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29.告白される
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「リーファ姫がマレビト様を召喚されることに、私は反対してましたっ」
夕暮れ近く。俺の部屋にシアユンさんが連れて来た橙色の髪をした侍女のユーフォンさんが、眉を寄せて告白してくれた。
叱られるか、嫌われるとでも思っているのか、なにかに耐える表情をしてる。
もう一人、シアユンさんが連れて来た紫髪の侍女、ツイファさんも神妙な顔付きで俺の前に座ってる。
「王族である……、第4王女であるリーファ姫が、ご自身の命を賭ける必要はないと思ってたからです!」
と、ユーフォンさんが続けた。そりゃ、そういう人もいるでしょうと思うけど、ユーフォンさんは大変、申し訳なさそうな表情を崩さない。
「私もでございます」
と、紫髪のツイファさんが言った。うんうん。そりゃそうだ。
ひとつふたつ、俺が頷いて見せると、ユーフォンさんが言いにくそうに話を続けた。
「リーファ姫が民を想われる気持ちは尊いものだと思ってましたけど、そのために、ご自身のお命を差し出すっていうのは、やり過ぎっていうか……、私たち臣民が守るべき王族のお命の使い方として、おかしいっていうか……。とにかく、リーファ姫がマレビト様の召喚を口にされたとき、私とツイファは強く反対してしまいました」
すごく決まりの悪いことを告白してくれてるんだろうけど、申し訳ないことに、お風呂場でのユーフォンさんとツイファさんの姿が浮かんでくるのが止められないでいる。今朝は、お二人の飛沫もたくさん顔にかかりました……。イーリンさんほどじゃないけど、立派なものをお持ちで……。
「それでも、リーファ姫が召喚の呪術を行使されたと聞いて……、なんで!? どうして!? って気持ちでいっぱいになってしまってて、マレビト様のことも……、正直、良く思ってませんでしたっ!」
うん。そういうことも、あるでしょう。結局、命は落とさずに眠り続けてるとはいえ、リーファ姫と引き換えに俺が現われたのは事実ですからね。
俺に対する反感がどうこうより、強く慕われてるリーファ姫の人柄に興味が向く。すごく魅力的な人なんだろうな。
いずれ城が人獣たちに踏みにじられてしまうにしても、どこの誰かも分からない『マレビト』より、尊敬できるリーファ姫に率いられたまま終わっていきたいって気持ちは、理解できる。
「リーファ姫に一番長くお仕えしてるシアユンにも、どうして止めてくれなかったの!? って思ってて……。でも……、マレビト様を見てて……、それから、シアユンともいっぱい話して……」
言葉が続かず俯いてしまったユーフォンさんの背中に、シアユンさんがそっと手を置いた。目線を向けたユーフォンさんに、シアユンさんが優しげな微笑みを浮かべて頷いた。
「私っ!」
と、ユーフォンさんが力いっぱいに顔を上げて、髪色に似た朝焼けのようなオレンジの瞳で、俺を真っ直ぐに見詰めてきた。
「マレビト様って、みんな、手当たり次第に乙女の純潔を散らしまくる、どエロ変態色魔ばかりなんだと思い込んでました! それが、フラれた幼馴染のことが忘れらずに、素っ裸の女子に囲まれても手出しひとつ出来ない、腰抜け純情野郎だなんて思ってもみませんでした! スミマセンでした!」
――こ、腰抜け純情野郎。
ええ……。そうかも……、しれませんね……。深々と頭を下げられてますけど、俺、経験したことのないダメージが突き刺さってますよ。褒め言葉な感じなのが、余計にアレです。キツいです。
「リーファ姫が信じて召喚されたマレビト様だということを、舐めてました!」
一緒に頭を下げてるツイファさんも、同じように思ってるんですね。2人を優しげに見守ってたシアユンさんが口を開く。
「ユーフォンもツイファも、マレビト様にお仕えしたい気持ちになったのですが、どうしても、これまでのことを謝っておきたいと……」
告白されなければ、気付きませんでしたけどね……。
「マレビト様にはどうか、2人が側でお仕えすることを、許してやってほしいのですが、いかがでしょうか……?」
「あ。はい……。問題ありません……」
仲間は多い方がいいですよね……。隠し事の出来ない性格のようですし、きっと、力になってくれますよ……。涙こぼして喜ぶほど緊張するなら、言わなきゃ良かったのにって思わなくもないですけどね。
そう言えば、今朝の大浴場での激論でも、最初は黙ってたのが、いつのまにかマレビト支持派で飛沫を飛ばしてくれてましたね。ユーフォンさんもツイファさんも。橙色と紫色の髪に見覚えがあります。
……な、仲良くなれるといいなぁ。
夕暮れ近く。俺の部屋にシアユンさんが連れて来た橙色の髪をした侍女のユーフォンさんが、眉を寄せて告白してくれた。
叱られるか、嫌われるとでも思っているのか、なにかに耐える表情をしてる。
もう一人、シアユンさんが連れて来た紫髪の侍女、ツイファさんも神妙な顔付きで俺の前に座ってる。
「王族である……、第4王女であるリーファ姫が、ご自身の命を賭ける必要はないと思ってたからです!」
と、ユーフォンさんが続けた。そりゃ、そういう人もいるでしょうと思うけど、ユーフォンさんは大変、申し訳なさそうな表情を崩さない。
「私もでございます」
と、紫髪のツイファさんが言った。うんうん。そりゃそうだ。
ひとつふたつ、俺が頷いて見せると、ユーフォンさんが言いにくそうに話を続けた。
「リーファ姫が民を想われる気持ちは尊いものだと思ってましたけど、そのために、ご自身のお命を差し出すっていうのは、やり過ぎっていうか……、私たち臣民が守るべき王族のお命の使い方として、おかしいっていうか……。とにかく、リーファ姫がマレビト様の召喚を口にされたとき、私とツイファは強く反対してしまいました」
すごく決まりの悪いことを告白してくれてるんだろうけど、申し訳ないことに、お風呂場でのユーフォンさんとツイファさんの姿が浮かんでくるのが止められないでいる。今朝は、お二人の飛沫もたくさん顔にかかりました……。イーリンさんほどじゃないけど、立派なものをお持ちで……。
「それでも、リーファ姫が召喚の呪術を行使されたと聞いて……、なんで!? どうして!? って気持ちでいっぱいになってしまってて、マレビト様のことも……、正直、良く思ってませんでしたっ!」
うん。そういうことも、あるでしょう。結局、命は落とさずに眠り続けてるとはいえ、リーファ姫と引き換えに俺が現われたのは事実ですからね。
俺に対する反感がどうこうより、強く慕われてるリーファ姫の人柄に興味が向く。すごく魅力的な人なんだろうな。
いずれ城が人獣たちに踏みにじられてしまうにしても、どこの誰かも分からない『マレビト』より、尊敬できるリーファ姫に率いられたまま終わっていきたいって気持ちは、理解できる。
「リーファ姫に一番長くお仕えしてるシアユンにも、どうして止めてくれなかったの!? って思ってて……。でも……、マレビト様を見てて……、それから、シアユンともいっぱい話して……」
言葉が続かず俯いてしまったユーフォンさんの背中に、シアユンさんがそっと手を置いた。目線を向けたユーフォンさんに、シアユンさんが優しげな微笑みを浮かべて頷いた。
「私っ!」
と、ユーフォンさんが力いっぱいに顔を上げて、髪色に似た朝焼けのようなオレンジの瞳で、俺を真っ直ぐに見詰めてきた。
「マレビト様って、みんな、手当たり次第に乙女の純潔を散らしまくる、どエロ変態色魔ばかりなんだと思い込んでました! それが、フラれた幼馴染のことが忘れらずに、素っ裸の女子に囲まれても手出しひとつ出来ない、腰抜け純情野郎だなんて思ってもみませんでした! スミマセンでした!」
――こ、腰抜け純情野郎。
ええ……。そうかも……、しれませんね……。深々と頭を下げられてますけど、俺、経験したことのないダメージが突き刺さってますよ。褒め言葉な感じなのが、余計にアレです。キツいです。
「リーファ姫が信じて召喚されたマレビト様だということを、舐めてました!」
一緒に頭を下げてるツイファさんも、同じように思ってるんですね。2人を優しげに見守ってたシアユンさんが口を開く。
「ユーフォンもツイファも、マレビト様にお仕えしたい気持ちになったのですが、どうしても、これまでのことを謝っておきたいと……」
告白されなければ、気付きませんでしたけどね……。
「マレビト様にはどうか、2人が側でお仕えすることを、許してやってほしいのですが、いかがでしょうか……?」
「あ。はい……。問題ありません……」
仲間は多い方がいいですよね……。隠し事の出来ない性格のようですし、きっと、力になってくれますよ……。涙こぼして喜ぶほど緊張するなら、言わなきゃ良かったのにって思わなくもないですけどね。
そう言えば、今朝の大浴場での激論でも、最初は黙ってたのが、いつのまにかマレビト支持派で飛沫を飛ばしてくれてましたね。ユーフォンさんもツイファさんも。橙色と紫色の髪に見覚えがあります。
……な、仲良くなれるといいなぁ。
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