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ライルとマロンの特技と不思議な図書室

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「あの音符、結局捕まえられなかったよ。マトラとぶつかったオデコは痛いしさ。」

ストラは、オデコをさすりながらテーブルに戻って来た。

「あら、痛いのは私も同じよ。シャイニー、フレーム、見て!オデコにコブができちゃったわ。」

マトラは、オデコを指差しながらシャイニーとフレームが良く見えるように、グイッと近付けた。

「うんうん。マトラ分かったよ。痛かったね。」
「あちゃー。マトラのオデコ、全体的に腫れ上がってるぜ。オデコが迫り出してる。」
「失礼ね!フレーム!このオデコは、元々こうなの!ぶつけたのはここよ!」

マトラは、自分のオデコを更にグイッとフレームに近付けた。

「はいはい。分かった。分かったよ。マトラはオデコが痛かった。うん。大変だった。」

フレームは、必死にオデコを近付け痛みを訴えるマトラの肩を両手でグイッと押し返した。

「何よ!シャイニーもフレームも…本当に痛かったんだから!」
「だいたいマトラは、大袈裟なんだよ。ぶつけた所だって、どこだか分からないくらいじゃないか。」
「ストラは黙ってて!」
「はい…」

マトラは、納得がいかずブツブツと文句を言っている。
フレームは、そんなマトラを見て首をすくめシャイニーを見た。
その時、会場にサビィの声が響いた。

「素晴らしい演奏であった。子供達は不思議な音符と戯れ、心から楽しんだようだ。音楽隊よ、感謝する。
それでは、続いて私達から君達に向けて、祝いの余興をプレゼントしよう。まずは、ライルの剣の舞。」

すかさず、純白の美しい鎧に身を包んだライルが皆の前に現れた。
純白の鎧は、ライルが動く度にキラキラと光る。
足には純白の編み上げのサンダル。
手には、長い剣を携えていた。
この剣も美しく、柄には色とりどりの宝石が散りばめられていた。
ライルが剣を置き身をかがめると、会場は水を打ったように静まり返った。
いつの間にか音符達の姿も消えていた。
ハーニー達、音楽隊が新たな曲を弾き始めると、先程の楽しげなリズムから一変し、荒々しくもありながら美しい流れるような調べが会場に響いた。
ライルの剣の舞は素晴らしいものであった。
演奏に合わせ、巧みに剣を操り荒々しく走り、躍動し回転する。
純白の鎧は、ライルの動きに合わせキラキラと光を放った。
演奏が、徐々に緩やかにゆったりとした調べに変わり、ライルの動きも緩やかに伸び伸びと、そして静かなものに変わっていった。
ライルの動きが徐々に小さくなり、再び剣を床に置き身をかがめると演奏も同時に終わった。
会場は、剣の舞の素晴らしさに圧倒され一緒しんと静まり返ったが、すぐに大きな拍手と歓声で湧き上がった。
ライルは深々と一礼すると、サビィの元に戻っていった。

「ライル、素晴らしい剣の舞であった。感謝する。続いてはマロン。マロンは動物や様々な存在達と心を交わす事が得意だ。さぁ、マロン…お前の特技を見せておくれ。」

マロンが、すかさず皆の前に現れ一礼した。

「ライルの後では、とてもやりにくいのですが…私は、動物や様々な存在と心を交わす事が得意です。まずは、この子達と心を交わしてみましょう。」

マロンが話し終わるや否や、ウサギが5羽現れた。
ウサギ達は、急に会場に連れて来られた為、ここがどこなのか理解できず、キョロキョロしている。

「やぁ!ウサギさん達。急に呼び寄せてしまってごめんね。ここは、天使長サビィ様の部屋なんだ。子供達が今日から学びが始まったから、お祝いのパーティーをしているんだよ。分かるかな?」

ウサギ達は、マロンの話しを聞いて理解したらしく、ウンウンと頷いた。

「それでね、君達にお願いがあるんだ。この子達の前で何か面白い事をやってくれないかい?」

ウサギ達は、マロンのお願いに立ち上がり、それは無理…とでもいうように首を左右に振った。

「無理を承知でお願いしてるんだよ。頼めないかな?」

子供達は、マロンとウサギのやり取りが楽しくてクスクス笑っていた。
ウサギ達は集まってコソコソ話していたが、話しがまとまると代表して1羽のウサギが、マロンの所にやって来た。
ウサギは立ち上がり、前足でマロンに屈むように促すとマロンはソッと屈んだ。
すると、ウサギがコソコソとマロンに耳打ちを始めた。

「うんうん。仕方ないから今回だけやってあげる…僕達が持てるような剣を出して…だって。え!剣なんてどうするんだい?」

マロンが驚くと、耳打ちしたウサギはニヤッと笑ったかのように見えた。

「うん…まぁ、いいけど…」

マロンは、小さな剣を5本出すと、それぞれのウサギの前足に落ちないように持たせた。

「これでいいかい?この剣は、危なくないように偽物だからね。」

ウサギ達はウンウンと頷くと、先程耳打ちしたウサギがマロンにもう一度屈むように促し、再び耳打ちをした。

「え~と…ライルの剣の舞と同じ音楽を演奏して…僕達も踊ってみたい…って…え!ライルの舞をいつ見たの?」

ウサギは、少し考えると耳打ちを続けた。

「ここに呼ばれた時に頭に浮かんだ…でも、あんなに長く踊れないから、もっと短くアレンジして…注文が多いなぁ。ハーニー、アレンジできる?」

マロンの問いにハーニーは笑顔で頷いた。

ウサギ達はライルを真似て身をかがめ、演奏の始まりを待った。
ハーニー達が演奏を始めると、ウサギ達はクルクルと回ったりジャンプをしたり、そして時には剣を交えたりと思い思いに踊って見せた。
その姿はとても可愛らしく、見る者の目を釘付けにしていった。
演奏が終わりに近づくと、大きく躍動的な動きから小さな動きに変わり、ウサギ達が最後に立ち上がり勇しく剣を構えると演奏も同時に終わった。
会場が大きな拍手に包まれると、ウサギ達は1列に並び一礼した。

「ウサギさん達、ありがとう。」

マロンは、ウサギにお礼のリンゴを渡すと、ウサギは嬉しそうにリンゴを抱えながら帰っていった。

「それでは、続きまして…風を操ってみましょう。私は風と心を交わす事も得意です。」

マロンは、目を瞑り両手のひらを胸の前で合わせると、爽やかで優しい風がそよそよと吹き始め、徐々に強くなり、マロンの前でつむじ風となった。
マロンが、胸の前で合わせていた両手を大きく広げると、どこからともなく色とりどりの花びらが現れ、つむじ風と一緒にクルクルと舞った。
つむじ風は少しずつ大きくなり、会場の上へ上へと昇っていく。
その姿は、まるで花びらの塔のようであった。
つむじ風が徐々に形を崩し、会場を吹き渡る爽やかな風に変化していくと、クルクル舞っていた花びらは風に乗り、会場全体に優しい雨のように降り注いだ。
その様はとても美しく、溜め息と歓声が広がっていった。

「私からは以上です。」

マロンはニッコリ笑うと一礼し、後ろへと下がっていった。
会場は拍手で包まれ、マロンは満足そうにニコニコしていた。

「マロンも素晴らしい特技を見せてくれた。感謝する。花びらのつむじ風は圧巻であった。では…続いては私からだ。私からは、君達にプレゼントがある。それは…これだ。」

サビィがそう言うと、一瞬にしてパーティー会場が沢山の本が本棚にびっしりと並べられている図書室へと変わった。
いつの間にか、子供達が座っていたテーブルと椅子は片付けられている。

「今、会場にいた全員をこの場所に移動させた。君達は、ブランカ城内の図書室にいる。私は、今まで使用していた図書室を一新した。君達が何か調べ物をしたい時や本を読みたい時に役立つだろう。ここの図書室には、ありとあらゆる本が取り揃えられている。いつでも自由に使いなさい。」

サビィは優しい笑顔で子供達に言った。
その図書室は床に並べてある本棚だけではなく、空中にも本棚がいくつも浮いていた。

(ここには、一体どれだけの本があるんだろう?)

シャイニーは、あまりの本の多さに驚いていた。

「この図書室の使い方については、ラフィから説明がある。ブランカ城については全てラフィに任せてある。では、続いてはラフィ…君の番だ。」

サビィは、優雅に一礼すると後ろへと下がった。

「それじゃ…まずは、この図書室について説明するね。この図書室は、サビィがこだわりにこだわり抜いて作ったんだ。以前の図書室は美しくない…そう言ってね。」

ラフィは、サビィを見るとクスリと笑った。
サビィはそんなラフィを軽く睨んだが、彼は気にする事もなく肩をすくめながら話しを続けた。

「でも、さすがに良く作られているよ。さっきサビィも言っていたけど…この図書室にはありとあらゆる本が揃っている。この天使の国の本ばかりではないよ。この膨大な量の本の中から読みたい本や、調べたい事が書いてある本を見つけるのは、実は思っていたよりも簡単なんだ。図書室を管理しているクレイリーという鳥が数羽いて、本棚の間を常に忙しなく飛んでいる。まずは、このクレイリーを呼ぶよ。」

ラフィが口笛を吹くとその音は図書室に響き渡り、すぐに小さな鳥がラフィの元に飛んできた。
その鳥は真っ白で小さく、クチバシは金色で可愛らしい鳥だった。
ラフィが手を差し出すと、クレイリーは手に止まった。

「クレイリー、僕が愛用してる百科事典が置いてある場所を教えておくれ。」

ラフィが問いかけると、クレイリーはチチッ!と返事をし飛んでいった。
クレイリーは、空中に浮いている本棚に止まると、再びチチッ!と鳴いた。
ラフィはその本棚まで飛んでいき、分厚い本を手にして戻ってきた。

「こんな感じだよ。僕は口笛でクレイリーを呼んだけど、呼び方はどんな方法でも大丈夫だよ。分かったね。」

子供達はラフィの説明に頷いた。

「うん。大丈夫みたいだね。それじゃ…僕の特技だったよね。ここでは、ちょっと無理だから…最初に集まったホールに移動しても良いかな?サビィ。」
「もちろんだ。ラフィ。」

ラフィは頷くと、皆に声をかけた。

「それじゃ…ホールに移動するよ。サビィやライル、マロンはもちろんだけど…ハーニー達もおいで。子供達は、ホールに意識を向けるんだ。行くよ。」

ラフィやサビィ達、ハーニー達音楽隊がフッと姿を消すと、子供達もホールに意識を向け、図書室から姿を消していった。


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