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1章 実験内容もわからないまま、とりあえずは様子見を
パーティー結成の下準備と、リアルでのエッチな親睦行為 2
しおりを挟む(なんなの……ここ?)
雪菜に先導され到着しやコンビニの入り口で、戦人は硬直して冷や汗をかいていた。
外観の時点で、小洒落た都会のケーキ屋のようなコンビニにあるまじき佇まいだった。
嫌な予感がしつつも雪菜の後に着いて入店した中にあったのはーーコンビニだった。
(コンビニ……? いやいや!! でも、ぱっと見コンビニ……いやああぁ??)
PR棚にはオススメのお菓子が並べられ、右手には弁当やおにぎりの棚が。
奥に向かいパン棚を過ぎた先には、飲み物を取り扱ってるらしき棚が。
グルっと回り込む形でお菓子棚があり、入り口付近にはレジカウンターが。
フードコートのないタイプの、レジ裏に調理スペースのある比較的よく見るタイプの配列の店だ。
だがーー。
(店広!? 奥まで30mは……いや、50mは……レジ10台はあるし、何あのライブキッチン!? あの肉、ローストビーフかなんかだよね??)
際奥の飲みものコーナーは、一般的コンビニ構造の知識があるゆえそうだと把握できるだけで。実際のところ見えない。
調理スペースはシェフらしき人物が数十人体制にて。透明なガラス張りの部屋で、忙しなくビュッフェで見るようなライブ調理を行なっている。
店員は給仕服などに身を包み、デパート顔負けな丁重な接客でありながら、恐るべき速度で商品を捌いている。
天井も異常に高く、クラシック調の落ち着いた内装にシャンデリア。
商品棚上部の液晶には、各棚で取り扱う商品のプロモーション映像が流れていた。
耳に聞こえる店内放送も購買意欲を煽るタイプではなく、クラシック音楽だった。
(違う!! やっぱ、コンビニの皮被った何かだよ!! これ、絶対……)
恐る恐るプロモーション商品の値札を見る戦人。
まるで、バレンタインの時にコンビニで販売されるような限定品の小袋だった。
馴染みのコンビニであれば。プレゼント用ゆえ普通よりは高いものの、それでもチョコ四ピース程で二千円は超えなかったと記憶している。
(4980円!? おう!? コッチのはクッキーで、小袋2980円……)
今は催しがあるような季節ではない。
庶民は震えた。
天を仰ぐように面を上げれば、更に血の気が引き顔が引きつる。
(新商品の……お試し価格? 正規品は、お菓子売り場で……五個入り9800円……クッキーの方は、量は同じで種類が増えて、4980円……)
「ハハッ……」
笑うより他ない。
フラつく足取りで、逃げるように弁当•おにぎり売り場にたどり着く。
「和牛おむすび、980……シャトーブリーー1980ーー。や、安いのは……」
言葉を失いながらも、ほぼ4桁の価格帯の中に燦然と輝く白米おむすびを見つける。
一般的コンビニのソレより一回り小さなソレは480円というワンコインだった。
ブランド米だそうだ。
購入はできるものの、とても一食やおにぎり一つに使う価格ではなかった。
ダメ元でお菓子売り場なども物色するも、ワンコインで収まるのは単品の一口サイズのチョコなど。
興味はあれど、財布の紐は開けない。
「……まだ、決まらないのかしら?」
背後から少し苛立たしげに声をかけられて、ハッと振り返る。
雪菜が買い物カゴに何も商品を入れていない状態で立っていた。
「ずいぶんと目移りしているようだけれど、忙しないわね?」
自身の商品の吟味をしていない辺り、戦人がどういったモノに興味を示すかも見ていたのだろう。
(違うんです!! 興味は惹かれるけれど、それ以上にまともに買える商品を探してるんです!!)
「お菓子なんか、最後でいいでしょうに。こういう店舗は、ある程度流れで商品を買えるような作りになっているのよ?」
「まあ、お菓子は需要が高い上に種類も豊富だから、かなり間伸びしてしまっているけれど……」
雪菜が苦言を呈しながら、チラリと背後のレジに視線を向ける。
「あの方ですわよね? 転入生の男子というのはーー」
「噂で、神城さんの飼い犬になったと伺っておりましたがーー」
「随分と冴えない……伝統ある我が校に相応しくーー」
(うわ!? メッチャ目立ってる?? うわ!? 警備の人まで居るのか!?)
食べ物系のコーナーを一周し、レジに則したお菓子売り場を物色していれば、やたら目立っていた。
令嬢達が、関心から侮蔑まで様々な感情を持って戦人の様子を伺っている。
レジに居る店員はもちろん、入り口付近には警備員まで居たようで。大人達まで戦人の様子を伺っていた。
この調子だと、私服警備員まで居るかもしれない。
「アナタはただでさえ目立つのだから……悩むなら、せめてこの場を離れなさい?」
店内で特に人集りができるレジ横から退避させようと、雪菜は戦人の肩に手を軽く置いた。
「キャー!! ゆ、雪菜様がお手を!?」
「ありえませんわ!! か、神城様が!? 男などに!!」
「神城さん、中々大胆ですわね」
令嬢達が沸いた。
「ゆ、雪菜さん、なんかーー」
「し、下の名前で呼んでますわよ、男子が!!」
「なんて無礼な!!」
雪菜のことを下の名で呼んだのを聞いた令嬢達が、更に沸いた。
(いや、雪菜さんが有名人なのは知ってたけれど……それにしても、凄い……においが……)
集まる好奇や嫉妬混じりの視線は男である戦人以上に雪菜の挙動に集まっている様子。改めて雪菜のカーストの高さを思い知る。
その上、周囲が女だらけなのを意識すれば、今更ながらむせ返るような『女の匂い』に、目眩を覚えてしまう。
男に比べ体臭に気を使うからだろう。香水やら様々な香りが混ざり合い不快感に近い感覚を起こさせる。
(中学の時なんかも、教室で女子が着替えた後は凄かったけど……それ以上だ!!)
周囲の女性達に己が匂いに不快感を持つ様子は見られない。改めて、戦人は自分が異物なのだと実感していた。
全身からイヤな汗が滲む。
「なんか? 何かしら?」
「ちょ!? なんで!?」
雪菜が肩に置いた手に力を込めたかと思えば、囁くような声音が耳元に近づいた。
同時に、むせ返るような『女』の匂いの中で。その一つでありながら芳しい香りが、戦人の鼻腔に流れてくる。
むせ返る有象無象の匂いの中で、雪菜の石鹸に混じる薔薇らしき香りは清涼感が強い一陣の風だった。
「見せつけてあげればいいじゃない♪」
そして、耳をくすぐるような蠱惑的な音色が、首筋に息を吹きかけるように囁きかけてくる。
背筋が震える。
『キャァぁぁぁ~~!!??』
絶叫だった。
令嬢達が、二人の光景に思い思いの感情を乗せて叫んでいた。
それまで、コチラに気を向けながらも澱みなくレジ業務を行っていた店員でさえ、何人かは固まっていた。
「フフ♪ 注目の的ね? じゃあ、もっとくっついたりしたら……」
雪菜は機嫌良さそうに、更に身を寄せて来る。背中は密着と言って良いほどに、雪菜にひっつかれてしまいーー。
「むッ!? ゆ、ゆきなさ……ち、近いって!!」
貧乳であろうと関係なしに、胸部の慎ましい膨らみが押しつけられる。
思わず胸の押し当てに言及しそうになりながらも言い止まったが、動揺は声の震えに出てしまう。
(あのふにふになおっぱいが!! 胸が!! リアルでもッ!!)
手にはゲーム内で揉みしだいた乳房の感触が蘇り、股間周りには加速度的に血流が巡る。
今回は背中で触れる上に服越しながら、手にはあの日の感触が蘇った。
「ヤバッ!!」
思わず前屈み気味になりながら、鞄で股間周りを隠す。
勃起してしまった。
「クス♪ 何を慌てているのかしら? 何がヤバいのか言ってごらんなさい?」
雪菜はこれみよがしに、自身の慎ましい胸を押し当ててくる。
雪菜の頬は紅潮しているように見え、まるで興奮しているようだった。
「アナタ……よく、わたくしの胸の辺りを見ているでしょう? 気づいているのよ?」
(ええ? イヤ、雪菜さん胸小さいし……どっちかと言えば、お尻や生脚の方がグッと……)
「きっと、大きいタイプのより、形の良い美乳タイプが好みなのでしょう?」
(ああ、そういえば、ゲームの中で、なんか僕褒めてた?)
ハッキリと内容まで覚えていないが、貧乳に自虐的だった雪菜の胸を褒めたのを思い出す。
実際、素晴らしい触り心地だった。
「まったく、仕方ない子ね? わたくしにその気はないというのに……意識しちゃって♪」
(痛い!! オチンチン痛い!! ベルトとかに当たって!!)
(てか、雪菜さん大胆!! 今までは、スキンシップにしても肩に手を置く程度だったのに!? 胸……意図的に!?)
(ああクソ!! 雪菜さんの胸、形は良いけど小さいから……服越しだと感覚が……しない? いや、する? この感触は、胸よりも服の……てか、痛い痛い痛い!!)
雪菜が与えてくれる刺激は好ましいが、状況が悪い。
興奮しながらも、興奮を抑えねばならぬ状況にパニックになってしまう。
その上、痛みまでともなってはなおのことだ。
「た、ただならぬ関係の様子!! まさか!?」
「こ、ここからでは会話が聞こえ……店員の方、早く会計をしてくださる!!」
圧倒的注目の集中。
半勃起ながら既に股間がパンパンに膨らむ非常事態。
先端部はズボンを突き抜けんばかりに、ベルトさえ押し上げている。
心臓の鼓動は早まり、精嚢さえも脈打っているようだった。
息は何をせずとも、深いブレスとなって吐き出され乱れる。
(け、警備の人が近づいてくる!? 悪いことしてない……明らかに僕の方を睨んで!?)
雪菜ではなく戦人を睨みながら、警備員まで近づいてくる。
「ご、ごめん!! 体調が!! さき、学校に行ってて!!」
「バトラー君!?」
戦人は、雪菜を振り解くようにすると警備員の横をすり抜けようとした。
「待ちなさい!!」
警備員が手を伸ばしながら引き留めにきた。
「何か、問題でも?」
雪菜がその警備員に声をかけると、警備員は慌てて手を引っ込めて雪菜の対応を始めた。
戦人は前屈み気味に鞄で股間を隠しながら、ヒョコヒョコと不自然な小走りで店を後に。
「……今のバトラー君の前屈みの仕方……まさか?」
そんな戦人の後ろ姿を、早々に警備員を袖にした雪菜は訝しんでいた。
ある可能性に動揺しながら、その足は戦う人の後を追って行った。
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