上 下
13 / 78
好きか嫌いかと問われれば嫌いじゃない

13

しおりを挟む
おかげで坪内さんとランチをする機会も増えた。
毎回律儀に奢ってくれようとするけど、それはさすがに断っている。
気持ちは嬉しいんだけどね。
借りを作りたくないし、そこまでされると餌付けされてるみたいだもん。
なのでちゃんと自分で払う。

新しいお店を坪内さんと開拓するのも楽しくなってきた。
坪内さんはイケメン王子様だから、おしゃれなお店が合うよなぁなんて思ってたけど、今日はおしゃれとは無縁な感じの小さなラーメン屋さんでランチだ。

運ばれてきたラーメンをズルズルとすする。
イケメンはラーメンを食べてもイケメンで笑えた。

「何だよ?」

笑った私を見て、坪内さんは怪訝な顔をする。

「坪内さん、ラーメンも似合うなあと思って。」

「はあ?」

私の言葉に、訳がわからないといった顔をする。

「だって坪内さん、社内で王子様って言われてるんですよ。王子様とラーメンって結び付かないのに、似合うんだもん。反則ですよ。」

「王子様ねぇ。何を思ってそんなこと言うんだか。」

坪内さんは心底興味無さそうに、呆れた表情でラーメンを食べる。

「もしかして王子様の自覚無しですか?」

「お前も俺を王子様だと思うの?」

「うーん、見た目は王子様みたいですけど、中身は違いますからねえ。腹黒王子ってとこですかね?」

「てめっ、上司に向かってよくそんなこと言えたな。」

思わず本音が出てしまって、しまったと口元を押さえたが、当の坪内さんはお腹を抱えて大笑いをしている。

「秋山のそういうとこ好きだわー。」

笑顔でさらりと言うので、一瞬聞き逃したかと思ったけど…。

好き?
何が?
そういうとこ?
どういうとこ?

私にはさっぱりわからなかったけど、その日坪内さんは何故か上機嫌だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

豆狸2024読み切り短編集

豆狸
恋愛
一話完結の新作読み切り短編集です。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

こじらせ女子の恋愛事情

あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26) そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26) いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。 なんて自らまたこじらせる残念な私。 「俺はずっと好きだけど?」 「仁科の返事を待ってるんだよね」 宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。 これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。 ******************* この作品は、他のサイトにも掲載しています。

死にかけ令嬢は二度と戻らない

水空 葵
恋愛
使用人未満の扱いに、日々の暴力。 食事すら満足に口に出来ない毎日を送っていた伯爵令嬢のエリシアは、ついに腕も動かせないほどに衰弱していた。 味方になっていた侍女は全員クビになり、すぐに助けてくれる人はいない状況。 それでもエリシアは諦めなくて、ついに助けを知らせる声が響いた。 けれど、虐めの発覚を恐れた義母によって川に捨てられ、意識を失ってしまうエリシア。 次に目を覚ました時、そこはふかふかのベッドの上で……。 一度は死にかけた令嬢が、家族との縁を切って幸せになるお話。 ※他サイト様でも連載しています

え? パーティに支援魔法をかけまくっていた俺を追放? 〜若くてかわいい有望パーティに拾われたので、今さら戻ってこいと言われても、もう遅い〜

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
「役立たずのお前は追放する!」 「そ、そんな……。がんばってきたのに! 考え直してください! ユリウスさん!」 「がんばる? そんなことは当たり前だ! 俺たちは、結果を出さなければならない! お前みたいな無能のDランク支援魔法士をパーティに入れている余裕はないのだ!」  Bランクパーティ”黒き炎”を追放されてしまった、Dランク支援魔法士のロイ。 途方に暮れる彼だったが、彼を拾う者が現れる。 「ちょっとそこのお兄さん。パーティメンバーをお探しなのです?」 「あ、ああ。そうだよ。君は?」 「わたしはミーシャというのです。Cランクのレンジャーなのです」  ミーシャに誘われ、ロイは”白き雷光”に加入する。 剣士のニナにも紹介され、初任務へ向かう。 「この先にシャドウウルフがいるのです。2頭なのです」 「ふん! 私が蹴散らしてあげるわ!」 「せいっ! ……え? 一撃?」 「さすがはロイさんの支援魔法なのです。お見事なのです」 「ふん! すさまじい支援魔法みたいね」  ロイの規格外の支援魔法に、ミーシャとニナからの評価はうなぎのぼりだ。 一方で、ユリウスたち”黒き炎”は絶不調に陥っていた。 「たるんでいるぞ、お前たち! せっかく無能のロイを追放しても、お前たちがしっかりしないと意味がないだろうが!」 「しかしな。ユリウスよ。何だか調子が出ないのである!」 「その通りですね。気候の影響でしょうか。自分も調子が出ません」 「言い訳は見苦しいですわ。コンディションの管理も実力のうちです」 「リサ! お前も人ごとではないだろう! 魔法の威力が落ちていたぞ! もっと気合を入れてもらわなければ困る!」  ”黒き炎”のパーティ内に険悪なムードが流れる。 さらに。 「ユリウス! 貴様、何をやっておる! ビッグボアはBランククラスの魔物じゃろう! Aランク間近と言われる貴様らであれば、討伐できない相手ではないはずじゃろう!」 「も、申し訳ございません。ジョネス商会長。俺たち全員の調子が悪く……」 「言い訳をするな! 自身の調子の管理をするのも冒険者の仕事じゃろうが!」  ”黒き炎”の信用も失墜していく。 はたして、ロイたち”白き雷光”と、ユリウスたち”黒き炎”の行くすえはいかに。

処理中です...