【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

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18.純潔乙女会議(2)

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「城に残る、すべての純潔じゅんけつの乙女おとめに集まってもらいました」

というシアユンさんの言葉で、女子たち全員の頬ほほに一斉いっせいに紅べにがさした。そのことで俺もポンッと赤面してしまう。え？なんで？なんで集めて……。

「皆みなに聞いてもらいたいことがある」

シアユンさんは、女子たちの方に向き直り声を張はり上げた。スリムな細い体つきのどこから、そんなよく通る声が出るのか、女子たちも俺も固唾かたずを飲んで次の言葉を待った。

「マレビト様は……」

あ。イーリンさんのことで怒られるのかな？と、急に思い当った。イーリンさんの落ち込んだ顔が思い起こされる。女子たちに吊つるし上げられるヤツ？と、一瞬で頭の中を駆かけ巡めぐるイヤな予感。

「幼馴染にフラれたばかりなのです！」

ぐふっ！

「昨日！」

げふっ！

「フラれたて！」

ずばーん！

「……なのです」

たくさんいる女子たちが一斉に生温なまあたたかい憐あわれみの視線で俺の方を見てくる……。や、やめ……。

「幼馴染に愛を打ち明け、見事にフラれたばかりなのです」

その通りですけど、それ、皆みんなの前で力説する必要ありますか……？俺のダメージがえげつないんですけど……。

「隣家りんかに生を受け、ともに育ち、ともに楽しみ、ともに学んだ幼馴染。ともに遊び、ともに食べ、時にはともに悲しんだ幼馴染にいつしか芽生めばえていた恋心。近い距離だからこそ打ち明けられない想おもいはつのる一方。だというのに、そんな想いに気付かない幼馴染は、いつもの無邪気むじゃきな笑顔を向けてくる。幼い頃から一緒に育った二人の距離は誰よりも近く、ぐっと顔を近付けて話しかけられてドキッとしてしまうこともしばしば。この関係を続けたい。この関係を壊こわしたくない。その気持ちに偽いつわりはないけれど、自分の中でどんどん膨ふくらむ恋心」

シ、シアユンさん……。もう少し、手加減を……。

「赤ん坊の頃から知っている幼馴染は、どんどん女性らしく美しく育っていく。その美しさの意味を本当に知っているのは自分だけ。ふと、周りを見渡みわたせば年頃としごろの男たちが幾人いくにんもいる。ほかの男に渡していいのか？いいわけがない。幼馴染を幸せするのは自分でなくてはいけないはずだ。幼い頃から今に至いたるまで、楽しいことも、辛つらいことも一緒に乗り越えてきたのは自分だけだ。二人の間に他の人間が入ることなど耐たえられない。なんでも笑い合い、なんでも話せる、なんでも共有できる関係を続けたい。自分の中で張はり裂さけそうにつのる恋心を、これまでの人生の総すべてを動員どういんして正当化せいとうかする男心おとこごころ」

も、もう、やめてほしい……。椅子いすからずり落ちそうになるのを、必死で堪こらえる。

「そして、ついに……」

みなさん、唾つばを飲み込むのやめてくれませんかね。涙目なみだめになっちゃってる娘もいるし……。

「打ち明けられる、熱あつい想おもい！けれども照てれ臭くさくて、妙みょうに軽くなってしまう口調くちょう。笑われてしまうんじゃないか？冗談だと思われるんじゃないか？自分は本気なんだと伝えたい。本当に想おもっていることが伝わるだろうか。いや、受け止めてくれるだろうか。これからもずっと一緒にいたいだけなんだ。この期ごに及およんでも、世間せけん一般いっぱんの恋愛れんあいとは少し違うんだと斜はすに構かまえてしまう照れ臭さ」

……あう。

「それを！」

あ……。

「スパッと！」

やめて……。

「断る『ごめんなさい』の一言！」

も……、もう、どうでもいいです……。

「他人たにん行儀ぎょうぎな謝罪しゃざいの言葉が、幼馴染も本気で受け止め、本気で拒絶きょぜつしていることを伝えてくる」

すすり泣きの声とか聞こえるんですけど……。そっちの方を見れない……。ふと目に入ったイーリンさんの鮮あざやかなエメラルドグリーンの瞳にも、いっぱいの涙が浮かんでる。

なんですか？異世界こちらでは幼馴染モノが流行してるんですか？みんなして、そんな……。

「謝絶しゃぜつ！まさに謝絶しゃぜつ！こちらを思おもい遣やる気持ちが、むしろ突つき刺ささる。一瞬で湧わき上がる後悔こうかい。想おもいを秘ひめたままにしておけば良かったのか？なんでダメなんだ？湧き上がる疑問。またこれまでと同じように、なんでも笑い合える関係に戻れるのか？駆かけ巡めぐる不安！」

シアユンさんが言葉を切ると、部屋が静寂せいじゃくに……。タメとかいいですから、もう、最後までズバッと斬きってください……。

「そんなマレビト様が、リーファ姫の召喚に応じてくださったのです……」

応じるも何も、強制的に飛ばされましたけどね……、シアユンさん、涙を拭ぬぐってますけど。

完全に目は覚めましたけど、頭の中は真っ白です。むしろ煙が上がってる感じです。

シアユンさんは、まだまだ話足りないという風情ふぜいで、皆の方に視線を向けた。

まだ、続きます？この話――。

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