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好きか嫌いかと問われれば嫌いじゃない

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同期の奈穂子に誘われて、久しぶりに飲みに行くことになった。

奈穂子とは部署は違うけど社内で一番仲がいい。
今時少ない、名前に「子」がつく同士で気が合って、親友と呼んでもいいほどにいろんなことを話している。
仕事中はあまり会うことはないけど、こうしてたまにどちらからともなく誘って飲みに行ったりする。

元彼と別れた経緯も知っているし、退職願を提出したとき、たぶん飯田課長に口添えしたのも奈穂子だと思う。
あの時一番最初に泣きついたのは奈穂子にだったから。

だけど彼女は私にそんなこと言わないし、聞いたところで答えるような人じゃないけど、なんとなくそうじゃないかなと思っている。


とりあえずビールと枝豆で乾杯をする。
と言っても私は甘いお酒の方が好きなので、ビールはこの一杯目だけ。
奈穂子はグビグビっとビールをあおると、勢いよくジョッキをテーブルに置く。
そして私を見てニヤリと笑った。

「最近日菜子噂になってるよ。」

「え、何で?」

「王子様とよくランチ行ってるでしょ。羨ましいって女子が嘆いてるよ。」

奈穂子は坪内さんを王子様と呼ぶ。
ていうか、社内の多くの女性陣の中で坪内さんの総称は王子様になっている。
やっぱり王子は人気だな。

「ずっと同じ部署だったのに、最近になってやたら仲いいじゃない。何かあった?」

そうなのだ。
私は入社時から坪内さんと同じ部署で仕事をしている。
システム部門に配属されたときも、まわりから羨ましがられていた。
だけど私はその時、同期で一緒に研修を受けた元彼と付き合い始めていたし、坪内さんがイケメンだとは思ったけど特に興味はなかった。
同じ部署といえど仕事で関わることも少なかったのだ。

奈穂子の問いにそっけなく答える。

「別に。ただ仕事が兼務になって、王子の下についただけだよ。」

「今王子様が上司なの?」

「正確には課長と坪内さん両方が直属の上司。坪内さんに無理矢理ランチに連れてかれてるの。」

私は溜め息混じりに答えて、追加でカシスオレンジを注文した。
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