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ラフィの過去とクルックの子守唄

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「ふぅ~今日も色々あったな~」

シャイニーが、学びと夕食を終え部屋に戻ると、フルルが髪の中から飛び出し、部屋の中を飛び始めた。

「フルルも今日は、ちょっと怖い思いをしちゃったね。でも、ホタルは凄く綺麗だったな~」

シャイニーはベッドに寝転がると、今日の学びを思い出しながら、天蓋に映し出された星空を見ていた。

「今日も疲れたな…」

星空を眺めていたシャイニーの瞼はどんどん重くなり、いつの間にか眠りに落ちていった。


シャイニーは夢を見ていた。
夢の中でシャイニーは、変わり果てた天使の国に立ち尽くしていた。
神殿は崩れ落ち、噴水も滅茶苦茶に壊されている。
巨木もなぎ倒され、ブランコも無残にもバラバラにされていた。
果樹園ではマレンジュリの実が踏み潰され、木は折れ裂けていた。
花畑では花々が踏まれ引きちぎられ、息も絶え絶えになっていたのであった。

(なんて酷い…ここは本当に天使の国?)

シャイニーは、すっかり変わり果ててしまった天使の国を見渡した。
天使達は恐怖心から顔を歪め、何かから逃げ惑っている。
誰もがシャイニーには気付かないようで、すぐ側をすり抜けていく。

(まるで、僕の姿が見えていないみたい…)

その時、シャイニーの頭上を何かが飛んでいった。
それは、慧眼けいがんの部屋で見た悪魔の姿そのものであった。
悪魔は何人も現れ頭上を飛び、神殿へと向かっていく。
シャイニーが慌てて後を追うと、目の前に崩れ落ちた神殿が現れた。
そこにはサビィやラフィの姿があったが、2人の姿は現在とは少し違って見えた。
サビィの髪の長さは背中ほどしかなく、翼も6枚しかなかった。
ラフィは翼の数は変わらず6枚たが、髪は現在の肩の長さよりも長く腰まであった。
そして、そこにはもう1人の天使がいた。
翼が8枚あり、凛とした美しい女性の天使だ。
3人は悪魔達と向かい合っていた。
悪魔達が襲いかかると3人は、まばゆい光を放ち次々に倒していく。
しかし、いくら倒しても悪魔達は後から後からやってきた。

「キリがないわ!ラフィとサビィは子供達をお願い!ここは、私が食い止める。」
「ブランカ!君1人では無理だ!僕も残る。」
「ラフィ、大丈夫よ。私を信じて!」

ラフィが躊躇していると、サビィの声が響いた。

「ラフィ、時間がない!子供達や卵を守らなければ!」
「お願い!ラフィ、サビィ行って!」
「分かった…」

ラフィは仕方なく頷くと、後ろ髪を引かれる思いで子供達や卵がいる神殿の奥へと向かった。
ブランカは、果敢に1人で闘い続けた。
彼女の光の力は、闇の力より格段に強かったが、あまりにも悪魔の数が多く苦戦している。
しかし、深い傷を負いながらも全ての悪魔を倒すと、体を引きずりながら神殿の奥へと向かっていった。

(あんなに深い傷を負いながら、天使の国を守ったんだ…)

シャイニーは、痛みに耐えながらも前に進む勇敢なブランカの姿を見て胸が痛んだ。
神殿の奥では、サビィとラフィが悪魔達と闘っていた。
その後方では、何人もの天使が子供達や卵を必死で守っている。

「ここにも、こんなに悪魔がいるなんて…」

ブランカはフーッと一つ深呼吸をすると、熾烈な闘いの中に飛び込んだ。

「ラフィ、サビィお待たせ。」
「ブランカ!酷い傷じゃないか…君は闘わない方がいい。」
「ラフィ、大丈夫よ。子供達や卵を守らないと!」

悪魔達は容赦なく、手負いのブランカを攻撃してくる。
ラフィは、そんなブランカを守りながら闘った。

「ラフィ、私の事は気にしないで。あなたまで傷を負ってしまうわ!」
「僕が君を守らず誰が守るんだ。」

ラフィは、ブランカを背に庇い闘いながら言った。

「ラフィ…」

ブランカは、ラフィの背中にソッと頭を付け寄り添った。

「ほぉ…それが愛というものか…何と愚かで浅はかでバカバカしいものよ。そんなもの何の役にも立たん!」

その時、地の底から響き渡り、獣が吠えるような不気味な低い声が聞こえてきた。
3人が振り返ると、ひときわ大柄な悪魔が子供達や卵を守る天使達の前に立っていた。
その姿は恐ろしく、体は獣のように毛で覆われ頭には牛のようなツノが2本生えている。
目は大きく血走り絶えずギョロギョロと動いていた。
背中には真っ黒で大きな翼が生え、手や足の指には湾曲した鋭い爪が生えていた。
子供達は、その恐ろしい姿にガタガタと震えている。

「しまった!いつの間に…」

ラフィは、新たに現れた悪魔をジッと見据え、ジリジリと間合いを詰めていった。

「我が名はガーリオン!お前達の愚かでバカバカしい愛は何と滑稽なものか!その愛にうつつを抜かし、俺様に気付かなかった。愚かで浅はかな愛に感謝せねばなるまい。」

ガーリオンと名乗る悪魔はニヤリと笑い、鋭い爪が生えた手を、1人の子供の天使に向かって伸ばした。

「いけない!」

ブランカが子供の天使に覆い被さった瞬間、ガーリオンの鋭い爪がブランカの翼と背中を切り裂いた。

「ウッ!」

ブランカの白く美しい翼は無残にも折れ、背中から真っ赤な血が滴り落ちた。

「ブランカ!」

ラフィは、ブランカの元に駆け寄り抱き締めた。
ガーリオンは、自分の爪から滴り落ちるブランカの血を口に運び、毒々しい真っ赤な舌で見せつけるようにペロリと舐めた。

「ほぉ…天使長の血の味も悪くない。」

ガーリオンは、ゾッとするような笑顔を浮かべた。

「ラフィ…どいて…」
「ブランカ…?」
「天使の国を守らないと…」

ブランカは、ユラリと立ち上がりガーリオンを見据えた。

「何?まだ立ち上がれるのか?」

ガーリオンは好奇の目で、マジマジとブランカを見た。

「私は、天使長ブランカ。この天使の国を好きなようにはさせない!」

ブランカが叫んだ瞬間、全身が黄金色に光り輝き、大きな光の塊となった。
その光の塊は、更に大きくなりながらガーリオンへと向かっていった。

「ブランカ!」

叫んだラフィの全身も、黄金色に光り輝いている。

「サビィ!子供達と卵を頼む!」

ラフィはサビィに向かって叫ぶと、ブランカを守る為にガーリオンの前に立ち塞がった。

「ラフィ!ここは私が…」
「言ったよね。ブランカの事は僕が守るよ。もちろん、この天使の国もね。」

2人の黄金色の光は、ガーリオンをジリジリと追い詰めていった。

「何だこれは…力が増している…だが、この俺様が天使などに倒せるわけなどないわ!」

ガーリオンから黒いモヤが現れると、それは渦となりブランカとラフィを飲み込んだ。
しかし、2人の光は渦を一瞬でかき消したのだった。

「くそっ!忌々しい!」

ガーリオンは一瞬怯んだものの、ブランカに手を伸ばすと背中の翼を一気に引きちぎった。

「キャー!」

背中から血しぶきが上がり、その場にブランカは崩れ落ちた。

「ブランカ!」

ラフィの光は更に強くなり、再びガーリオンを追い詰めていく。

「ガーリオン!お前にブランカも天使の国も好きにはさせない!」

ラフィが空に向け片手を真っ直ぐに挙げると、空がキラリと光り1本の剣が降ってきた。
ラフィは、その剣をしっかりと掴むと鞘から抜いた。
剣は眩いばかりの光を放った。
その光は、あまりの眩しさに目を開けていらないほどであった。

「そんな剣で俺様を倒せると思うな!」

ガーリオンがラフィに手を伸ばしたが、剣の光に目が眩み足元がふらついた。
ラフィは、伸ばされた手をひらりと交わすと、剣をガーリオンの胸に深々と突き立てた。

「ウギャー!」

ラフィは、剣を突き立てたままジリジリと後方へとガーリオンを追い詰めていった。

「この剣は、天使の国が存続の危機にさらされた時にだけもたらされる。」
「くそっ!こんな物で…俺様が倒れるなど…」

ガーリオンが倒れまいと足に力を入れると、突然足元に亀裂が入り始めた。
その亀裂は徐々に大きく深くなり、やがて大きな裂け目となった。
そして、その裂け目から真っ白な雲が見えていた。

「このまま魔界に堕ちるんだ!」

ラフィがガーリオンに突き立てた剣を抜き、背に回ると後ろから突き落とした。
すると、他の悪魔達も引きずられるように魔界に堕ちていった。
全ての悪魔が堕ちていく姿を確認すると、裂け目は少しずつ閉じていった。
剣を鞘に収め、ラフィがブランカの元に駆け寄ろうとした時、閉じ切れていない隙間から、ガーリオンが飛び出してきた。

「俺様を生かした事を後悔させてやる!」

ガーリオンは血走った目をギョロギョロさせていたが、その動きをピタリと止めると、その場からフッと消えた。
そして、子供達を守っていた1人の女性の天使をむんずと捕まえた。

「お前も来い!」
「キャー!助けてー!」

ガーリオンは、雲の裂け目に立ちラフィを見た。

「この天使は貰った!」
「ガーリオン!イルファスを離すんだ!」
「俺様にとどめを刺さなかった…それは、お前の甘さだ!お前は、これからその甘さに苦しむだろう。」

ガーリオンはニタリと笑うと。イルファスを抱えたまま裂け目に飛び降りた。

「イルファーース!!」

雲の裂け目は閉じ、ラフィはその場にガックリと膝を付いた。

「イルファス…すまない…」

その時、ブランカの消え入りそうな声が聞こえてきた。

「ラフィ…」
「ブランカ!」

ラフィは、ブランカに駆け寄り抱き寄せた。

「ラフィ…天使の国を守ってくれて…子供達や卵を守って…くれて…あ…りがとう…結局…私は…守れなかった…」
「ブランカ…僕は、誰も助けられなかった…君や、イルファスまで…でも、君は必死に天使の国を守ったじゃないか…」

ラフィの目には涙が浮かび、後から後から溢れている。
ブランカは、ソッと手を伸ばすとラフィの涙を拭った。

「ラフィ…あなたのおかげで守られたのよ。泣かないで…ラフィ…笑って…あなたの笑顔が大好きなの…」
「ブランカ…ごめん…笑えない…」
「ラフィ…お願い…最後に笑顔を見せて…」

ラフィの瞳からこぼれ落ちる涙を、ブランカは拭い続けている。
ラフィはその手を握ると、涙を浮かべながらも笑顔を見せた。

「ありがとう…ラフィ…愛している…」
「ブランカ…僕も君を愛している…」

ブランカの手がラフィの頬から力なく落ちた。

「ブランカ…?ブランカ…」

ラフィは、泣きながらブランカを抱き締めたが、目を覚ます事はなかった。
その時、突然ブランカの体が光り輝き始めた。
その輝きは徐々に強くなり一際強くなった瞬間、光はフッと消えブランカの姿は跡形もなく消えていた。

「ブランカーッ!」

最愛の恋人の最期に、ラフィの悲痛な叫び声が天使の国に響いていった。

シャイニーは、ただただ立ち尽くし泣き崩れるラフィを見つめるのだった。



シャイニーは長い夢から目を覚ますと、ラフィの悲しみを確信した。

(そっか…ラフィ先生の悲しみは、天使長ブランカの死だったんだ…僕が、ラフィ先生の為に何かできる事はあるかな…ううん。今の僕では無理だ。いつか、ラフィ先生の悲しみを癒せるような天使になりたい…)

シャイニーは、ラフィが時折見せる悲しみを滲ませた瞳を思い出しながら、強く願うのだった。


シャイニーが夢を見ている時、フレームは酷くうなされていた。

「ウ…ウウ…」
(フレーム…フレーム…)
(俺の頭の中で話し掛ける奴は誰だ…)
(我が名はガーリオン…)
(ガーリオン?今日は、ハッキリ声が聞こえる…)
(フレーム…目覚めるのだ…お前の力はそんなものではない…)

頭に響く声は低く、地を這いながら獣が吠えるような不気味なものであった。

(俺の頭の中で勝手に話すな!)

フレームがベッドから起き上がると、全身は汗でグッショリと濡れていた。

「この間から一体何なんだ!」

フレームは自分に起こる様々な出来事に、とてつもない不安を感じ思わず叫んだ。

「フレーム?どうかなさいました?」
「クルック…なんでもないよ。寝ぼけただけだから。」
「まぁ!寝ぼけましたの?でも.なんでもない…という顔ではありませんわ。怖い夢でも見ましたの?」
「違うよ!そんなに弱くないし…」
「もう、仕方ありませんわね。フレーム、私を壁から外して下さい。」
「は?何言ってんの?」
「いいから早く!」
「はいはい。何だよ全く…」

フレームは、ブツブツ言いながらクルックを壁から外した。

「外したけど…どうするんだ?」
「フレーム、私が添い寝して差し上げます!」
「はぁ?クルックが添い寝?冗談だろ?」
「冗談ではありませんわ!怖くて眠れないフレームに添い寝をして差し上げます。さぁ、ベッドに行きますわよ。」
「なに張り切ってるんだから…」

フレームは溜め息を吐くと、クルックと一緒にベッドに入った。
すると、クルックがムチを体からスルスルと出し始めた。

「は?ムチ?」

そして、そのムチをフレームの体を優しく包むように巻き付けた。

「ムチの新しい使い方を発見しましたの。ほら、こうすると安心しますでしょ?」
「へぇ~クルックにしては、良い思い付きだな。」

フレームはニヤッと笑ってクルックを見た。

「フレーム、照れなくてもいいですのよ。」
「バ、バカ!照れてなんかないよ!」
「まぁ、どっちでも良いですわ。さぁ~寝ますわよ。私が子守唄を歌って差し上げます。」
「は?クルックの歌?あの音程ガタガタの変な歌しか聞いた事ないぞ。」 
「いいから黙って私の歌を聞くのです!」
「はいはい。分かりました。」
「それで結構。では歌いますわよ。自作の子守唄です。ア~コホン…」


天使の見る夢 どんな夢

雲に乗り 空を旅する夢かしら?
それとも流れ星を追いかける夢?

優しいそよ風と話したり
風に揺れる花と遊びましょう

小さな虫達とダンスして
小鳥と一緒に歌いましょう

天使の見る夢 どんな夢

小川のせせらぎ 優しい雨音

みんな みんな 天使を包む
みんな みんな 天使を見守る
みんな みんな 天使と遊ぶ
みんな みんな 天使と歌う
みんな みんな 天使が大好き

一緒に歌って 一緒にダンス

天使の見る夢 どんな夢

それはね とっても優しく 楽しい夢

私の腕の中でお眠りなさい
私に包まれお眠りなさい


クルックの歌声は優しく温かで、いつの間にかフレームは安心してぐっすりと眠っていた。

「おやすみ…フレーム。私も眠りますわ。」

クルックはフレームに寄り添うように、ゆっくりと目を閉じた。

ガーリオンはこの様子を、唇をギリギリと強く噛み締めながら、悔しげに魔界から見ていた。

「クソッ!忌々しい…時計の分際で生意気な!いつかメタメタに壊してやる…」

ガーリオンは憎々しげに怒鳴り、持っていた鏡やゴブレット、皿やフォーク等、ありとあらゆる物を投げ付けた。

「まぁ…いい。まだチャンスはある。焦らずその時を待つとしよう。」

ガーリオンの不気味な高笑いは、魔界にいつまでも響き渡るのであった。
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