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四章◆それは誇り◆
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あの事故。
両親が不慮の事故死をした四年前の事故。
古くなった劇場の建て直し現場で風に煽られたクレーンが突如バランスを失い倒れ、足場をなぎ倒し通行人を巻き込んだ重大事故が発生した。
その通行人に、琴葉の両親がいた。
たまたまminamiが定休日のことだ。
突然の出来事だった。
琴葉は店を手伝いながらパンの専門学校に通い、卒業して外のパン屋で働き始めたところだった。
これからもっともっと修行を積むところだった。
あまりの突然の出来事に何もする気が起きず、仕事も辞めざるをえなくなった。
そんな琴葉を慰め癒してくれたのは、両親から教わったminamiのパンだった。
大好きなパンを焼いているときだけは、辛いことを忘れられた。
寂しさを忘れられた。
それともうひとつ、minamiのパンが好きだと言ってくれる、近所で常連でもあるお客様たちに救われた。
たくさんの感謝の気持ちは、パン屋を再開することで恩返しをしよう。
そんな風に考えて、琴葉は一人で小さなパン屋minamiを開けたのだ。
小さなパン屋と銘打っても、所詮はワンオペで店を切り盛りするので作る数にも売る数にも限界がある。
正直、パン屋の売上は毎月赤字だ。
けれど琴葉は、資金が尽きるその日まで、パンを焼き続けたいと思っている。
両親が不慮の事故死をした四年前の事故。
古くなった劇場の建て直し現場で風に煽られたクレーンが突如バランスを失い倒れ、足場をなぎ倒し通行人を巻き込んだ重大事故が発生した。
その通行人に、琴葉の両親がいた。
たまたまminamiが定休日のことだ。
突然の出来事だった。
琴葉は店を手伝いながらパンの専門学校に通い、卒業して外のパン屋で働き始めたところだった。
これからもっともっと修行を積むところだった。
あまりの突然の出来事に何もする気が起きず、仕事も辞めざるをえなくなった。
そんな琴葉を慰め癒してくれたのは、両親から教わったminamiのパンだった。
大好きなパンを焼いているときだけは、辛いことを忘れられた。
寂しさを忘れられた。
それともうひとつ、minamiのパンが好きだと言ってくれる、近所で常連でもあるお客様たちに救われた。
たくさんの感謝の気持ちは、パン屋を再開することで恩返しをしよう。
そんな風に考えて、琴葉は一人で小さなパン屋minamiを開けたのだ。
小さなパン屋と銘打っても、所詮はワンオペで店を切り盛りするので作る数にも売る数にも限界がある。
正直、パン屋の売上は毎月赤字だ。
けれど琴葉は、資金が尽きるその日まで、パンを焼き続けたいと思っている。
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