幸せの翼

悠月かな(ゆづきかな)

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初めての感情

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「さて…どうしたものかしら…」

私達は早速課題について話し合うために、ラフィの部屋に集まっていた。
ブランカは、頬杖をつきながら思案顔で呟いている。

「まずは、学びの場所をどうするか…じゃないかな?」
「そうだな…ラフィ。やはり…神殿の中に学びの部屋を造るか…」

神殿内に、子供達が生活をしている成長の部屋がある。
神殿に造れば、学びの部屋への移動もスムーズだ。

「ねぇ…何も屋内に拘る事はないんじゃない?」

頬杖をついていたブランカが、何事かを思い付いたようにパッと顔を輝かせ私達を見た。

「それはどういう意味だい?」

ラフィが首を傾げブランカを見つめる。

「屋外で風や光を感じながら学ぶの。素敵じゃない?」
「なるほど…それも良いかもしれないね」

ラフィは穏やかな笑顔で頷いている。

「屋外か…」

確かに、屋外なら子供達は伸び伸びと学べるだろう。
しかし、最適な場所はあるのだろうか…

「あの巨木の所はどうかしら?あそこなら広いし、風と光を感じられるわ。」

(広場の外れにある巨木の所か…なるほど、あそこなら丁度いいかもしれない…)

私が考えていると、ラフィがすぐさま賛同した。

「うん!それは素敵なアイディアだね。」
「ありがとうラフィ。」

屋外ならば、子供達の生活はどうするのか…
私は、ブランカに尋ねてみた。

「ブランカ、寝食はどうするんだ?」
「寝食…そっか…そこまで考えてなかったわ…」

ブランカは再び頬杖をつき考え始めた。

「いっそのこと、子供達が生活する建物を造ったらどうだろう?」

ラフィが思案顔で呟いた。

「一から建てるのか…なかなか大変だが、力を合わせれば出来ない事もないな…」

私はラフィとブランカを交互に見ながら答えた。

「そうね!3人で力を合わせれば出来ない事はないわ!」

ブランカが再び顔をパッと輝かせた。
表情がコロコロ変わり目が離せなくなる。
私はなぜかそんなブランカを、ずっと見ていたい衝動に駆られた。
そんな自分の感情が理解できず、困惑しながらラフィを見た。
彼は、とても優しい瞳でブランカを見つめている。
その瞬間、私の胸が締め付けられるような痛みが走った。

(この痛み…先程感じた痛みに似ている…しかも痛みが増している…)

私は自分の不可解な感情と胸の痛みに呆然とし、思わず胸を押さえた。

「サビィ?胸…どうかしたの?痛むの?」

ブランカが心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「いや!何でもない。私なら大丈夫だ!」

私は慌ててブランカから離れた。

(顔が近いではないか…)

私の胸は早鐘を打ち、自分ではどうする事もできない。

(先程は胸が痛み、今度は動悸か…私の胸はどうなってしまったのか…)

「サビィ?慌ててどうしたの?何だかサビィらしくないわよ」

ブランカは不思議そうに私を見ている。

「い…いや、何でもない」

(そんな可愛らしい顔で私を見るな…全く私の気も知らないで…)

私はそこで、はたと思った。

(ん…?待て…私の気持ち?どういう事だ…しかも、ブランカの事を私は可愛らしいと感じてた…)

私は、心に生まれた初めての感情を持て余していた。

(不可解だ…この私が理解不能とは…)

私には、今まで理解不能な事など存在しなかった。
初めての経験に、少なからずショックを受けていた。
ふと顔を上げると、ラフィと目が合った。
彼は私の顔をジッと見つめていたが、フイッと目を逸らした。

(ラフィ…?)

ラフィらしかぬ行動に私は首を傾げた。
彼は、目が合った天使には必ず笑顔を見せる。
老若男女全てにだ。

(ダメだ…今日の私はどうかしてる…一旦、落ち着かねばならない)

私は、この場から離脱する事に決めた。

「ラフィ、ブランカ、悪いが気分が優れない。寝食の場所については、明日話し合わないか?」
「サビィ…顔色も悪いみたい。大丈夫?」
「ああ…少し休めば大丈夫だ。心配はない」
「分かったわ。また明日話し合いましょう。ラフィもそれで良いわよね?」
「うん。良いよ」
「すまない。自室に戻らせてもらう」

私はそう告げると、ラフィの部屋を後にしようと扉に手をかけた。

「サビィ待って。私も戻る事にするわ。ラフィまた明日ね」
「うん。ブランカまた明日」

2人でラフィの部屋から出ると、ブランカが心配そうに問い掛ける。

「サビィ、本当に大丈夫?」
「ああ…大丈夫だ。問題ない」
「そう…それなら良いけど…サビィは、あまり自分の事や気持ちを話さないから心配だわ…たまには、私達を頼ってね」
「ああ…そうだな…ブランカ。善処しよう」
「ウフフ。何だかおかしな表現ね」

ブランカはコロコロと笑いながら私を見た。

「ブランカ。悪いが…部屋に戻らせてもらう」
「そうだったわね…引き止めてごめんなさい。ゆっくり休んでね」
「ああ…」

私は逃げるように、その場からフッと姿を消すと、一瞬で自室へと戻った。
そうでもしないと、私の胸が今にも壊れそうだったのだ。

「ハァ…私は一体どうしてしまったのだろうか…」

私は深い溜め息をつきながら、その場でしゃがみ込んだのだった。



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