失礼いたします」
と、シアユンさんがお茶を持って来てくれた。窓の向こう側では、剣士たちが最終城壁に登り始めてる。
シアユンさんが淹れてくれたお茶で喉を潤す。お茶の熱さが、気持ちを落ち着かせてくれるような気がした。
静かな時間が流れる。
ふと、気になってたメイファンの言葉を思い出して、シアユンさんに尋ねた。
「メイファンが『マレビトが新しいシキタリをつくるのは普通』って言ってたんですけど、どういう意味か分かります?」
「シキタリの始まりは、初代マレビト様が祖霊からの託宣をもとに定められたと伝わります。その後、追加されたものもありますが、そのことを指しているのではないかと」
「アホなこと聞くかもですけど、例えば俺が『これが新しいシキタリです!』って宣言したら、皆さんは受け入れてくれるものですか?」
「……恐らく、それだけでは難しいのではないかと。特に、これまでのシキタリを変更したり、修正する場合は尚のこと」
「ですよねー。はは」
「ただ、これまでに申し上げた通り『マレビト様の言葉を受け入れる』というシキタリが既にあります。メイファンのように素直な者は、マレビト様の言葉に大きな抵抗を感じることはないでしょう。ですが、そのような者ばかりではない、ということです」
剣士長のフェイロンさんも、俺の話に「剣士の皆が皆、納得する訳ではない」って言ってた。
人間には一人ひとりに気持ちがある。スパッと竹を割ったような話にはならないってことだ。
シアユンさんにお礼を言って、お茶を飲み干す頃には、日没の直前を迎えていたので部屋を出た。
メイユイが「行ってらっしゃーい!」と、手を振った。
……そこにいる意味ある? 宮城内は安全だから護衛に付いて来ないってことなんだろうけど。
それからシアユンさんと一緒に宮城を昇り、望楼に向かった。
色々準備して、やっと「見てるだけ」じゃない、初めての夜を迎える。
と、メイユイは屈託のない笑顔で俺に話しかけてきた。
「なにしてるの?」
「はい! 今日からここで、泊まりで護衛させていただきますっ!」
「え……? なんで?」
寝てるところに、あられもない姿のイーリンさんが圧し掛かってたときのことを思い出して、少し赤面する。
「だって、マレビト様、宮城の外に出るときでも、私のこと忘れて置いて行くじゃないですか? ここで護衛してたら忘れられないかなって。あっ! シアユンさんの許可はもらってます!」
衛士の装甲を脱いで、黒いチャイナな上着に、髪色と同じ緋色のズボン姿のメイユイが、大真面目な表情で敬礼して見せた。
その迷いのない表情に、思わず吹き出してしまって、肩の力が少し抜けた。
ふと、メイユイが張った胸から突き出された膨らみが目に入った。装甲の胸当てで押さえつけられてた膨らみが、遠慮なく前に張り出してて、俺にバイーンっと主張してくる。
更に言うと、ズボンの上に巻いてる緋色の幅広の帯がコルセットみたいになってて、余計に膨らみが強調されてる。
……今、俺、しましたね。チラ見。してしまいましたよね。気付かれたかな? 気付くものなんですよね? 女子は。里佳情報によると。
寝室には入って来ないでね、って言い出すタイミングを失って、よろしくねとだけ言って、寝室に戻った。
上着を脱いで窓際の椅子に腰かける。ベッドに横になったら、出るのが嫌になりそうだ。
今日は一日、色んなことをしてきたけど、異世界に召喚されてからずっと、一日のメインイベントは日没の後だ。と、大きく吸い込んだ息を吐き出すと、声が聞こえた。
「失礼いたします」
と、シアユンさんがお茶を持って来てくれた。窓の向こう側では、剣士たちが最終城壁に登り始めてる。
シアユンさんが淹れてくれたお茶で喉を潤す。お茶の熱さが、気持ちを落ち着かせてくれるような気がした。
静かな時間が流れる。
ふと、気になってたメイファンの言葉を思い出して、シアユンさんに尋ねた。
「メイファンが『マレビトが新しいシキタリをつくるのは普通』って言ってたんですけど、どういう意味か分かります?」
「シキタリの始まりは、初代マレビト様が祖霊からの託宣をもとに定められたと伝わります。その後、追加されたものもありますが、そのことを指しているのではないかと」
「アホなこと聞くかもですけど、例えば俺が『これが新しいシキタリです!』って宣言したら、皆さんは受け入れてくれるものですか?」
「……恐らく、それだけでは難しいのではないかと。特に、これまでのシキタリを変更したり、修正する場合は尚のこと」
「ですよねー。はは」
「ただ、これまでに申し上げた通り『マレビト様の言葉を受け入れる』というシキタリが既にあります。メイファンのように素直な者は、マレビト様の言葉に大きな抵抗を感じることはないでしょう。ですが、そのような者ばかりではない、ということです」
剣士長のフェイロンさんも、俺の話に「剣士の皆が皆、納得する訳ではない」って言ってた。
人間には一人ひとりに気持ちがある。スパッと竹を割ったような話にはならないってことだ。
シアユンさんにお礼を言って、お茶を飲み干す頃には、日没の直前を迎えていたので部屋を出た。
メイユイが「行ってらっしゃーい!」と、手を振った。
……そこにいる意味ある? 宮城内は安全だから護衛に付いて来ないってことなんだろうけど。
それからシアユンさんと一緒に宮城を昇り、望楼に向かった。
色々準備して、やっと「見てるだけ」じゃない、初めての夜を迎える。
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