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プロローグ
1.愛でたい!(1) *アイカ視点
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「アイカ……、です」
逆光で輝く美少女に、名前を答えた。
これが、私にとって7年越しの異世界デビューになった。
「アイカ。怪我はないか?」
美少女は頬についた返り血を拭いながら、微笑みかけてくる。パニックな私を安心させようとしているのが、かろうじて分かった。
私が連れ込まれた土間の足元では、美少女に斬り捨てられた男が血を流して呻き声を上げている。
「殿下! 単独で動かれては困る」
と、剣を構えて飛び込んできた銀髪の美少年。続いて黒髪の美人さんも入ってきた。
――そうそう、これこれ! 美少女に美少年に美人さん。異世界はこうでなくちゃね!
頭は混乱しているのに、妙に納得して何度も頷いてしまう。
「すまんすまん。こちらから悲鳴が聞こえたものでな」
と、悪びれる様子もなく笑って謝る美少女……。ん? ……殿下?
「アイカよ。私は第六騎士団を率いる、第3王女リティアである。お前を襲おうとした悪い男は私が成敗した。もう、安心してよいぞ」
次々起こる予想外の出来事に頭は混乱する一方だけど、美少女にコクコク頷いて応え、言われるままに隅っこのベンチに腰を降ろした。
第3王女と名乗った美少女も、私の横に座って肩を抱き満面の笑みを向けてくれる。
――おかしい。
美少女は、ぼっちの私が愛でる対象のはずだ。なのにガン見されてるのは私の方。私なんかに興味を持たれている。悪い男に襲われた被害者だから……?
「アイカは歳はいくつだ?」
「あ、えと……、13歳です……」
「そんな少女を襲おうとは、ろくでもない男だな」
と、リティアさんは倒れたままの悪い男を一瞥した。美少女のリティアさんも、そう歳が離れているようには見えない。
「それで、アイカはどこから来たのだ?」
「え、えっと……」
「ふふ。焦ることはない。ゆっくり教えてくれ」
至近距離で微笑む美しいお顔も気になりますが、細長い抜身の剣を下げたままの美少年と黒髪の美人さんも気になります。
想いを上手く言葉に出来ずにモジモジしている私に気付いたのか、第3王女のリティアさんが美少年と美人さんに声をかけた。
「ヤニス、クロエ。物騒なものを仕舞え。アイカが落ち着いて話せないじゃないか」
いえ、緊張してるのは剣より、お三方の美貌の方です……。と、思ったけどヤニスと呼ばれた美少年と、クロエと呼ばれた美人さんは、リティアさんの指示通りに剣を鞘に仕舞った。
すると、ヤニス少年が足下でほったらかしになってた男の人の背中を踏みつけた。うっという呻き声が土間に響く。
「ヤニスは心配性だな」
苦笑いしたリティアさんは、再び私の方に笑顔を向けた。
「あの悪い男は、我がテノリア王国の騎士だった。不心得者がアイカに怖い思いをさせてしまい、申し訳ない」
「あ……、いえいえ……」
笑みを絶やさず私の言葉を待ってくれているリティアさん。私が何者なのか話さないといけない場面なのだろうけど、なにをどこまで話せばいいのか……。
中世ヨーロッパ風の街並みを通って、この土間に連れ込まれた。
日本って言っても通じないだろうし……。
私が口籠っているうちに、ガタイのいい男の人たちが沢山入ってきて、悪い男の人を抱えて出て行った。リティアさんはなにやら指示していて、本当に偉い人なんだなあって、美しい横顔に見惚れてしまった……。
静かになった土間で、リティアさんはもう一度、私に笑顔を向けてくれた。
しょっぱなから躓きかけた私の異世界生活を救ってくれた美少女に、ちゃんと説明しないといけないと思うんだけど、長年のぼっち生活の後遺症かリティアさんたちの美貌に気圧されたか、なかなか言葉にならない。
「えっと……。山奥で一人で育ちまして……」
「ふむ……」
嘘ではない。異世界に召喚されるや否や、山奥で一人きりにさせられた。
「亡くなった母の遺言で、13歳になったら王都に向かうようにと……」
嘘ではない。私をこっちに召喚した眼鏡のお姉さんは、多分この身体の母親だ。7年護ってくれるという結界が解けたら王都に向かうように言い残して、身体ごと消滅してしまった。
結界が護ってくれるのはいいけど、閉じ込められてたとも言える。6歳の身体でいきなりサバイバル生活に放り出されたときは途方に暮れたものだ。
「そうか。アイカは、王都ヴィアナは初めてか?」
「はい……。あっ……、それで、礼儀もなにも分かってなくて、失礼があったら……」
「よいよい、気にするな」
「本当にこちら異世界のことは何も分からず……」
「ここ王都ヴィアナは、三大路の交わる交易都市だ。数え切れぬほど様々な人間が行き交う。人種も民族も宗教も、そして礼儀も、なにもかもがごちゃ混ぜな街だ。アイカが知っている礼儀を尽くしてくれれば、それで良い」
――神!
と、思わず合掌したくなるような美貌! 美少女! 至近距離では恐れ多い。もっと、距離をおいて愛でたい。物陰からそっと眺めていたい。
そこに、また美人が2人も現れた。
「クレイアか」
「はっ。アイラも連れております」
クレイアと名乗ったブラウンな銀髪の美人に、アイラと紹介された紫髪のスチームパンクな美人。異世界では、美人が美人を呼ぶルールでもあるんですか? それにしても――、
――お、おっぱい、でけぇ。
新しく現われた美人さん2人ともが、女性の私でも見惚れてしまう抜群のスタイルで、愛で甲斐ありそう。
7年の物理ぼっちサバイバル生活を経て、ようやく始まった私の異世界生活。これは、今後の展開に期待してもいい感じですか――?
逆光で輝く美少女に、名前を答えた。
これが、私にとって7年越しの異世界デビューになった。
「アイカ。怪我はないか?」
美少女は頬についた返り血を拭いながら、微笑みかけてくる。パニックな私を安心させようとしているのが、かろうじて分かった。
私が連れ込まれた土間の足元では、美少女に斬り捨てられた男が血を流して呻き声を上げている。
「殿下! 単独で動かれては困る」
と、剣を構えて飛び込んできた銀髪の美少年。続いて黒髪の美人さんも入ってきた。
――そうそう、これこれ! 美少女に美少年に美人さん。異世界はこうでなくちゃね!
頭は混乱しているのに、妙に納得して何度も頷いてしまう。
「すまんすまん。こちらから悲鳴が聞こえたものでな」
と、悪びれる様子もなく笑って謝る美少女……。ん? ……殿下?
「アイカよ。私は第六騎士団を率いる、第3王女リティアである。お前を襲おうとした悪い男は私が成敗した。もう、安心してよいぞ」
次々起こる予想外の出来事に頭は混乱する一方だけど、美少女にコクコク頷いて応え、言われるままに隅っこのベンチに腰を降ろした。
第3王女と名乗った美少女も、私の横に座って肩を抱き満面の笑みを向けてくれる。
――おかしい。
美少女は、ぼっちの私が愛でる対象のはずだ。なのにガン見されてるのは私の方。私なんかに興味を持たれている。悪い男に襲われた被害者だから……?
「アイカは歳はいくつだ?」
「あ、えと……、13歳です……」
「そんな少女を襲おうとは、ろくでもない男だな」
と、リティアさんは倒れたままの悪い男を一瞥した。美少女のリティアさんも、そう歳が離れているようには見えない。
「それで、アイカはどこから来たのだ?」
「え、えっと……」
「ふふ。焦ることはない。ゆっくり教えてくれ」
至近距離で微笑む美しいお顔も気になりますが、細長い抜身の剣を下げたままの美少年と黒髪の美人さんも気になります。
想いを上手く言葉に出来ずにモジモジしている私に気付いたのか、第3王女のリティアさんが美少年と美人さんに声をかけた。
「ヤニス、クロエ。物騒なものを仕舞え。アイカが落ち着いて話せないじゃないか」
いえ、緊張してるのは剣より、お三方の美貌の方です……。と、思ったけどヤニスと呼ばれた美少年と、クロエと呼ばれた美人さんは、リティアさんの指示通りに剣を鞘に仕舞った。
すると、ヤニス少年が足下でほったらかしになってた男の人の背中を踏みつけた。うっという呻き声が土間に響く。
「ヤニスは心配性だな」
苦笑いしたリティアさんは、再び私の方に笑顔を向けた。
「あの悪い男は、我がテノリア王国の騎士だった。不心得者がアイカに怖い思いをさせてしまい、申し訳ない」
「あ……、いえいえ……」
笑みを絶やさず私の言葉を待ってくれているリティアさん。私が何者なのか話さないといけない場面なのだろうけど、なにをどこまで話せばいいのか……。
中世ヨーロッパ風の街並みを通って、この土間に連れ込まれた。
日本って言っても通じないだろうし……。
私が口籠っているうちに、ガタイのいい男の人たちが沢山入ってきて、悪い男の人を抱えて出て行った。リティアさんはなにやら指示していて、本当に偉い人なんだなあって、美しい横顔に見惚れてしまった……。
静かになった土間で、リティアさんはもう一度、私に笑顔を向けてくれた。
しょっぱなから躓きかけた私の異世界生活を救ってくれた美少女に、ちゃんと説明しないといけないと思うんだけど、長年のぼっち生活の後遺症かリティアさんたちの美貌に気圧されたか、なかなか言葉にならない。
「えっと……。山奥で一人で育ちまして……」
「ふむ……」
嘘ではない。異世界に召喚されるや否や、山奥で一人きりにさせられた。
「亡くなった母の遺言で、13歳になったら王都に向かうようにと……」
嘘ではない。私をこっちに召喚した眼鏡のお姉さんは、多分この身体の母親だ。7年護ってくれるという結界が解けたら王都に向かうように言い残して、身体ごと消滅してしまった。
結界が護ってくれるのはいいけど、閉じ込められてたとも言える。6歳の身体でいきなりサバイバル生活に放り出されたときは途方に暮れたものだ。
「そうか。アイカは、王都ヴィアナは初めてか?」
「はい……。あっ……、それで、礼儀もなにも分かってなくて、失礼があったら……」
「よいよい、気にするな」
「本当にこちら異世界のことは何も分からず……」
「ここ王都ヴィアナは、三大路の交わる交易都市だ。数え切れぬほど様々な人間が行き交う。人種も民族も宗教も、そして礼儀も、なにもかもがごちゃ混ぜな街だ。アイカが知っている礼儀を尽くしてくれれば、それで良い」
――神!
と、思わず合掌したくなるような美貌! 美少女! 至近距離では恐れ多い。もっと、距離をおいて愛でたい。物陰からそっと眺めていたい。
そこに、また美人が2人も現れた。
「クレイアか」
「はっ。アイラも連れております」
クレイアと名乗ったブラウンな銀髪の美人に、アイラと紹介された紫髪のスチームパンクな美人。異世界では、美人が美人を呼ぶルールでもあるんですか? それにしても――、
――お、おっぱい、でけぇ。
新しく現われた美人さん2人ともが、女性の私でも見惚れてしまう抜群のスタイルで、愛で甲斐ありそう。
7年の物理ぼっちサバイバル生活を経て、ようやく始まった私の異世界生活。これは、今後の展開に期待してもいい感じですか――?
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