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58.剣士府の演説(1)

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昼過ぎに、に、ギュウギュウとつぶされそうになる夢で目が覚めた。

けど、

――ですよねー。

としか思わなかった。

今朝けさの大浴場での出来事できごとが、自分の脳みその中で、全然ぜんぜん整理されてない。無理もない、としか思わない。

無表情にベッドをりて口をゆすいでいると、シアユンさんの声がした。

「失礼します。フェイロン様がお見えです」

フェイロンさんが? わざわざ俺の部屋まで足を運んでくれた?

なんだろうと思いながら着替きがえて寝室を出たら、前室ぜんしつでメイユイが衛士えいしのフル装備そうびで立ってた。

「おはようございますっ!」

と、元気よく敬礼けいれいしてくれるメイユイの胸には装甲そうこう胸当むねあてが着けられてて、……た。

伸縮自在しんしゅくじざい? と、ビビりつつも、朝イチでチラ見してしまった。と、ちょっとへこんだ。

寝室のとなりにある応接室おうせつしつにシアユンさんと一緒に入ると、フェイロンさんとイーリンさんが座ってた。

――あー、これ。昨日ので、なにかあったな。

と思ったのは、正解だった。当たってもうれしくない。

望楼ぼうろうからはなたれた矢のことで、剣士たちがさわがしくなっております」

「そうですか……」

「すみませんっ。北側城壁きたがわじょうへき指揮しきまかせていただいた、私のちからいたらず……」

と、イーリンさんが頭を下げた。けど、フェイロンさんが、そっと手でせいした。

「そうではない」

「まずは、状況をくわしく教えていただいてもいいですか?」

という、俺の言葉にフェイロンさんがうなずいた。

昨晩ゆうべ、なんの動揺どうようも見られなかった北側城壁で闘う剣士たちは、城壁の外を照らす円形の光におどいていたそうだ。

シアユンさんはじめ、メイファン、ミンユーの驚き方で気が付くべきだった。剣士たちの目にも未知みちのテクノロジーのようにうつったことだろう。

そこにきて、光の中でたおれる人獣じんじゅうを見た者、飛んで行く矢を見た者、共食ともぐいをする人獣じんじゅうむらがりを見た者。

激しい戦闘の最中さいちゅう、それぞれの剣士の視界に入った断片的だんぺんてきな情報が、宿舎しゅくしゃもどったあとにジワジワと広がって、け合わさりさわぎになっている。ということだった。

「マレビト様のご指示で、望楼ぼうろうから狩人かりうどが矢をはなつことは伝えていたのですが……」

と、イーリンさんがくちびるんだ。どうして、騒ぎになってしまったのか分からないという様子に見えた。

――矢が飛ぶことは、知っていた……。

「フェイロンさんは、矢をたこと、弓を引いたことはありますか?」

と、俺はたずねた。フェイロンさんは、静かに首を振った。

「いや、ない」

りに立ち会ったことは?」

「ありません」

そうか。剣士は弓矢ゆみや威力いりょくを知らないんだ。

だから、細い矢が一撃いちげき人獣じんじゅうたおしたことにおどろいてる。

いや、もっと言えば、みくびってた。チンピラさんたちの投石とうせき延長えんちょうくらいにしか思ってなかった。

おそらくフェイロンさんにしても、そうだ。まさか、倒すとは思いもよらなかった。

事前に伝えられて、矢を放つことに特に異議いぎとなえる人がいなかったのは、むしろ、連夜れんやの投石がならしになってたのかもしれない。

それが、一撃で人獣じんじゅう眉間みけん射抜いぬき、倒した。

――プライドをきずつけたか。
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