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35.初指名(2)
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「建築が担当ってことは、道具を作ったりするのもミンリンさんが担当ですか?」
「そうですね。はっきり決まっている訳ではありませんが、そう考えていただいて差し支えないと思います」
「篝火に屋根を付けたいんです」
「篝火に、屋根……」
イメージしてるのは灯籠だ。風で消えないだけの火勢が必要なことを考えると、結構な高さが要るかもしれない。
「そうです。雨で火が消えたり、弱まったりするのを防ぎたいんです」
「なるほど……」
「それに、やってみないと分からないんですけど、磨いた鍋を組み合わせてみたいんです」
「鍋、ですか……」
この短い間に、俺なりに必死で考えた対策がこれだ。
スイランさんに案内された倉庫には、中華鍋も備蓄されてた。あれを磨いて反射させたら、サーチライトのように使えないか? 上手くいけば、城壁上じゃなくて、宮城から照らせる。
でも、そんなこと、やったことがない。出来ればプロの社会人に作ってもらいたい。社会人……。そんな概念は異世界にあるんだろうか……?
まあいいや。職人さんだ、職人さん。職人さんにやってもらえるなら、それに越したことはないんだけど。
ミンリンさんは少し考えてから、口を開いた。考えてる間に四つん這いから、腰を降ろしてくれて、ちょっと気持ちが落ち着いた。下を向いてた迫力が、前に突き出たってだけではあるのだけど……。
「それなら、シーシですね。シーシ?」
と、ミンリンさんが呼びかけると、キャッキャしてる女子たちの中から、真紅の髪色をしたショートボブのツルペタ娘が立ち上がった。……四つん這いもアレでしたけど、立ち上がられるのも、ちょっと。
「なんスか!?」
と、元気よく答えたショートボブツルペタ娘は、湯を掻き分けてミンリンさんの側に来て隣に座った。
「マレビト様。シーシは腕の立つ大工で、ものづくりも得意にしております。私が設計する建築が思い通りに建つのは、シーシの力量に依るものが大きいのです」
と、ミンリンさんが紹介すると、シーシは、へへっと、照れ臭そうに笑った。
スイランさんよりは身長高そうだけど、全体的には小柄。パッと見、ツルペタって思ったけどシアユンさんよりは少しある……。違う違う。今、そんな場合じゃないから。
「だって、ミンリン様の設計ってスゴイんだよ!?」
と、シーシが満面の笑みで声を上げた。
「なんて言うか、一筋縄じゃいかないって言うか。毎回、こっちはこっちで新しい技法を考え出さないと、ちゃんと建たないんだ! でも、建ったら誰の設計したものより、頑丈だし立派で綺麗! 挑みがいがあるっていうか、最高に楽しいんだ!」
うーん。元気印ショートボブ貧乳娘……。ミンリンさんは照れ臭そうに頬を赤らめて俯いた。なんとなく、俺的にキャラの立つコンビだなぁ。
「シーシは鍛冶や冶金にも精通しております」
「だって、ミンリン様の設計のために金具もいっぱい新しく作ったからね!」
「……で、ですので。マレビト様もシーシに相談してみてはいかがでしょうか……?」
ミンリンさんは褒められ慣れてないように、消え入りそうな声で俺にシーシのことを勧めてきた。
うん。大工さんで木工が得意で、金属の扱いにも慣れてる。俺の求めてた職人さんにピッタリ当てはまりますです。しかも、鍛冶で金具も自作できるなんて、言うことないです。
俺がミンリンさんにした説明と同じ話をすると、シーシは、ふんふんと考えて口を開いた。
「分かった! とりあえず、やってみるよ。マレビト様がひと眠りしたら『司空府』に来てくれる? 失敗するかもだけど、試しに作ってみとくよ」
仕事も速いなんて、最高じゃないですか。でも……。
「シーシは寝なくて大丈夫なのか?」
「ボクは神経が太いから、夜の間にグッスリ寝れてるから。ニシシ」
ボ、ボクっ娘かぁ……。ニシシと笑う、元気印ショートボブ貧乳ボクっ娘。……なんか、一発で覚えました! ものづくりが得意ってところも、なんかピッタリです!
「シーシは若いのにミンリンさんからも信頼されてて、すごいなぁ」
と、俺が漏らすと、シーシとミンリンさんがキョトンとした顔をした。あれ?
「ボク、マレビト様より年上だよ。……21歳」
シーシ……、さん。じゃないですか。え? シアユンさんと同い年? 3つも年上?
「あ、あの……、なんか、すみません……。シーシさん……」
「いいよ、いいよ! 幼く見られるのは慣れてるし! それと、シーシでいいよ!」
キャッキャしてる女子たちに、スーッと視線を滑らせた。年齢のことで迂闊なことを言うのはやめよう。
そう言えば、昔、里佳にも言われたことあったなぁ……。
「そうですね。はっきり決まっている訳ではありませんが、そう考えていただいて差し支えないと思います」
「篝火に屋根を付けたいんです」
「篝火に、屋根……」
イメージしてるのは灯籠だ。風で消えないだけの火勢が必要なことを考えると、結構な高さが要るかもしれない。
「そうです。雨で火が消えたり、弱まったりするのを防ぎたいんです」
「なるほど……」
「それに、やってみないと分からないんですけど、磨いた鍋を組み合わせてみたいんです」
「鍋、ですか……」
この短い間に、俺なりに必死で考えた対策がこれだ。
スイランさんに案内された倉庫には、中華鍋も備蓄されてた。あれを磨いて反射させたら、サーチライトのように使えないか? 上手くいけば、城壁上じゃなくて、宮城から照らせる。
でも、そんなこと、やったことがない。出来ればプロの社会人に作ってもらいたい。社会人……。そんな概念は異世界にあるんだろうか……?
まあいいや。職人さんだ、職人さん。職人さんにやってもらえるなら、それに越したことはないんだけど。
ミンリンさんは少し考えてから、口を開いた。考えてる間に四つん這いから、腰を降ろしてくれて、ちょっと気持ちが落ち着いた。下を向いてた迫力が、前に突き出たってだけではあるのだけど……。
「それなら、シーシですね。シーシ?」
と、ミンリンさんが呼びかけると、キャッキャしてる女子たちの中から、真紅の髪色をしたショートボブのツルペタ娘が立ち上がった。……四つん這いもアレでしたけど、立ち上がられるのも、ちょっと。
「なんスか!?」
と、元気よく答えたショートボブツルペタ娘は、湯を掻き分けてミンリンさんの側に来て隣に座った。
「マレビト様。シーシは腕の立つ大工で、ものづくりも得意にしております。私が設計する建築が思い通りに建つのは、シーシの力量に依るものが大きいのです」
と、ミンリンさんが紹介すると、シーシは、へへっと、照れ臭そうに笑った。
スイランさんよりは身長高そうだけど、全体的には小柄。パッと見、ツルペタって思ったけどシアユンさんよりは少しある……。違う違う。今、そんな場合じゃないから。
「だって、ミンリン様の設計ってスゴイんだよ!?」
と、シーシが満面の笑みで声を上げた。
「なんて言うか、一筋縄じゃいかないって言うか。毎回、こっちはこっちで新しい技法を考え出さないと、ちゃんと建たないんだ! でも、建ったら誰の設計したものより、頑丈だし立派で綺麗! 挑みがいがあるっていうか、最高に楽しいんだ!」
うーん。元気印ショートボブ貧乳娘……。ミンリンさんは照れ臭そうに頬を赤らめて俯いた。なんとなく、俺的にキャラの立つコンビだなぁ。
「シーシは鍛冶や冶金にも精通しております」
「だって、ミンリン様の設計のために金具もいっぱい新しく作ったからね!」
「……で、ですので。マレビト様もシーシに相談してみてはいかがでしょうか……?」
ミンリンさんは褒められ慣れてないように、消え入りそうな声で俺にシーシのことを勧めてきた。
うん。大工さんで木工が得意で、金属の扱いにも慣れてる。俺の求めてた職人さんにピッタリ当てはまりますです。しかも、鍛冶で金具も自作できるなんて、言うことないです。
俺がミンリンさんにした説明と同じ話をすると、シーシは、ふんふんと考えて口を開いた。
「分かった! とりあえず、やってみるよ。マレビト様がひと眠りしたら『司空府』に来てくれる? 失敗するかもだけど、試しに作ってみとくよ」
仕事も速いなんて、最高じゃないですか。でも……。
「シーシは寝なくて大丈夫なのか?」
「ボクは神経が太いから、夜の間にグッスリ寝れてるから。ニシシ」
ボ、ボクっ娘かぁ……。ニシシと笑う、元気印ショートボブ貧乳ボクっ娘。……なんか、一発で覚えました! ものづくりが得意ってところも、なんかピッタリです!
「シーシは若いのにミンリンさんからも信頼されてて、すごいなぁ」
と、俺が漏らすと、シーシとミンリンさんがキョトンとした顔をした。あれ?
「ボク、マレビト様より年上だよ。……21歳」
シーシ……、さん。じゃないですか。え? シアユンさんと同い年? 3つも年上?
「あ、あの……、なんか、すみません……。シーシさん……」
「いいよ、いいよ! 幼く見られるのは慣れてるし! それと、シーシでいいよ!」
キャッキャしてる女子たちに、スーッと視線を滑らせた。年齢のことで迂闊なことを言うのはやめよう。
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