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3.可愛らしい顔に生まれていたら
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急激な運命の変転に打ちひしがれるわたしを、ベアトリスがピクニックに誘ってくれた。
カルドーゾ侯爵家の王都屋敷には、わたしがどこに出かけようと気にする者はいなくなった。
わたし付きだったメイドまで皆、日中はパトリシアの結婚準備に駆り出されている。
「姉様とジョアンの結婚が、こんなことになるだなんて……、わたし、思いもしなくて……」
と、涙声で顔を伏せたパトリシア。
だけど、その口元が緩んでいるのが、目に入ってしまった。
あるいは、お父様とお母様には気付かれないよう、わたしにだけ見せつけてきたのかもしれない。
ベアトリスの言う通り、パトリシアはわたしの結婚を壊すために第2王子リカルド殿下との婚約をぶつけてきたのだと、確信させられる笑みだった。
「もう少し先でも、もう少し前でも、マダレナの結婚に角が立つことはなかったのに、あの娘……」
と、ベアトリスが唇を噛んでくれた。
わたしに懐いて、いつも「お姉様、お姉様」と追い駆けてきたパトリシア。
いつの間に、こんな怨みを買っていたのか、わたしにはまったく覚えがない。
だけど、わたしが最も打撃を受けたのはパトリシアの仕打ちではない。
父君のメンデス伯爵と一緒に婚約破棄を申し入れに来た、ジョアンから向けられた冷たい視線に、
わたしの心は、打ちのめされた。
すこし頼りなさを感じるほどに、いつもヘラヘラと笑っていたジョアン。
「マダレナ殿がカルドーゾ侯爵家を継承できるという前提が変わった以上、ふたりの結婚を考え直させてほしい」
と、丁重な姿勢でお父様に申し入れされるメンデス伯爵に対し、ジョアンは最初、わたしの方を見ようともしなかった。
幼い頃から、パトリシアと3人でよく遊んだジョアン。
――その笑顔のすべては、わたしではなくカルドーゾ侯爵家の地位と領地と財産に向けられていたのだ。
と、自分の17年の人生がすべて、音を立てて崩れていくような感覚がした。
――いや、本当はジョアンもパトリシアのことが好きだったのかもしれない。
だとすると、継承権を持つ長女だから、仕方なくわたしを選んだのだろう。
席を立つ前、父君のメンデス伯爵に促され、わたしに頭をさげたジョアンの冷たい視線が、すべてを物語っていた。
まるで、わたしに騙されたとでも言わんばかりの蔑みを含んだ表情。
思い返すだに、
「ははっ……」
と、乾いた笑いが漏れるばかりで、涙も出ない。
わたしの結婚準備はすべて封印され、お母様はパトリシアの結婚準備に夢中。
「ほらね。女が学問なんかしてもいいことないのよ? 母の言ったとおりでしょ?」
とでも言わんばかりに、わたしには憐みの視線を向けてくる。
その母の教えを忠実に守り、わたしにも可愛らしく懐いていた妹が、実は競争相手であったと気付いたのは、
将来をすべて奪われた後だったのだ。
「……まぬけな話よね」
初夏の若葉が目に映える、小川のせせらぎを聞きながら、ポツリと呟いた。
ベアトリスは柔らかな微笑みを浮かべたまま、お茶を淹れてくれた。
「どうする?」
「……えっ?」
「マダレナも、完全に自由の身になったじゃない?」
「ふふ、自由か。本当ね……」
「せっかくだし、帝国の学都に留学でもさせてもらえば?」
「ええ~っ?」
「マダレナってば、王立学院を首席卒業した才媛じゃない? カルドーゾ侯爵も、そのくらいのおカネは出して下さると思うんだけど?」
「……首席といっても、しょせんは王国の子女が通う王立学院の首席よ?帝国の俊英が集う学都で、わたしなんかが通用するはずないじゃない」
「でも、第2皇子殿下から直々にお褒めの言葉をいただいたでしょ?」
「そりゃ、嬉しくて晴れがましかったけど……」
「でしょ?」
「あんなの殿下の気まぐれか、大叔母にあたる王太后陛下に気を遣われただけよ」
「……おなじ第2でも〈皇子〉と〈王子〉じゃ、天と地ほど違うのよ?」
「そうね。……でも、それは口には出さない方がいいと思うわ」
「第2皇子殿下のお声がかりがあったとなれば、学都に行っても無碍にはされないんじゃない?」
「そんなに甘くないわよ」
と、思わず鼻で笑ってしまった。
――学都サピエンティア。
広大な版図を誇る太陽帝国の各地から、選りすぐりの俊英が集う学究都市。
帝国の秩序をまもる身分制度の枠外に置かれ、大賢者様を頂点とした、才能と実力だけで序列が決まる自由都市でもある。
我がネヴィス王国から留学が認められた者は、王国史を遡っても数えるほどしかいない。
憧れはあるけど、わたしごときが望めるような気安い場所ではない。
「あーあ。マダレナにはその気なしかぁ~」
「そりゃそうよ。学都サピエンティアと言えば、太陽帝国の頭脳よ? 属国の貴族令嬢なんかが、留学させてもらえる訳ないでしょ?」
「わたしも侍女役で連れて行ってもらおうと思ってたのになぁ~」
「……それって、ベアが観光したかっただけなんじゃない?」
「あはっ。バレたか」
「もう……」
「まあ、私だってさ、貧乏伯爵家の次女にマトモな縁談なんか来るはずないし、良くて箔を付けたい豪商のバカ息子か、カネで爵位を買った成り上がり男爵ってところでしょ?」
「う、うん……」
「もう少し可愛らしい顔に生まれてたら別の人生があったかもしれないけど、せめて若いうちに楽しめることは楽しんでおきたいのよ」
「ふふっ。ベアはいつも前向きね」
「あら、いつも前向きなのはマダレナの方よ? ……だからさ、たまには後ろを向くのもいいんじゃない?」
「そうね……。ありがとう、ベア」
と、あたたかいお茶に口をつけた。
馬鹿話をして、わたしの気を紛らわせようとしてくれるベアトリス。
いまは下を向いてるわたしが、いずれ顔を上げ前を向くと信じてくれてることが、柔らかく伝わってくる。
だけど、無理に顔を上げさせようともせず、優しく微笑んでさりげなく横にいてくれる。
地位でも財産でもなく、わたし自身を見てくれていたのは、結局、この〈キツい顔美人仲間〉のベアトリスだけだったのだ――。
Ψ
ベアトリスの優しさに、涙を見せずに済んだと胸を撫で下ろしながら屋敷への帰路に就く。
わたしを励まそうとするベアトリスに、これ以上の心配をかけたくない。
帰りの馬車のなかでも、馬鹿話に花を咲かせ、笑顔で別れることができた。
だけど、ベアトリスを見送ったあと、屋敷の様子がおかしいことに気が付いた。
――妙に静かね……?
パトリシアの結婚準備で、華やかな慌ただしさに包まれていたカルドーゾ侯爵家の王都屋敷が、ひっそりと静まり返っている。
扉の外にまで滲み出るような、不穏な緊張感さえ漂って見えた。
――パトリシアの結婚に何かあった?
と、不吉な予感を頭によぎらせたわたしは、
こんなことになっても、パトリシアを可愛い妹だと思いたい自分に気が付いた。
心のどこかで、
――妹の幸せを祝福できないようでは、もっと惨めになってしまう。
と、考えているのかもしれなかった。
わたしの姿に目を大きく見開いたメイド長が、帰邸を知らせに走ると、
お父様、お母様、パトリシアの3人が慌てた様子で駆けてきた。
「ただいま戻りました……」
「マ、マダレナ……!」
わたしの挨拶を、お父様が狼狽えた声で遮る。
お母様は眉間にしわを寄せ、
パトリシアは訝しむような視線で、わたしを睨んでいた。
「はい……。なんでしょう、お父様?」
「お、お前に、王太后陛下から召喚状が届いたのだ!」
「ええっ!?」
国王陛下の母君であられる王太后陛下。
宗主国である太陽帝国から輿入れされ、我がネヴィス王国における事実上の最高権力者と言っていい存在。
王立学院の卒業式など、公式の場でお目にかかることはあっても、
侯爵家の令嬢が個別に呼び出されるとは、前代未聞だ。
「なにか覚えはあるか!?」
「いえ……、なにも……」
「ちょっと、マダレナ姉様!?」
と、パトリシアがわたしを咎めるような声を突き刺してきた。
「……なに? パトリシア」
「わたしとリカルド殿下の結婚に障るようなことでは、ないのでしょうね!?」
「……そ、そんなことはしてないと思うのだけど」
初めて聞くパトリシアの敵意に満ちた声。
おおきな紫色の瞳は、わたしに対する警戒感で溢れている。
――そうか……。パトリシアは、わたしに対して、こんな想いを抱いて生きてきたのか……。
と、痛烈に思い知らされた。
まだ何か言おうとするパトリシアを、お父様が遮った。
「と、とにかく、王太后陛下をお待たせする訳にはいかん。マダレナ、すぐに正装に着替えて、陛下のもとに向かいなさい」
「かしこまりました……」
ここのところはパトリシアの結婚準備にかかり切りだったメイドたちが、緊張した面持ちで、わたしを着替えさせる。
メイドたちは儀礼を入念に確認しながら、格式にあったドレスを慎重に着せてゆく。
着衣のわずかな乱れであっても、王太后陛下に対して礼を失することになりかねないのだ。
万一、王太后陛下に無礼があれば、わたしだけの問題では済まされない。
パトリシアが警戒するのも当然と言えた。
――だけど、なんのご用か見当もつかないわ……。
眉間に深いしわを刻んだままのお母様が、身支度を最終確認してくださり、
わたしは急遽、馬車に飛び乗った――。
カルドーゾ侯爵家の王都屋敷には、わたしがどこに出かけようと気にする者はいなくなった。
わたし付きだったメイドまで皆、日中はパトリシアの結婚準備に駆り出されている。
「姉様とジョアンの結婚が、こんなことになるだなんて……、わたし、思いもしなくて……」
と、涙声で顔を伏せたパトリシア。
だけど、その口元が緩んでいるのが、目に入ってしまった。
あるいは、お父様とお母様には気付かれないよう、わたしにだけ見せつけてきたのかもしれない。
ベアトリスの言う通り、パトリシアはわたしの結婚を壊すために第2王子リカルド殿下との婚約をぶつけてきたのだと、確信させられる笑みだった。
「もう少し先でも、もう少し前でも、マダレナの結婚に角が立つことはなかったのに、あの娘……」
と、ベアトリスが唇を噛んでくれた。
わたしに懐いて、いつも「お姉様、お姉様」と追い駆けてきたパトリシア。
いつの間に、こんな怨みを買っていたのか、わたしにはまったく覚えがない。
だけど、わたしが最も打撃を受けたのはパトリシアの仕打ちではない。
父君のメンデス伯爵と一緒に婚約破棄を申し入れに来た、ジョアンから向けられた冷たい視線に、
わたしの心は、打ちのめされた。
すこし頼りなさを感じるほどに、いつもヘラヘラと笑っていたジョアン。
「マダレナ殿がカルドーゾ侯爵家を継承できるという前提が変わった以上、ふたりの結婚を考え直させてほしい」
と、丁重な姿勢でお父様に申し入れされるメンデス伯爵に対し、ジョアンは最初、わたしの方を見ようともしなかった。
幼い頃から、パトリシアと3人でよく遊んだジョアン。
――その笑顔のすべては、わたしではなくカルドーゾ侯爵家の地位と領地と財産に向けられていたのだ。
と、自分の17年の人生がすべて、音を立てて崩れていくような感覚がした。
――いや、本当はジョアンもパトリシアのことが好きだったのかもしれない。
だとすると、継承権を持つ長女だから、仕方なくわたしを選んだのだろう。
席を立つ前、父君のメンデス伯爵に促され、わたしに頭をさげたジョアンの冷たい視線が、すべてを物語っていた。
まるで、わたしに騙されたとでも言わんばかりの蔑みを含んだ表情。
思い返すだに、
「ははっ……」
と、乾いた笑いが漏れるばかりで、涙も出ない。
わたしの結婚準備はすべて封印され、お母様はパトリシアの結婚準備に夢中。
「ほらね。女が学問なんかしてもいいことないのよ? 母の言ったとおりでしょ?」
とでも言わんばかりに、わたしには憐みの視線を向けてくる。
その母の教えを忠実に守り、わたしにも可愛らしく懐いていた妹が、実は競争相手であったと気付いたのは、
将来をすべて奪われた後だったのだ。
「……まぬけな話よね」
初夏の若葉が目に映える、小川のせせらぎを聞きながら、ポツリと呟いた。
ベアトリスは柔らかな微笑みを浮かべたまま、お茶を淹れてくれた。
「どうする?」
「……えっ?」
「マダレナも、完全に自由の身になったじゃない?」
「ふふ、自由か。本当ね……」
「せっかくだし、帝国の学都に留学でもさせてもらえば?」
「ええ~っ?」
「マダレナってば、王立学院を首席卒業した才媛じゃない? カルドーゾ侯爵も、そのくらいのおカネは出して下さると思うんだけど?」
「……首席といっても、しょせんは王国の子女が通う王立学院の首席よ?帝国の俊英が集う学都で、わたしなんかが通用するはずないじゃない」
「でも、第2皇子殿下から直々にお褒めの言葉をいただいたでしょ?」
「そりゃ、嬉しくて晴れがましかったけど……」
「でしょ?」
「あんなの殿下の気まぐれか、大叔母にあたる王太后陛下に気を遣われただけよ」
「……おなじ第2でも〈皇子〉と〈王子〉じゃ、天と地ほど違うのよ?」
「そうね。……でも、それは口には出さない方がいいと思うわ」
「第2皇子殿下のお声がかりがあったとなれば、学都に行っても無碍にはされないんじゃない?」
「そんなに甘くないわよ」
と、思わず鼻で笑ってしまった。
――学都サピエンティア。
広大な版図を誇る太陽帝国の各地から、選りすぐりの俊英が集う学究都市。
帝国の秩序をまもる身分制度の枠外に置かれ、大賢者様を頂点とした、才能と実力だけで序列が決まる自由都市でもある。
我がネヴィス王国から留学が認められた者は、王国史を遡っても数えるほどしかいない。
憧れはあるけど、わたしごときが望めるような気安い場所ではない。
「あーあ。マダレナにはその気なしかぁ~」
「そりゃそうよ。学都サピエンティアと言えば、太陽帝国の頭脳よ? 属国の貴族令嬢なんかが、留学させてもらえる訳ないでしょ?」
「わたしも侍女役で連れて行ってもらおうと思ってたのになぁ~」
「……それって、ベアが観光したかっただけなんじゃない?」
「あはっ。バレたか」
「もう……」
「まあ、私だってさ、貧乏伯爵家の次女にマトモな縁談なんか来るはずないし、良くて箔を付けたい豪商のバカ息子か、カネで爵位を買った成り上がり男爵ってところでしょ?」
「う、うん……」
「もう少し可愛らしい顔に生まれてたら別の人生があったかもしれないけど、せめて若いうちに楽しめることは楽しんでおきたいのよ」
「ふふっ。ベアはいつも前向きね」
「あら、いつも前向きなのはマダレナの方よ? ……だからさ、たまには後ろを向くのもいいんじゃない?」
「そうね……。ありがとう、ベア」
と、あたたかいお茶に口をつけた。
馬鹿話をして、わたしの気を紛らわせようとしてくれるベアトリス。
いまは下を向いてるわたしが、いずれ顔を上げ前を向くと信じてくれてることが、柔らかく伝わってくる。
だけど、無理に顔を上げさせようともせず、優しく微笑んでさりげなく横にいてくれる。
地位でも財産でもなく、わたし自身を見てくれていたのは、結局、この〈キツい顔美人仲間〉のベアトリスだけだったのだ――。
Ψ
ベアトリスの優しさに、涙を見せずに済んだと胸を撫で下ろしながら屋敷への帰路に就く。
わたしを励まそうとするベアトリスに、これ以上の心配をかけたくない。
帰りの馬車のなかでも、馬鹿話に花を咲かせ、笑顔で別れることができた。
だけど、ベアトリスを見送ったあと、屋敷の様子がおかしいことに気が付いた。
――妙に静かね……?
パトリシアの結婚準備で、華やかな慌ただしさに包まれていたカルドーゾ侯爵家の王都屋敷が、ひっそりと静まり返っている。
扉の外にまで滲み出るような、不穏な緊張感さえ漂って見えた。
――パトリシアの結婚に何かあった?
と、不吉な予感を頭によぎらせたわたしは、
こんなことになっても、パトリシアを可愛い妹だと思いたい自分に気が付いた。
心のどこかで、
――妹の幸せを祝福できないようでは、もっと惨めになってしまう。
と、考えているのかもしれなかった。
わたしの姿に目を大きく見開いたメイド長が、帰邸を知らせに走ると、
お父様、お母様、パトリシアの3人が慌てた様子で駆けてきた。
「ただいま戻りました……」
「マ、マダレナ……!」
わたしの挨拶を、お父様が狼狽えた声で遮る。
お母様は眉間にしわを寄せ、
パトリシアは訝しむような視線で、わたしを睨んでいた。
「はい……。なんでしょう、お父様?」
「お、お前に、王太后陛下から召喚状が届いたのだ!」
「ええっ!?」
国王陛下の母君であられる王太后陛下。
宗主国である太陽帝国から輿入れされ、我がネヴィス王国における事実上の最高権力者と言っていい存在。
王立学院の卒業式など、公式の場でお目にかかることはあっても、
侯爵家の令嬢が個別に呼び出されるとは、前代未聞だ。
「なにか覚えはあるか!?」
「いえ……、なにも……」
「ちょっと、マダレナ姉様!?」
と、パトリシアがわたしを咎めるような声を突き刺してきた。
「……なに? パトリシア」
「わたしとリカルド殿下の結婚に障るようなことでは、ないのでしょうね!?」
「……そ、そんなことはしてないと思うのだけど」
初めて聞くパトリシアの敵意に満ちた声。
おおきな紫色の瞳は、わたしに対する警戒感で溢れている。
――そうか……。パトリシアは、わたしに対して、こんな想いを抱いて生きてきたのか……。
と、痛烈に思い知らされた。
まだ何か言おうとするパトリシアを、お父様が遮った。
「と、とにかく、王太后陛下をお待たせする訳にはいかん。マダレナ、すぐに正装に着替えて、陛下のもとに向かいなさい」
「かしこまりました……」
ここのところはパトリシアの結婚準備にかかり切りだったメイドたちが、緊張した面持ちで、わたしを着替えさせる。
メイドたちは儀礼を入念に確認しながら、格式にあったドレスを慎重に着せてゆく。
着衣のわずかな乱れであっても、王太后陛下に対して礼を失することになりかねないのだ。
万一、王太后陛下に無礼があれば、わたしだけの問題では済まされない。
パトリシアが警戒するのも当然と言えた。
――だけど、なんのご用か見当もつかないわ……。
眉間に深いしわを刻んだままのお母様が、身支度を最終確認してくださり、
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