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第四話
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「結衣、見てたぞ~。弦太くんと付き合ってるのか?」
学校から帰り部屋に入った途端、お父さんが現れニヤニヤ笑いながら言った。
「違うよ!弦太は幼馴染なの!」
「ふ~ん…」
お父さんは、まだニヤニヤしながら私を見ている。
「お父さん、良いこと思い付いちゃった~」
「え?良いことって…何?」
「内緒!」
お父さんは、嬉しそうに1人で頷いている。
(何だか嫌な予感する…)
私のこの勘は、翌日見事に的中した。
翌朝目が覚めると、お父さんの姿はなかった。
呼び掛けてみたが現れない。
私は、首を傾げながら準備をした。
玄関を出ると門扉の前に弦太が立っていた。
「よっ!結衣。おはよ~」
「弦太、待っててくれたの?」
「いや、今来た所だよ」
私は弦太と肩を並べ、駅へと向かう。
その時、左足首を誰かが掴んだ。
「えっ!何?」
私は、バランスを崩し前に倒れた。
地面が目の前に迫る。
(ダメだ!転ぶ!)
思わず固く目を瞑る。
その瞬間、私の体を弦太が抱き止めた。
「結衣!大丈夫か?」
「う…うん。大丈夫。ありがとう」
気付けば、私は弦太に抱き締められている。
私の頬は熱を帯び、胸は早鐘を打っている。
両手でそっと、弦太の胸を押す。
弦太も現状に気付き、慌てて離れた。
「ごめん!」
弦太の頬が、薄らと赤くなっている。
「う…ううん」
私は照れ臭さから視線を下に向けると、地面からお父さんの顔がニュッと出ていた。
思わず悲鳴を上げそうになり、慌てて口を押さえた。
お父さんは、満面笑みで親指を立てている。
そして、そのまま地面に吸い込まれるように消えていった。
「お父さん!!いるんでしょ?出て来て!」
学校から帰り部屋に入った瞬間、私はお父さんを怒り気味に呼んだ。
「結衣!おかえり~」
お父さんが、目の前に現れる。
「お父さん!今朝のあれは何?」
「あれって何だっけ~」
「とぼけないでよ!私の足首掴んで転ばそうとしたでしょ?」
「ああ、あれね~」
お父さんは、笑顔で私を見ている。
「だってさ~このままじゃ、弦太君と進展しないと思ったんだよね。お父さんは、キッカケを作ったんだよ」
私は、ガックリと肩を落とした。
「お父さん…余計な事しないでよ!あの後、弦太と気まずくなったじゃん!」
「ああ、それは、お互いを意識したからだね。今までは、単なる幼馴染としか思ってなかっただろ?でも、お父さんのちょっとしたキッカケのおかげで、お互いを意識したんだよ」
したり顔で頷くお父さん。
私は、そんな姿を見てイラッときた。
「勝手なこと言わないで!弦太が一緒にいてくれるから、あの道もなんとか歩けてたのに…私なりに、頑張って乗り越えようとしてたんだよ」
「うん。結衣が乗り越えようとしてるのも、弦太君のおかげであの道を歩けてるのも知ってる」
両手を思わず強く握り締める。
何とも言えない怒りが込み上げ、私の胸を覆い尽くす。
「お父さん…勝手だよ。突然、私の前からいなくなって…私とお母さん凄く大変だったんだよ。少しずつ、お父さんがいない生活に慣れるしかなくて…それで突然、幽霊になって現れたと思ったら、私と弦太の関係をおかしくしてさ。何なの?私を苦しめたいの?」
怒りに任せ言葉を捲し立てる。
気付けば、私の目から涙が零れ落ちていた。
「結衣…」
お父さんは、悲しそうな顔で私を見ていた。
「ごめん…結衣。お父さん、そんなつもりはなかったんだ…ただ、結衣にもう一度、本当の笑顔を取り戻して欲しかったんだ…」
お父さんは俯くと、スッと私の前から消えた。
学校から帰り部屋に入った途端、お父さんが現れニヤニヤ笑いながら言った。
「違うよ!弦太は幼馴染なの!」
「ふ~ん…」
お父さんは、まだニヤニヤしながら私を見ている。
「お父さん、良いこと思い付いちゃった~」
「え?良いことって…何?」
「内緒!」
お父さんは、嬉しそうに1人で頷いている。
(何だか嫌な予感する…)
私のこの勘は、翌日見事に的中した。
翌朝目が覚めると、お父さんの姿はなかった。
呼び掛けてみたが現れない。
私は、首を傾げながら準備をした。
玄関を出ると門扉の前に弦太が立っていた。
「よっ!結衣。おはよ~」
「弦太、待っててくれたの?」
「いや、今来た所だよ」
私は弦太と肩を並べ、駅へと向かう。
その時、左足首を誰かが掴んだ。
「えっ!何?」
私は、バランスを崩し前に倒れた。
地面が目の前に迫る。
(ダメだ!転ぶ!)
思わず固く目を瞑る。
その瞬間、私の体を弦太が抱き止めた。
「結衣!大丈夫か?」
「う…うん。大丈夫。ありがとう」
気付けば、私は弦太に抱き締められている。
私の頬は熱を帯び、胸は早鐘を打っている。
両手でそっと、弦太の胸を押す。
弦太も現状に気付き、慌てて離れた。
「ごめん!」
弦太の頬が、薄らと赤くなっている。
「う…ううん」
私は照れ臭さから視線を下に向けると、地面からお父さんの顔がニュッと出ていた。
思わず悲鳴を上げそうになり、慌てて口を押さえた。
お父さんは、満面笑みで親指を立てている。
そして、そのまま地面に吸い込まれるように消えていった。
「お父さん!!いるんでしょ?出て来て!」
学校から帰り部屋に入った瞬間、私はお父さんを怒り気味に呼んだ。
「結衣!おかえり~」
お父さんが、目の前に現れる。
「お父さん!今朝のあれは何?」
「あれって何だっけ~」
「とぼけないでよ!私の足首掴んで転ばそうとしたでしょ?」
「ああ、あれね~」
お父さんは、笑顔で私を見ている。
「だってさ~このままじゃ、弦太君と進展しないと思ったんだよね。お父さんは、キッカケを作ったんだよ」
私は、ガックリと肩を落とした。
「お父さん…余計な事しないでよ!あの後、弦太と気まずくなったじゃん!」
「ああ、それは、お互いを意識したからだね。今までは、単なる幼馴染としか思ってなかっただろ?でも、お父さんのちょっとしたキッカケのおかげで、お互いを意識したんだよ」
したり顔で頷くお父さん。
私は、そんな姿を見てイラッときた。
「勝手なこと言わないで!弦太が一緒にいてくれるから、あの道もなんとか歩けてたのに…私なりに、頑張って乗り越えようとしてたんだよ」
「うん。結衣が乗り越えようとしてるのも、弦太君のおかげであの道を歩けてるのも知ってる」
両手を思わず強く握り締める。
何とも言えない怒りが込み上げ、私の胸を覆い尽くす。
「お父さん…勝手だよ。突然、私の前からいなくなって…私とお母さん凄く大変だったんだよ。少しずつ、お父さんがいない生活に慣れるしかなくて…それで突然、幽霊になって現れたと思ったら、私と弦太の関係をおかしくしてさ。何なの?私を苦しめたいの?」
怒りに任せ言葉を捲し立てる。
気付けば、私の目から涙が零れ落ちていた。
「結衣…」
お父さんは、悲しそうな顔で私を見ていた。
「ごめん…結衣。お父さん、そんなつもりはなかったんだ…ただ、結衣にもう一度、本当の笑顔を取り戻して欲しかったんだ…」
お父さんは俯くと、スッと私の前から消えた。
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