【完結】すべてを妹に奪われたら、第2皇子から手順を踏んで溺愛されてました。【番外編完結】

三矢さくら

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番外編

ベアトリス・エスコバルの交遊録⑦

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マダレナとアルフォンソ殿下のデスロード――6日ぶっ通しの愛の告白の間に、フェデリコ様と話し合いました。


「……やはり、ロレーナ殿下にはふたりそろってご報告させていただくべきでは?」

「うっ……、そうですね」


フェデリコ様は、第3皇女ロレーナ殿下の〈子飼い〉でいらっしゃいます。

ということで、マダレナの王都屋敷でロレーナ殿下にご挨拶させていだだきました。

絶賛デスロード開催中でしたが、王都屋敷なら、わたしが侍女として取り仕切っています。

わたしとフェデリコ様が一緒にいるところを、ロレーナ殿下以外には見られないように取り計らえたのです。


「お、おお~っ! そうかそうか! それはめでたい! ほお~、ベアトリスの気が強いところになぁ~。うんうん、美女に美形。ふたりはお似合いだと思うぞ?」


美しいお顔いっぱいに笑顔をひろげていただき、ロレーナ殿下から目一杯に祝福していただきました。

お礼とご挨拶を済ませ、フェデリコ様と一緒に退出しようとすると、

ロレーナ殿下がちょいちょいっと、わたしに手招きをされました。


「……な、なにか?」

「ベアトリスのお相手が、フェデリコだったとはなぁ~」

「……マダレナからお聞きになられていたのではなかったのですか?」

「いや……、身分違いの恋に悩んでいるとしか聞いてなかった」

「あ、左様でしたか……」

「……危ないところだった」


と、ロレーナ殿下は眉をしかめて、苦笑いされています。


「え?」

「女嫌いだと思っていたからこそ、マダレナのそばに置いても大丈夫だと……」

「あ」

「フェデリコが、気の強いマダレナに惚れていたら、面倒なことになるところだった……」

「ほ、ほんとですわね……」

「……あと、フェデリコと婚約しているベアトリスに言うことでもないのだが」

「い、いえ、お気遣いなく……。わたしはマダレナの侍女ですから」

「……美形のフェデリコに、マダレナがコロッといってたらと思うと、……ゾッとするな」

「え、ええ……。それはそうでございますわね……」

「アルフォンソ兄上に申し開きできないことになるところだった……。礼を言うぞ、ベアトリス」

「え? ……礼?」

「よくぞ、フェデリコを口説き落としてくれた!」

「あ……、ありがとう……ございます?」

「この恩は忘れない! そうだ、ベアトリス。そなたに、私との友だち付き合いを許す!」

「……え? ……ええっ!?」


わたしが生まれて初めて、きれいな〈二度見〉をした瞬間でした。


「私のことはロレーナと呼んでくれ!」

「い……、いや……、それはさすがに……」

「なんだ? マダレナとは友だち付き合いできるのに、私とじゃダメなのか?」


さすがにその理屈はないだろうと、押し問答になってしまいましたが、

ふたりきりのときだけ「ロレーナ」とお呼びするということで、押し切られてしまいました。


「よろしく頼むぞ、ベアトリス!」

「は、はい……。えっと……、ロレーナ」

「うむ! いい響きだ! 皇女なんて身分に生まれると、なかなか友だちなど出来んのだ」

「……殿下」

「ん~?」

「……ロ、ロレーナ」

「うむ! 友だちとは、無理矢理つくるものではないかもしれんが、ベアトリスが付き合ってくれて嬉しく思うぞ!」


無理矢理という自覚はおありのようです。

これでわたしも、完全に観念してしまいました。


「しかも、秘めたる友情とは、ますますいい! ……ベアトリスから受けた恩。私は一生、忘れぬぞ!」

「き、気にすんなよ、ロレーナ!」

「いい! とてもいい!」


それからずっと、ロレーナ殿下にはよくしていただいておりますが、


「……なんかベア。ロレーナ殿下と急に親しくなったよね?」


というマダレナには、説明のしようがありません。

まさか、


――マダレナとフェデリコ様が、ひっつくのを阻止したご褒美。


と言う訳にもいかず、


「あ~。わたしのお出ししたネヴィス料理が、お気に召されたみたいで~」


という、わたしの言い訳は、ロレーナ殿下にも根回しさせていただき、


「もちろん、ベアトリスの言う通りにするぞ!」

「あ、ありがとな、ロレーナ!」

「友だちの頼みだ! 当たり前ではないか!」


と、ロレーナ殿下も、なにやら楽しげにされていたので、マダレナがお招きするときの定番料理になってしまいました。

以来ずっと、ロレーナ殿下は〈ネヴィス料理好き〉ということで通してくださっています。


ま……、いっか。


と、思っています。


   Ψ


やがて、すべてが終わり、わたしたちは王都を離れました。

結局、わたしが王都にいるあいだに、姉も母も、一度もたずねて来てはくれませんでした。

調子のいい兄だけは、父が帝国伯爵に叙爵されたことで上機嫌で現われましたが、

やはり、姉からも母からも、わたしは良く思われていないのだと、すこし気持ちを重たくしていました。

こちらも良くは思っていないので、お互い様といえばその通りなのですが、わたしも身勝手なものです。


そして、マダレナとパトリシアの熾烈な最終決戦が帝都を舞台に繰り広げられ、

わたしも翻弄されましたが、ついにフェデリコ様との結婚にこぎつけます。

ですがその前に、

申し訳なさそうな表情で現われた、わたしの大切なお友だち、ルシアさんから相談を持ちかけられて、

わたしは絶句してしまうのです――。
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