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番外編
コロール・カルデロンの大冒険⑤
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「ルシアが白騎士に選ばれて、ウチの家族には帝国から充分すぎるほどの手当が支給されてなぁ……」
そう語るおじいちゃんの目は、すこし虚ろに川面を見詰めたままでした。
「偉い貴族様からも心付けが届いたりなぁ……。ウチは貧しかったから、おばあちゃんも、伯父ちゃんも有頂天になってしまって……」
「……うん」
「伯父ちゃんなんか、妹のルシアにまで偉そうにするようになって、儂もずいぶん叱ったんだけど……、自分が偉くなったと勘違いしたんだろうなぁ……」
キラキラとかがやく川面に垂れた釣り糸が、川の水が流れるまま静かに揺れています。
すこし離れたところに腰を降ろすパトリシア夫人は、空を見あげたまま微笑んで、わたしたちの話は耳に入っていないかのようでした。
「……ルシアはむかしから大人しい娘で、儂にはなにも言わなかったけど、ずいぶん恥ずかしい思いをさせてたんじゃないかなぁ……」
「どうだろうね……?」
「ははっ。……コロールも、ルシアに似て優しい娘に育ってるんだなぁ」
「……そう?」
「ルシアは、なにひとつ文句を言うことも、口ごたえもしなかった娘だけど……」
「……うん」
「白騎士になって『髪の色、なくなっちゃった』って言ったときだけは……、すごく寂しそうでなぁ……」
「……うん」
「……あの娘は、ピンクの髪が自慢だったから」
「お母さん、そうだよね。口に出しては言わないけど」
「……マダレナ陛下のおかげで髪に色がもどって、おまえが生まれたときにコロール――つまり〈色〉っていう意味の名前をつけたのも、白騎士になったときに色をなくしたのが、よほどツラかったんだと思うんだよ」
わたしが生まれた瞬間、お母さんはまず最初にわたしの髪の毛と瞳の色を確認したって、マダレナ陛下から聞かせてもらったことがあります。
ベアトリス夫人からは〈大聖女の涙〉の影響で、生まれてくる子に色がなかったらどうしようって、出産の直前まで心配してたって教えてもらいました。
「マダレナ陛下は偉い方だぁ……」
「……うん」
「あんなに身分を駆けあがられても、偉そうにされるところがちっともない。それどころか平民にも分け隔てなく、慈悲深く接してくださる……」
「……うん」
「……誰にでも、ああは出来るもんじゃないんだよ」
「……うん」
「だから、儂はいまの形がいちばんいいって思ってる」
「おじいちゃんたち、もう帝都には帰ってこないの?」
「そうだなぁ……。家族でも、離れて暮らす方がうまくいくこともあるんだよ」
「そっか……」
「はははっ。そう寂しそうな顔をしないでおくれ、コロール。ひまわり農家もやってみたら、結構楽しいもんだった。……いまに、おばあちゃんと伯父ちゃんも気が付くさ」
「……うん」
「そうしたら、年に1回くらいは会えるようにしてくれるんじゃないかな? ルシア公爵閣下も」
お魚は結局、釣れませんでした。
よく見たら、針にはエサがついていないみたいでした。
おじいちゃんはお仕事に戻って、パトリシア夫人とふたりで川べりをお散歩します。
「……パトリシア夫人も、お父様とお母様とは離れて暮らしてるんですよね?」
「そうねぇ……。私たちも色々あったから、……仕方ないわね」
カルドーゾ公爵家領でお父様と会われたときも、パトリシア夫人が言葉を交わされているところは見かけませんでした。
元旦那様のリカルド大公閣下とは冗談を言い合われるくらい仲良しなのに、不思議な気がしたものです。
「ま、私の場合は、私のせいで国がなくなっちゃったし、お父様にしてもお母様にしても、私と仲良くしてたら、ほかの元ネヴィス貴族に申し訳がたたないわよね」
「……えっ!?」
「ん? なに?」
「……ネヴィス王国がなくなったのって、パトリシア夫人のせいなんですか?」
「あら? 知らなかった? ……私がマダレナ姉様に喧嘩を売った巻き添えを喰ったのよ?」
「……そ、」
「ん?」
「……それは、除籍にもなりますねぇ」
「ははっ。そうなのよ。……除籍になって、旧ネヴィス王家に〈いなかった〉ことになったから、公には私のしでかしたこともなくなっちゃったけど、……人の記憶までは消せないからね」
「は、はい……」
「マダレナ姉様がすごいから、みんな忘れがちだけど、私も〈たいがい〉なのよ?」
「へ、へぇ~~~~」
「……私をオルキデア家の家籍に加えて嫁に出してくれて、それって私の過去も一緒に姉様が背負ってくれるってことだけど、そんなこと姉様の帝国に対する功績に比べたらちっぽけ過ぎて、誰もなにも文句ひとつ言わなかったわ」
「ふ、ふ~ん――……」
「……マダレナ姉様がすご過ぎて、あくびも出ないわね」
と、パトリシア夫人は空に向かって大きく伸びをされました。
可愛らしいお顔には、気持ち良さそうな笑顔が浮かんでいて、わたしにはなんだかとても、まぶしく見えました。
「……そっか」
「ん~?」
「私が功績をあげればいいのね? おじいちゃんたちを帝都に呼び戻せるくらい、すごい功績……」
「そうね……。他人のために頑張ろうって思えるコロールなら、出来るかもね」
とおく南西サビアまでおじいちゃんに会いに来て良かったと、このときのわたしは思っていました。
しばらく、すごい功績ってなんだろうってパトリシア夫人と話しながら歩いていると、
ひまわり畑のなかに腰を降ろして、パンを食べている男の人が2人いました。
「おおっ! コロール! 来てたんだな」
と、手を振ってくれたのは12歳年上の従兄弟、ミゲルお兄ちゃんでした。
となりに座る10歳年上のダニエルお兄ちゃんはわたしを見て、ぷいっと下を向いてしまいました。
昨夜の晩ご飯にはいなかったので、変だなと思っていたのですけど、
「……伯母様は、コロールと比べられるのがイヤだったのかもしれないわね」
と、パトリシア夫人が仰ったので、わたしもなにも聞かずにいました。
わたしが近付くと、ふたりは美味しそうなパンを食べています。
なんと、蜂蜜がたっぷりかかっていたのです――。
そう語るおじいちゃんの目は、すこし虚ろに川面を見詰めたままでした。
「偉い貴族様からも心付けが届いたりなぁ……。ウチは貧しかったから、おばあちゃんも、伯父ちゃんも有頂天になってしまって……」
「……うん」
「伯父ちゃんなんか、妹のルシアにまで偉そうにするようになって、儂もずいぶん叱ったんだけど……、自分が偉くなったと勘違いしたんだろうなぁ……」
キラキラとかがやく川面に垂れた釣り糸が、川の水が流れるまま静かに揺れています。
すこし離れたところに腰を降ろすパトリシア夫人は、空を見あげたまま微笑んで、わたしたちの話は耳に入っていないかのようでした。
「……ルシアはむかしから大人しい娘で、儂にはなにも言わなかったけど、ずいぶん恥ずかしい思いをさせてたんじゃないかなぁ……」
「どうだろうね……?」
「ははっ。……コロールも、ルシアに似て優しい娘に育ってるんだなぁ」
「……そう?」
「ルシアは、なにひとつ文句を言うことも、口ごたえもしなかった娘だけど……」
「……うん」
「白騎士になって『髪の色、なくなっちゃった』って言ったときだけは……、すごく寂しそうでなぁ……」
「……うん」
「……あの娘は、ピンクの髪が自慢だったから」
「お母さん、そうだよね。口に出しては言わないけど」
「……マダレナ陛下のおかげで髪に色がもどって、おまえが生まれたときにコロール――つまり〈色〉っていう意味の名前をつけたのも、白騎士になったときに色をなくしたのが、よほどツラかったんだと思うんだよ」
わたしが生まれた瞬間、お母さんはまず最初にわたしの髪の毛と瞳の色を確認したって、マダレナ陛下から聞かせてもらったことがあります。
ベアトリス夫人からは〈大聖女の涙〉の影響で、生まれてくる子に色がなかったらどうしようって、出産の直前まで心配してたって教えてもらいました。
「マダレナ陛下は偉い方だぁ……」
「……うん」
「あんなに身分を駆けあがられても、偉そうにされるところがちっともない。それどころか平民にも分け隔てなく、慈悲深く接してくださる……」
「……うん」
「……誰にでも、ああは出来るもんじゃないんだよ」
「……うん」
「だから、儂はいまの形がいちばんいいって思ってる」
「おじいちゃんたち、もう帝都には帰ってこないの?」
「そうだなぁ……。家族でも、離れて暮らす方がうまくいくこともあるんだよ」
「そっか……」
「はははっ。そう寂しそうな顔をしないでおくれ、コロール。ひまわり農家もやってみたら、結構楽しいもんだった。……いまに、おばあちゃんと伯父ちゃんも気が付くさ」
「……うん」
「そうしたら、年に1回くらいは会えるようにしてくれるんじゃないかな? ルシア公爵閣下も」
お魚は結局、釣れませんでした。
よく見たら、針にはエサがついていないみたいでした。
おじいちゃんはお仕事に戻って、パトリシア夫人とふたりで川べりをお散歩します。
「……パトリシア夫人も、お父様とお母様とは離れて暮らしてるんですよね?」
「そうねぇ……。私たちも色々あったから、……仕方ないわね」
カルドーゾ公爵家領でお父様と会われたときも、パトリシア夫人が言葉を交わされているところは見かけませんでした。
元旦那様のリカルド大公閣下とは冗談を言い合われるくらい仲良しなのに、不思議な気がしたものです。
「ま、私の場合は、私のせいで国がなくなっちゃったし、お父様にしてもお母様にしても、私と仲良くしてたら、ほかの元ネヴィス貴族に申し訳がたたないわよね」
「……えっ!?」
「ん? なに?」
「……ネヴィス王国がなくなったのって、パトリシア夫人のせいなんですか?」
「あら? 知らなかった? ……私がマダレナ姉様に喧嘩を売った巻き添えを喰ったのよ?」
「……そ、」
「ん?」
「……それは、除籍にもなりますねぇ」
「ははっ。そうなのよ。……除籍になって、旧ネヴィス王家に〈いなかった〉ことになったから、公には私のしでかしたこともなくなっちゃったけど、……人の記憶までは消せないからね」
「は、はい……」
「マダレナ姉様がすごいから、みんな忘れがちだけど、私も〈たいがい〉なのよ?」
「へ、へぇ~~~~」
「……私をオルキデア家の家籍に加えて嫁に出してくれて、それって私の過去も一緒に姉様が背負ってくれるってことだけど、そんなこと姉様の帝国に対する功績に比べたらちっぽけ過ぎて、誰もなにも文句ひとつ言わなかったわ」
「ふ、ふ~ん――……」
「……マダレナ姉様がすご過ぎて、あくびも出ないわね」
と、パトリシア夫人は空に向かって大きく伸びをされました。
可愛らしいお顔には、気持ち良さそうな笑顔が浮かんでいて、わたしにはなんだかとても、まぶしく見えました。
「……そっか」
「ん~?」
「私が功績をあげればいいのね? おじいちゃんたちを帝都に呼び戻せるくらい、すごい功績……」
「そうね……。他人のために頑張ろうって思えるコロールなら、出来るかもね」
とおく南西サビアまでおじいちゃんに会いに来て良かったと、このときのわたしは思っていました。
しばらく、すごい功績ってなんだろうってパトリシア夫人と話しながら歩いていると、
ひまわり畑のなかに腰を降ろして、パンを食べている男の人が2人いました。
「おおっ! コロール! 来てたんだな」
と、手を振ってくれたのは12歳年上の従兄弟、ミゲルお兄ちゃんでした。
となりに座る10歳年上のダニエルお兄ちゃんはわたしを見て、ぷいっと下を向いてしまいました。
昨夜の晩ご飯にはいなかったので、変だなと思っていたのですけど、
「……伯母様は、コロールと比べられるのがイヤだったのかもしれないわね」
と、パトリシア夫人が仰ったので、わたしもなにも聞かずにいました。
わたしが近付くと、ふたりは美味しそうなパンを食べています。
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