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13.一番の動揺に襲われる(1)

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シアユンさんにもう一杯お茶をもらってから、改めて城壁に視線を移すと、色とりどりの髪をした剣士たちが、剣をるい続けている。

めてる訳じゃなくて、あの髪色で生まれてくるんだろう。篝火かがりびの炎に美しく照らし出されてる。異世界らしい光景。

正方形をした城壁の四方で剣士たちが人獣じんじゅう侵入しんにゅうめてる。四方を見渡せる望楼ぼうろうからのながめは、なかなかこわい。押し込まれた剣士が仲間に助けられる場面も見られる。

2時間ほどているうちに、徐々じょじょに剣士それぞれのたたかい方が違うのが見えてきた。

剣筋けんすじなんてものは分からないけど、剣先けんさきの速さをかして闘う者、体格の良さを活かして闘う者、り下ろす剣を多用する者、はらう者、く者……。一人ひとり、闘い方に個性こせいがある。

緑色の髪をしたスリムな体型の剣士は、攻撃を素早すばけてくぐり、急所きゅうしょに細身の剣を突き立て闘ってる。

最初に見たオレンジ色の髪の剣士とは系統けいとうが違う感じだけど、どちらもうように闘う姿に目をかれる。

「あれ? あの剣士さん。女の人か」

軽装けいそうよろいけた緑髪の剣士は、腰が細くて、胸板が厚いって見えてたけど、……胸が大きいのか。

「イーリンですね」

と、シアユンさんが言った。

「女の剣士は少ないのですが、イーリンはうでつので……」

……腕が立つので、生き残れてる。ってことか。少しけわしい表情をしたシアユンさんに、それ以上は聞かなかった。

剣士それぞれの闘いに見惚みとれていたけど、4時間が過ぎる頃には、――ひょっとして、集団戦しゅうだんせんを行なっていないんじゃないか? ということに気が付いた。

300人の個人戦闘が行われていて、それぞれが連携れんけいしているような気配がない。危なくなった仲間を助けることはあっても、集団で動いてる感じはしない。くまでも個人で向き合って、個人で闘ってる。

率直そっちょくに、疑問をシアユンさんにぶつけてみた。

「シキタリでございます」

と、シアユンさんはことげに答えた。

「剣士は人の命をうばうのが役目やくめ。敵がどうであろうと、1人に1人でいどんでたし、冥界めいかいに送るのがシキタリでございます」

――マジか。

いや。陣形じんけいとか戦術せんじゅつとか詳しいわけではありませんけど、自分たちより数の多い相手に、それは消耗戦しょうもうせんが過ぎるんじゃありませんかね?

日本の警察でさえ、犯人を刺股さすまたで押さえる人、たてを持って近付いて逃げ道をふさぐ人、警棒けいぼうで立ち向かう人、くらいの役割分担やくわりぶんたんはしてるって、ドラマでやってましたよ。

里佳と一緒に観たヤツ……。いやいや、今、そんな場合じゃないから。

「シアユンさん」

「はい」

「俺。これをずっと観てるだけなんですか?」

「いえ。まずは城の現状をお知りいただきたく、ご案内させていただきました」

「俺に出来ること、ありますかね?」

もう、ずっと疑問だったことが、たまらなくなって直球で質問してみた。

「い、いずれ……」

と、シアユンさんは言い淀んだ。そこで詰まられると、不安しかなくなります。

俺は息を呑み込み、シアユンさんの次の言葉を待った――。
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