甘い箱庭

マリモ

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過去

ある男の夢の中

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最近姉さんの夢を見る。

皇族が紫の瞳をして産まれて来る。そんな事はあってはいけなかった。



紫の瞳の悪い魔法使い達を倒した勇者の血筋、神と同等と言われる立場なのだ。

そんな事はあってはならない。


でも私の半身の姉さんは紫の瞳に濃い森のような髪の色を持って産まれてきた。


まだ髪が他の色なら良かったかもしれない。
だが姉さんはそんな姿で産まれてきた。

伝承に伝わる魔法使いとそっくりの髪色に瞳だ。

姉が居る等、皇族にそんな恐ろしい者が居るとは思っても居なかった。

その時は皇族なのを誇り悪い魔法使い等自分が倒すとお母様に言っていた。

お母様は悲しそうな顔をして
「そうね…」と毎度答えるだけだったが


私は姉が居ることを知らされず暮らしていた。

姉さんは塔に閉じ籠られて居た。

姉さんの事を知ったのはお母様にこっそりと教えられたからだった。

姉さんは少し離れた王宮の中の塔で暮らしているそうだ。

お母様がこっそりと幼き私を連れていってくれた。

その時は化け物と会う等言語道断だと思っていたが会った瞬間その考えは吹き飛んだ。


姉さんに会った瞬間私はとても驚いた。

姉さんがとても…美しかったから。
私は一瞬にして恋に落ちた。

姉さんは私に優しくしてくれた。


姉さんはいつも優しくて明るくて本が何よりも好きだった。


私は自分の宮を時々抜け出して姉さんに会いに行っていた。


姉さんと本の内容を語り合ったりお菓子を一緒に作ったり幸せだった。


だがそんな幸せは即座に崩れてしまった。


お母様が毒で倒れ亡くなった。


沢山の兄弟姉妹、お母様の出身は男爵だ。



隣国の王女である隣国から嫁いできた王妃とは違いお母様はあまり良い扱いをされなかった。
勿論私もだ。


王妃には男の息子が居た。私より早く産まれた第一王子、そいつもお母様を時々虐めて来た。


多分お母様を殺したのは王妃なのだろう。

お母様が亡くなってから私は塔に毎日の様に行った。

少しでも悲しみを紛れさせたくて姉さんに会いに行った。

それが仇となり私の護衛の下級騎手に姉さんの存在を知られ姉さんは…下級騎手達になぶり殺された。


私のせいで…私のせいで…

姉さんの存在は公にはされていなかった。

そのせいもあってか下級騎手の一部の奴ら以外には何も知られぬまま下級騎手が罪を裁かれる事も無く姉さんは死んでしまった。


許せなかった。お母様も姉さんもあいつらのせいで死んだ。


死に物狂いで勉学に、剣術に励んだ。
16になった時、王妃も第一王子も、姉さんを隔離した父親の王も、姉さんを苦しめたあいつらを殺し私は皇帝になった。


そして姉さんのような人が苦しまない世界を作りたかった。普通に暮らせるそんな世の中に…

だが世の中はそんな簡単ではなかった。

紫の瞳を持つものは悪だと幼き日から教えられた国の者の目は冷たい者か機嫌を取って利益を啜ろうとする者ばかりだった。


毎日のように夢を見る。
姉さんが殴られ血を吐き虚ろな目をして私に手を伸ばす姿を……




「っ………ハァハァ……姉さ……………
夢、か。」
目を開けて鳥籠のある方へ行く。

中を覗くと姉さんとそっくりな…まるで姉さんが転生してきたような容姿をしたフェイが居た。好きだった本も、お菓子が好きな所も姉さんそっくりだ。

姉さんが生まれ変わって私に会いに来てくれたに違いない。

もう2度と誰にも取られない。奪われない。大切な人を…大好きだった姉さんを…











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