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25.新婚旅行の終わりに(2)

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 それから、魔物狩りは中止にして、2人でのんびり過ごすことにした。

 擬態ゴリラが発見されたものの、本来、魔物狩りはレジャーで楽しむようなことではないので、私も納得している。
 あんなに心配してくださったのも、密かに嬉しかったし。ある意味、満腹です。

 何度か一緒に露天風呂に浸かって夕陽を眺めたし、冷たい海で水のかけっこもした。
 終わりに近づく新婚旅行。
 ベッドは少しずつ近付けて、いよいよ今晩は同じベッドで寝ることに挑戦してみましょうという夕刻。

 ――ひょっとして勢いついちゃって、そのまま……なんてことも? あるかも? いやあ、ないか。ないな。でも、ある? かも?

 などと、浮かれて夕飯の支度をしていた最中に、私たちの新婚旅行は唐突に終わりを迎えた。

 ◇

 その、少し前のこと――。

 マルティン様は夕飯に、本格的な野営食をご馳走してくださると、焚火で鶏を丸焼きにしてくれている。
 内蔵を取り出して、中には香草を詰めてあるらしい。

「特別な戦果をあげられた時、ささやかな祝杯の供にするのです」

 と、ウキウキとした表情を浮かべて、木の枝で貫いた鶏を丁寧に回して、まんべんなく焼いている。
 青春と呼べる時期のすべてを、戦場を駆けて過ごされたんですもの。楽しみのひとつやふたつないとね。
 きっと青春の味がしますわね!

 笑顔を分けていただいた私は、キッチンでシチューをつくる。
 なんでも出来るルイーゼさん直伝の味付けだ。もう何度かつくっていて、マルティン様もお気に入りのご様子。

 つい、鼻歌まじりになった、その時。

 ゴ、ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴ……、と、地を這うような低い音と共に、地面が痺れたように小刻みに揺れ始めた。
 キッチンの食器たちもカタカタ音を鳴らす。

「地震!?」

 私が慌てて飛び出すと、焚火の横で凛と立たれたマルティン様が、北の空を睨んでいた。の顔つきで……。

「マルティン様! お怪我などありませ?か!?」

 と、駆け寄った私の足がもつれてよろめくと、優しく抱き止めてくださった。
 マルティン様の厚い胸板にドキッとして、お顔を見上げると、険しい表情のまま空を見詰めていた。

「マルティン様……?」

 マルティン様は、私を胸に抱いたまま、優しく微笑んでくださる。

「アリエラ……。残念だけど、新婚旅行はここでおしまいのようだ」
「えっ……?」
「魔王が…………復活した……」

 この時、私は怒っていた。
 王国の危機に対してではない。

 ――おのれ魔王め。我らが『子づくり大作戦』の邪魔をしおってぇぇ。

 完全に私怨だった。
 2人で馬に飛び乗り王都を目指すけど、私はずっとプンプンしてたのだった――。
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