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第二部

56.円舞曲のステップを華麗に踏んだ

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第1皇子宮殿でひらかれた舞踏会では、思わぬ再会もあった。


「もう、マダレナぁ! 帝都に昇ったら、絶対、会いに来てねって言ったのにぃ~~~っ!!」

「パウラ様! ……ご無沙汰しており、申し訳ございませんでした」

「ふふん。ブルーのドレス、素敵ね。凛々しいあなたに可愛らしく、よく似合ってるわよ」

「ありがとうございます!」


わたしたちの〈カワイイ〉の師匠パウラ様から褒められると、やはりじんわり嬉しい。

パウラ様はそっと口元を扇で隠し、声をひそめられた。


「だけど、ウチのサンチェス侯爵家ってば〈辺境伯派〉なのよねぇ……」

「ええ……」

「なんだ、知ってたの? それで会いに来るのを遠慮してくれてたの?」

「まあ……、そんなところですわ」

「バカね、私は気にしないのに。アルフォンソ殿下との話、私にも聞かせなさいよ? 根掘り葉掘り聞くから今度、あなたの邸宅に遊びに行くわよ?」

「えっ? それは、ぜひ。ベアトリスもフリアも喜びますわ」


ヒソヒソと会話を交わした短い時間、帝都の情報を教えていただいたり、お願いごとをしたりと、旧交を温めることが出来た。

ただ、パウラ様は無頓着なようだけど、舞踏会に参加しているご令嬢はもちろん、貴族にいたるまで〈辺境伯派〉でない方はいらっしゃらない。

学都でひらいたお茶会にご参加くださったご令嬢も、半数ほどしか顔が見られない。


――決起集会にでもするつもりだった勢いね。


わたしをなびかせ、アルフォンソ殿下からわたしの〈学才〉を奪ったことを宣言する場にでもしたかったのか――、


「……招かれてもいない私が一緒に押しかけては、かえってマダレナの格を落としてしまうからの。……ひとりで大丈夫か? マダレナ」


と、エレオノラ太公閣下に見守られながら入った第1皇子宮殿は、見事に〈辺境伯派〉で埋め尽くされている。

最初にダンスをご一緒した、フェリペ殿下からは鼻高々に自慢された。


「どうだ、マダレナ。これだけ多くの群臣が、俺を支持してくれているのだぞ?」

「……素晴らしいことですわね」


フェリペ殿下の、白騎士様を蔑む本性を目にしてからは、ダンスどころか話しをするのも本当はイヤだ。


――だけど、いずれはアルフォンソ殿下を皇太子に押し上げて、ギャフンと言わせてやるんだから……。


口から言葉にして出せば、いまは虚しいだけだ。

心の中だけでつよく思うことにして、微笑みを絶やさない。


「強く逞しく、帝政を改革するその一翼を担う覚悟は、まだつかぬか? マダレナ」

「もちろん、第2皇子妃として帝政に尽くす覚悟にございますわ」

「……バカな女だ」

「ふふっ。そうなんです、わたしバカなんですよ。学問バカ。よくご存知ですね。さすが第1皇子殿下ですわ」


フェリペ殿下は、チラッとパトリシアを見た。

だけど、わたしの視線を誘導し、存在を匂わせるばかりで、言葉にして口に出すことはされない。

ここで白黒つけてしまえば、アルフォンソ殿下追い落としの手札を失うと考えていることは、あからさまに解った。

わたしの方としても、こんなチンケな場でパトリシアを断罪したところで、なんの役にも立たない。

すべての状況をひっくり返してみせるには、舞台が小さいし、機も熟していない。


奇妙な――しかし、貴族らしい――真空地帯で、みなが微笑を浮かべて円舞曲のステップを踏む。


第1皇子妃イサベラ妃殿下は、すみれ色の髪を揺らし、抜けるような白い肌に、とびきりの笑顔を浮かべて、わたしをもてなしてくださる。


「……私、マダレナ閣下とでしたら、フェリペ殿下の愛を分かち合えましてよ?」


これほど可憐で美しく、そして醜悪な笑顔をわたしは見たことがない。

父親は侯爵とはいえ、元は辺境伯家の家宰に過ぎない。

先代辺境伯閣下がご健在であれば、外戚として影響力も持ち得ただろう。

しかし、辺境伯家自体が傀儡の若き当主を戴いているようでは、話しにならない。

フェリペ殿下の寵愛を繋ぎ止めるため、妃殿下自らなりふり構わず、夫がほかの女性を口説く手伝いをする。


――これが汚濁でなくて、なんなの!?


美しい妃殿下が向ける醜悪な笑みに、吐き気さえ覚えた。


「あら、イサベラ妃殿下。せっかくのお話――、でもごさいませんが、わたしの方がアルフォンソ殿下の愛で、すっかり満たされておりますの」

「ま、まあっ……」

「ふふっ。ほかの方の愛だの思惑だのが入り込む、隙間もございませんわ」

「……そ、そうですか。お羨ましいこと」

「たとえ、アルフォンソ殿下の身になにが起きようとも、わたしの愛が尽きることもございませんわ」

「……ア、アルフォンソ殿下の先行きを思えば、……お、惜しいことですわね」

「それは、わたしの決めることですわ、妃殿下」


と、わたしがニッコリ微笑んで見せたとき、

会場の入口から、どよめきが起きた。

微笑を浮かべたまま顔を向けると、どよめきは会場の全体に広がり続けている。

そして、姿を見せられたのは――、


「やあやあ、フェリペ兄上! イサベラ義姉上! お招きに預かり光栄にございます!」

「う、うむ……。もう、外出が許されておったのか……」

「はははっ。だから、お招きくださったのでしょう? 外出も許されぬ憐れな妹に、あてつけのように招待状を出されるような兄上でも義姉上でも、ございますまい!!」


満面のドヤ顔で胸を張ったのは、第3皇女ロレーナ殿下であられた。

金環から10本の剣がのびる太陽皇家の紋章が輝く騎士服姿で、ご夫妻に恭しく拝礼を捧げられる。


「おおっ! これはこれは、英雄にして才媛! 白騎士の心をも魅了して止まない大器! カルドーゾ新公爵マダレナ閣下ではございませんか!!」

「うふふ。ご無沙汰しております、ロレーナ殿下」


――白騎士の心を魅了して止まない。


この言葉が、出席者の間に〈まだら〉なざわめきを生んだ。


――誰が、アルフォンソ殿下とロレーナ殿下を陥れた謀略を知っていて、誰が知らないのか、一瞬であぶり出されたわね……。さすがのご手腕……。


と、内心では感服しながら、ロレーナ殿下に拝礼を捧げる。


「このマダレナ・オルキデア。第3皇女ロレーナ殿下の代理人を務めさせていただいたご恩を、片時も忘れたことはございません」

「はははははっ。うむ、私の方こそ、マダレナが立派に務めを果たしてくれたこと、忘れたことはないぞ! マダレナはわが誇りである!」


よくよく考えてみた結果、


――〈第2皇后派〉も〈辺境伯派〉も知らん!!!!


という、わたしに相応しい結論に達していた。

強いて言うなら、わたしはアルフォンソ殿下派だ。


ただし――、


まだ幼さ残る白騎士候補の少女たちを、侮蔑の視線で射たフェリペ殿下のことは、

どうしても許せない。


「それでは英雄にして才媛のマダレナ閣下。私ロレーナめと一曲、踊ってくださいますか?」

「ええ、喜んで」

「うむ!」

「……、えっ!?」

「なんだ?」

「……だ、男性パートを踊られますの?」

「そりゃ……、この格好で女性パートを踊ったら変だろう?」

「そ、そうですわね。失礼いたしました」

「ん? どうした? 変な顔をして」

「いえ。ひとつ疑問が解けた〈学問バカ〉の顔ですわ。お気になさらず」


円舞曲の演奏が始まり、〈辺境伯派〉だけが埋め尽くす会場で、第2皇后エレナ陛下の長女ロレーナ殿下と踊る。

なかなかに爽快な気分だった。

にこやかに微笑まれたロレーナ殿下と、華麗にステップを踏みながら言葉を交わす。


「……すまん、マダレナ。すっかりパトリシアにやられてしまった」

「いえ、こちらこそ、大変申し訳なく」

「舞踏会の招待状が届いたからには、フェリペ兄上は私の潔白を信じておられる! ……と強弁し、ようやく取り調べを終わらせてきたところだ」

「さすがにございますわ」

「……アルフォンソ兄上の取り調べは、まだ続いている。が……、進めば進むほどに、嫌疑を完全に晴らすのが難しいところを狙い撃ちに、極上の嘘と曲解が置いてある」

「はい……」

「〈辺境伯派〉としても、巻き返す最後のチャンスだ。総力を挙げてかかってきている」

「はい……」

「ルイス大叔父上も頑張ってくれているが、状況は厳しい」

「……月並みな聞き方で申し訳ありませんが、……どうなりそうですか?」

「嫌疑は晴れぬ。が、確定も出来ん。……私もアルフォンソ兄上も〈怪しい〉というところに留め置かれ、ほとぼりが冷めるまで数年の巡察に出されよう」

「……数年の巡察」

「すまん……、兄上を護り切れなんだ。そなたの叙爵式には出席を許されようが、ふたりの結婚式は遅れることになろう……」

「その間に、フェリペ殿下を皇太子に就ける……、という目論見にごさいますね?」

「その通りだ」

「……畏まりました。わたしも覚悟を決めます」

「……イシス陛下から、皇宮書庫の鍵を預けられたらしいな?」

「はい。わたしの最後の砦、わたしの最前線にごさいます」

「……次の新月の晩、皇宮書庫で待て」

「えっ?」

「アルフォンソ兄上を行かせる。方法は聞くな」

「は、はい……」


というところで、演奏が終わった。

笑顔を振りまいて回るロレーナ殿下に、鼻白む〈辺境伯派〉の貴族たち。

フェリペ殿下も憮然とし始めた。


――そもそもの胆力が、ロレーナ殿下とは段違いね。


精悍なお顔立ちは、宝の持ち腐れだ。

そして、礼容に叶う微笑を保っていたのは、ひとりパトリシアだけだった。

心の内はどうあれ、わたしの着る青いドレスにも反応を見せなかった。


――そんな成長、しなくて良かったのよ?


と、内心で眉をしかめながら、白けた雰囲気で終わった舞踏会をあとにした。


目論見が外れたからといって、場を白けさせるなど、とるべき礼容に叶いませんことよ?


   Ψ


満月の晩の舞踏会を終え、

わたしはただひたすら、月が欠けていくのを心待ちにした。


――月が完全に姿を隠したら、アルフォンソ殿下にお会いできる……。


これまで、月を見上げて「はやく欠けろ」と、願ったことなどなかった。

太陽の昇っている間は皇宮書庫に籠り、今すべきことに没頭した。

フェリペ殿下は、もう姿を見せない。

願ったり叶ったりだ。

夜には、日に日にほそくなっていく月を見ては、わたしの胸がふくらんでいく。

比喩として。


昼間、薄暗い部屋でランプを灯し、手元に広げた古文書とにらめっこしていると、

ふわっと、いい香りがした。

陽の光をいっぱいに浴びて育ったような、ネロリの香り。

ふと、古文書から太古の香りが漂ってきたのかと錯覚してしまったけど――、


「……神学、であるか?」


と、わたしに声をかけられたのは、

頭の全体を帽子状に編んだヴェールで覆われ、その奥でラピスラズリのように深い青色の瞳を輝かせる、


第2皇后エレナ・デ・ラ・ソレイユ陛下。


思わず息を呑むような、白騎士様より白いのではないかと思ってしまう、透明感のあるお肌。

ヴェールの奥に潜む、プラチナブロンドの美しくながい髪。

太陽皇帝イグナシオ陛下のご寵愛を一身に受ける、

アルフォンソ殿下の母君が、謹厳な雰囲気を漂わせ、静かに立たれていた。


「そなたが、マダレナか?」

「は、はい。お初にお目に……」

「よいよい。……ちと、話しがしたいが、良いかの?」


と、エレナ陛下は自らの手でガラス扉を開けられ、外の広々としたテラスへと、わたしを誘われた――。
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