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琴と小麦の出会い

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ーーー週末ーーー

琴は祖父母と共にペットショップに来ていた。

「わ~たくさん動物がいるね。」

琴は目を輝かせ店内を見回した。
シャイニーは、琴の頭を優しく撫でながらソッと囁いた。

「琴ちゃんを癒してくれる子が待ってるよ。」

琴はキョロキョロしながら歩き、お目当てのハリネズミを探した。

「え~と…ハリネズミはどこかな~あ!いた!」

ガラスケースに入ったハリネズミを見つけ、琴は駆け寄った。

「あれ?みんな寝てる…」
「あら、本当ね…琴ちゃん、ハリネズミは夜行性で昼間は寝ている事が多いみたいよ。」

祖母は、ガラスケースに貼られた説明書きを指差し言った。

「そっか…起きてる姿、見たかったな~」

残念そうに肩を落とす琴に、シャイニーは再び囁いた。

「琴ちゃん、右上の棚を見てごらん。可愛らしい子が見てるよ。」

シャイニーの声は聞こえていないが、琴はふと右上の棚が気になり目を向けた。
すると、1匹のデグーがケージに前足を掛け琴を見ている。

「あれ?この子、琴を見てるよ。」

立ち上がりケージを覗くと、デグーがアピールするかのように隙間から鼻を突き出してきた。

「僕はデグー。琴ちゃんの家に連れて行って欲しいな~」

デグーは鼻をヒクヒクさせアピールした後、回し車をカラカラと回し始めた。

「琴ちゃん、見て見て~回し車も回せるんだ。」

デグーはプラスチック製の回し車から顔を覗かせ、琴を見ながら回り続けた。

「この子、琴を見ながら回し車を回してるよ。可愛い~」
「あら、面白いわね。え~と、この子はデグーですって。昼行性だから日中は起きてるみたいね。でも、何だかネズミみたいね~」
「ばぁば、でも顔はウサギみたいだよ。ネズミじゃないよ。」
「でも…色がね。尻尾も長くてネズミみたいだし…」
「尻尾は先がフサフサしててライオンみたいだよ。」

デグーは、回し車を回しながら2人の話しを聞いていた。
祖母は、どうしてもネズミに見えるらしくためらっているようだった。

「ね!じいじ、この子がいい。いいでしょ?」
「まぁ…琴ちゃんが飼いたいと思う子が一番じゃないか?それに、このデグー半額になってるぞ。」
「あら…本当。そうね。琴ちゃんが飼いたい子が一番ね。デグーにしましょう。」
「やった~!」

琴は嬉しさのあまり、その場でピョンピョンとジャンプした。

「今日から、あなたは家族になるんだよ。」

琴は、ニコニコしながらデグーに話し掛けた。

「よし!やった!ここから出られる!」

デグーは、小さくガッツポーズをしてシャイニーを見た。

「シャイニー、ありがとう。やっとここから出られるよ。」
「良かったね。デグーくん。これから琴ちゃんをよろしくね。」

シャイニーが手を差し出すと、デグーは小さな手を人差し指に乗せ握手をした。

「もちろんだよ。僕に任せて!」

デグーが、腰に手を当て胸を反らすポーズをとっていると、店員がケージに手を入れ捕まえようとした。

「うわっ!分かったよ。分かったから、無理やり掴まないでよ。こう見えてもデリケートなんだからさ。」

デグーがプラスチックケースに入れられると、琴達は飼育に必要な物を買い揃え家に帰っていった。


家に着くと、ケージは琴の部屋に設置された。
琴はケースからデグーを出し、ケージの中にソッと入れた。
デグーは、暫くウロウロと動き回り一通り匂いを嗅ぐと巣箱の中に入っていった。

「琴ちゃん、今日はこの子をソッとしておいてあげるのよ。慣れない環境で怖がってるはずだからね。少しずつ慣らすのよ。」
「分かってるって。ばぁば。慣れたら遊べるようになるんでしょ?」
「そうね。外遊びが好きらしいから慣れたらね。名前付けてあげないとね。」
「そうだ!名前付けなきゃ。何が良いかな~可愛い名前にしたいな~」

琴は勉強机に向かうと、ノートを出して名前を考え始めた。

「名前が決まったら教えてね。」

祖父母は、ニコニコしながら琴の部屋を出て行った。

「この子は男の子だから…」

琴はブツブツ言いながら、名前の候補をノートに書き出していった。

「きなこ…あずき…女の子みたいだからダメでしょ~あんず…これも女の子みたい。小麦…そうだ!小麦にしよう!」

琴は、ケージの前に座るとデグーに話し掛けた。

「あなたの名前は小麦だよ。」

小麦は、巣箱から顔を出すと軽く首を傾げ琴を見た。

「分かる?これから小麦って呼ぶからね。」

小麦は、のそのそと巣箱から出て、琴の前まで来るとケージに前足を掛けた。

「ピー」
「あ!返事した。分かったのかな?」

一鳴きした後、小麦は牧草を食べ始めた。

「早く一緒に遊びたいな~」

小麦を見つめる琴の目はとても優しく、シャイニーはそんな琴を見て嬉しくなるのだった。

「琴ちゃん、だいぶ元気になって良かったね。このままいくと、僕が天使の国に帰る日も近いかな…」

そう考えると、シャイニーは嬉しい半面、寂しさも感じ胸がギュッと締め付けられるような感覚を覚えるのだった。

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