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第一章 王都絢爛

7.国王の裁可 *アイカ視点

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「国王ファウロスの名において、白狼タロウと黒狼ジロウの第六騎士団への所属、王宮への滞在を許す」


 と、王様の言葉で、心がパアッと明るくなった。一緒に生活できる……、ってことだよね?

 目鼻立ちしっかり美人の姐さんが、王様に声をかけた。


「よろしいのですか?」

「うむ。ただし滞在は南宮8階、リティア宮殿内に限れ。出入りはリティア宮殿への直通路のみとして、各種回廊への出入りはさせるな。あまり自由気ままに歩き回られて、皆を驚かせ過ぎるのも良くあるまい」

「ありがとうございます! 父上」


 と、リティアさんが弾けるような笑顔だ。いいなぁ美少女。美少女はいいよ。見てるだけで満たされるよ。王様とは目線で通じ合ってる感じがするし、なんかいいな。この親子。

 不意にクレイアさんが私の耳元に顔を寄せた。


 ――近っ! 


 お、お、お、おっぱいが、当たりそ……。


「お礼を……」


 あっ! おっぱいじゃねぇ!!!


「ありがとうございます!」


 歳の離れた美形父娘に見とれてる場合でもなかった。隙があれば愛でてしまう。あぶない……。


「ちちうえ……」


 側妃様に手を引かれた男の子が声を出した。かわいい声だな。第5王子様かな? 王様もにこやかに応えた。


「なんだ? エディン」

「エディンも、狼さんに触りたい」


 側妃様が「エディン」と、眉間に皺を寄せた。

 プラチナブロンドの髪がサラサラで、お花のオーナメントがあしらわれたドレスに隠されてるけど、たぶんおっぱいも大きい美人さん。


「危ないことは……」


 分かる。普通のお母さんはそうです。でも、そのくらいの歳の男の子は動物大好きな子もいますから。


「よし」


 と、王様が手を伸ばした。


「私が抱いておいてやるから、触ってみれば良い」


 側妃様は若干心配そうだけど、駆け寄った王子様が王様に抱かれてタロウとジロウに手を伸ばした。そういえば王様。「朕」とか「余」とか言わないんですね。なんだか親しみが持てます。



「ねえさまっ」


 ぱあっと場を明るくするような笑顔の王子様が、リティアさん顔を向けた。

 なんですか!? このカワイイ物体は。


「触った」

「そうかそうか、どうだった?」


 リティアさんも腰を降ろして王子様に目線を合わせる。


「んーっとね」


 もう一度、王子様がタロウとジロウに触れる。もうちょっと大人しくしといてね。


「やわらかい! どっちの狼さんも毛がやわらかいよ!」

「そうか。父上にお礼を言わないとな」


 と、リティアさんが王子様の頭を撫でた。

 王子様は王様の腕から飛び出て、なぜか照れ臭そうな笑顔でリティアさんに抱き着いた。

 ショタ? おねショタってヤツですか、これ? 鼻血出さないといけないヤツだ。すごく画になる。弟、いいなぁ。カワイイ弟、いいよなぁ。


「ちちうえ、ありがとうございました」

「うむ、良かったな」


 王様は立ち上がって濃い青色をした空に目を向けた。

 晩夏の空と王宮の尖塔を背景に、足元に伏せる二頭の狼を従えるような姿。一国に君臨する王者の風格が漂ってる。


「リティア。かつて王宮が竣工したとき、お前の外曾祖父にあたるルーファの大首長殿から、生きた虎を贈られたという先例がある。あれはテノリクア暦578年のことだから、もう47年前になるか」

「へぇー! そうなんですか? 大おじい様から?」

「立派な虎でな。皆で恐る恐る可愛がったのだが、早死にさせてしまった。……おっと、今の『恐る恐る』のところは内緒だぞ。みんな若くて血気盛んで、聖山戦争真っ最中の血の気の多い時期だったから表向きは強がっていたからな。ジリコは覚えているか?」

「はっ。私の初陣の年でしたから、よく覚えております」

「お前、そんなに若いのか?」

「はっ。今年で64になります」

「私も歳をとるわけだ。私は今年で81だ」


 王様、そんなに筋肉ムキムキで81歳ですか。ていうか、リティアさんとエディン王子様は何歳のときのお子さんですか?


「つまりだ。虎が良くて狼がダメということはあるまいということだ。ましてや守護聖霊があるとは不思議な狼だ。末永く大切にしてやれ」

「かしこまりました、父上」


 リティアさん、いい笑顔だなぁ。映画かドラマの中にしかこんな親子関係ないって思ってたよ。ここ異世界だけど。


「よく運動させてやれ。虎を早死にさせてしまったのは、王宮の中に閉じ込めていたからではないかと思う。街区を離れた森や草原が好みなら、王宮の者や街の者にも早めに見慣れさせよ。それからなリティア」

「はっ」

「旧都テノリクアに『総侯参朝』前の正殿参詣を命じる」

「それは……?」

「アイカとタロウ、ジロウの守護聖霊を母上に、王太后陛下に審神みわけてもらえ」


 王様は一拍あけてリティアさんに顔を寄せた。


「……さすがに気になる」


 王様が投げかけた悪戯っぽい笑みは、リティアさんにそっくりだった。

 歳は随分離れてるけど、ほんとに親子なんだなぁ。


「かしこまりました! ただ、今年は『万騎兵長議定』の主宰を仰せつかっておりますので、終わり次第、旧都に向かいます」


 専門用語が飛び交い始めて、会話についていけなくなってきたけど、リティアさんと王様の気持ちが通じてるのは分かる。側妃様も王子様も姐さんも、にこにこと寄り添ってる。

 人間社会に7年もブランクあるし、異世界だし、色々と心配もあるけどこんな人たちに囲まれるならやっていけそうな気がする。タロウとジロウも一緒にいられる。

 なにより、どっちを向いても愛でたい美人さん、美形さん、美少年さん、美少女さんばかりなのがいい! 


 ――最高の職場です!
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