小さなパン屋の恋物語

三章◆彼女さん◆

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打合せや現地確認はつつがなく終わり、杏奈も完全に仕事モードでバリバリとこなし、あれ以降雄大に仕事以外で絡むことはなかった。

帰りの空港のラウンジで雄大がコーヒーを飲んでいると、おもむろに杏奈が隣に座る。

「ねえ見て！これベネチアングラスのストラップ。可愛いでしょ！雄大、お揃いで付けようよ。」

杏奈が見せてくれるおしゃれで可愛いストラップは、現地の特産品であるベネチアングラスでできていて色合いがとても綺麗だ。
お揃いはともかく、雄大は琴葉にお土産を買っていないことに気づいた。

「俺もお土産見てこようかな。」

「え？じゃあ私も行くー。」

残っていたコーヒーを一気に飲んで立ち上がると、杏奈もそれに続く。

「雄大がお土産なんて珍しいわね。何買うの？」

確かに、出張に行ってお土産を買うことはあまりないし、今までそういったことに関心がなかった。
そのため、いざ琴葉へお土産をと思っても何を選べばいいのか難しい。

「杏奈だったら何もらうと嬉しい？」

「私？うーん、アクセサリーとかいいなぁ。」

杏奈が所狭しと並べられているネックレスを見ながら呟く。

「はっ！まさか雄大、私に買ってくれるの？」

「まさか？」

「何よう。」

軽く笑いながら否定され、杏奈は思わず頬を膨らませた。

空港内にはいろいろなお土産が売っていて、定番のチョコレートやお菓子類、スカーフや香水等選びたい放題だったが、どれを見てもピンとこなかった。

「雄大、これ。このストラップよ。お揃いで買いましょう？」

杏奈に強引に連れてこられたベネチアングラスのショーケース前で、雄大は一本のペンダントに釘付けになった。

すずらんをモチーフにした繊細で可憐なペンダントは、優しい琴葉に似合いそうだと思った。