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9 (ハロルド視点)
しおりを挟む無事に結婚した。結婚し、爵位を継いだ。シャルとは結婚前も、その後も今日までろくな会話ができていない。
俺はつまらない男だ。
何を話して良いのかわからないし、シャルを前にすると5年もたつのに未だに緊張する…結局逃げてたんだ。5年もの間。
シャルと呼んでいるが、本人の前では呼んだことはない。
エリックは初夜で授かることができ、結婚1年目で生まれた。
出産の際、出血が酷く大変だったため、俺が怖くなりシャルを抱いたのは、初夜の一度きり。
エリックは容姿は俺に似ていて目の色、優しいところはシャルににている。とても可愛い子だ。
そして、結婚して5年たったあの日……
私は書斎で仕事をしていた。静かだった屋敷に悲鳴や足音で騒がしくなり、真っ青な顔をした執事が勢いよく部屋に入ってきて私に告げた。
シャルが倒れた…と。
シャルが倒れた…… 執事が大声で俺を呼んでいるようだ。……何を言われたかわからなかった。
執事に体を揺すられ、はっと我にかえり、急いでシャルのところへ行った。
シャルは真っ青な顔をして倒れている。俺はシャルへ駆け寄った。
それから急いで医師となり有名になって帰って来ているテオドールに連絡した。テオドールなら最善を尽くすだろうと。
テオドールはすぐに来て、シャルを診てくれた。
テオドールから、命には別状はないと聞いたときは安堵した。
ただ、いつ目を覚ますかはわからないと。目を覚ましたり何かあったときにはすぐに知らせてほしいと言い、テオドールは帰った。
俺は、シャルが倒れてから毎晩シャルの部屋に行っている。エリックは母から離れたくないと片時も離れない。昼間時間私もエリックのようにシャルのそばにいたいが仕事もあるため、こんな時間になってしまう。エリックがこのままだとだめだと思い、時間を無理矢理つくって、倒れて3日目からエリックと遊ぶようになった。
最初エリックはシャルから離れるのを嫌がったが、俺が遊ぼうと言っているとアンネが伝えたら
「……お父様が?」と、泣き止み、それなら、と嬉しそうに言ったと聞いた。二人で外で追いかけっこをしたり、かくれんぼや、虫をさがしたりした。
エリックは自分と愛するシャルとの子だ。とても可愛い。だが、子供の接し方もわからないし、何を話して良いかわからない。仕事を理由に食事以外ではあまり関わってこないまま4年も過ぎてしまった。
それでも、子供だからだろうか。こんな父親でも楽しそうに遊んでくれた。
遊び終わり、エリックはシャルのところに行き俺と遊んだことを嬉しそうに話し、シャルも目を覚ましたら一緒に遊ぼうと言っていたようだ。
そして俺も、仕事を終え夜中にシャルのところへ行き、エリックと久々に遊んだことを報告した。
シャルが倒れてから5日目の晩、シャルの部屋で日記をみつけた。
日記……。
知らなかった…いつからつけていたのだろうか…俺のことは……書かれていたらきっと……
………読んでいいのだろうか。
いや……変わろうと決めたのだ。
何が書いてあったとしても関係ない。シャルが目を覚ましてから、 今までのことを謝り、家族、夫婦の時間をつくろう。そして…自分の気持ちも伝えよう。
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