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第5話
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「2万本?1週間で2万本なんて無理だろ!……あ!もしかしてこの前、貸してくれた『スラ〇ダンク』の真似してボケたんだろ?あんまり笑えないボケするなよな。」
俺はキョウヘイの発言が俺を笑わせようとしたボケだと思いツッコミを入れた。
ちなみに放課後漫画の話をしている4人の内、キョウヘイ以外は裕福でも貧乏でもない家庭の子だったので(今の日本だとそういう家庭も十分恵まれていることは理解しているが)、それほどひと月にもらえるお小遣いは多くなかったので、漫画をそんなに買えなかったため(おしゃれや他の娯楽にお小遣いを使うこともあったため)、漫画を読むとしたらスマホのアプリとかで無料で読めるものを読むくらいしか方法がなかった。
俺とカジワラとハタケはそれでも十分だったのだが、キョウヘイは自分が買って読んだ漫画の話をしたかったため、俺たちに「面白いから読んでみてくれ。」と自分が買った漫画を貸そうとしてくれた。
最初、俺たち3人はキョウヘイの背後に見えたキョウヘイの親の財力に甘えるのはいかがなものか?と考えて、その提案を断った。無料で読める漫画の話でも十分俺たち3人は楽しかったからだ。しかし、キョウヘイは自分が読んで面白かった漫画の話を俺たちとしたいと食い下がって来たので、俺たちは最後には「お金の貸し借りはしない」、「俺たち3人からキョウヘイに読みたい漫画の話はしない」という約束を取り決め、キョウヘイから漫画を借り始めた。
「スラ〇ダンク」は映画を見に行ったあと、原作が気になったキョウヘイが買いそろえた物を借りて読んでいたため知っていた。
しかし、キョウヘイは真面目な表情を一切変えずに、「ボケ?俺は本気だぞ。セイには1週間で2万本のシュート練習をしてもらう。そして1週間ごとにシュート位置を遠くして、最終的には3ポイントシュートが入るようになってもらう。」と返答してきた。
俺はボケにしては悪質だと思い、声を荒らげて「だからそんなの無理だって!『スラ〇ダンク』の桜〇花道がやったっていう1週間で2万本のシュート練習は現実には無理だってネットに書いてあったぞ!それに俺たちが使える時間は大体夕方6時から夜8時までの2時間で作中の桜〇花道よりも短いんだぞ!」と反論した。
「時間はこれから球技大会まで、放課後4人で集まって漫画の話をする時間を削ればいい。そうすれば1時間半はプラスできる。それにセイ、お前はやるって言ったよな?」
「それは1週間で2万本のシュート練習をするという目標を聞く前だ。勝手にそっちから条件を足してきたんだから、その約束は反故にできるはずだ。」
「反故にするのは勝手だが、いいのか?『愛人にしかなりたくない。』と言うカジワラを振り向かせたかったんじゃないのか?現実にはできそうにないと言い訳して、好きな女子を振り向かせるために努力することもできないのか?お前は?」
立てた目標が高すぎるという問題点はあるが、キョウヘイの言ってることはもっともな気がした。好きな女子を振り向かせるために努力もできないのか?俺は?それになかなか振り向いてくれない好きな女子を振り向かせる方法を考えてくれて、振り向かせるために特訓する場所や設備を提供してくれるだけでなく、特訓に付き合ってまでくれる友だちの思いを無駄にしていいのか?いや、良くない!
「分かった!俺やっぱりやるよ!1週間で2万本のシュート練習!」
「そうか。分かってくれたか。俺だって何もできるとは思ってない。それでもやろうとすることが大事だと思うんだ。とりあえず今6時40分過ぎだから、今から30分間、セットシュートの練習をしようか!」
「ああ、分かった。」
それから30分間、セットシュートの練習をした。体育の授業くらいでしかバスケをしたことがなかったが、授業中は3ポイントラインの内側でブロックがなければ3本に1本くらいはリングに入っていたので、シュートの練習中も3本に1本くらいはリングに入っているような気がした。俺が投げたボールはリングに入っても入らなくても、キョウヘイが拾ってくれた。おかげでボールを拾う時間を大分短縮できた。
「ストーーップ!30分経ったぞ!2分間休憩!シュート数63本中24本入ってたよ。まあ、まだまだこれからだよな!ほら、これ!喉渇いただろ?」
キョウヘイにそう言われて、やっぱり3本に1本くらいはリングに入っていたんだと確認できた。でも、それで満足していてはいけない!できれば3ポイントラインより内側でのシュートは全部入るくらいじゃなきゃ、球技大会で活躍するのは難しいだろう。
キョウヘイに渡されたボトルのドリンクを飲むとスポーツドリンクの味がした。ぬるくもなく冷たすぎることもなく、ちょうどいい温度で飲みやすかった。
「2分間休憩したら、また30分シュートの練習か?」
「いや、2分間休憩したら、今度は中間試験の勉強をする!体を動かしながら覚えると記憶に定着しやすくなるらしいからな!だから暗記系の勉強を30分しよう!」
「分かった!」
キョウヘイに促されて2分間の休憩のあとは、漢字や英単語、歴史の年号などを30分間暗記した。記憶に定着しているかは分からないが、とりあえず無理のない範囲で頭に詰め込めるだけ詰め込んだ。
そして30分間の暗記が終わったら、また30分間のシュート練習が始まった。とりあえずボールを投げる位置は9割ぐらいリングにボールが入るまでは変えないことにした。でもさっきのシュート練習のおかげでシュートの成功率が上がるようなことは全然なかった。むしろ授業でもここまでしないだろうというくらいシュート練習をしたため、腕に力が入らずシュート数もシュートの成功率も下がっているような気がした。
「はい!そこまで!お疲れ!セイ!シュート数54本中17本入ってたよ。まあ初日だからこんなもんかな。もう8時20分を過ぎてる!さあ、車で送らせるから早く戻ろう!」
キョウヘイは1週間で2万本のシュート練習をすると言ったわりには、初日から到底目標を達成できそうにないペースなのに厳しい言葉を投げかけるどころか優しい言葉を掛けてくれた。やっぱり1週間で2万本のシュート練習というのは俺を鼓舞するための目標であって、俺に本気で達成させようとする目標ではなかったのだと分かり、少し安心した。
俺とキョウヘイは車が停まっているキョウヘイの自宅の前まで走った。到着すると使用人らしき人が車に乗り込もうとする俺に布で包まれた何かと水筒を渡してくれた。
俺が訳が分からずにポカンとしていると、キョウヘイが、「それは夕飯のサンドイッチだよ。セイのお母さんに夕飯はこっちで用意してますって言ったけど、もう俺んちで食べる時間はないから車の中で食べられるように用意してもらったんだ。」と説明してくれた。
「気を遣わせて悪い。ありがとな。キョウヘイ。」
「うん。だけどお礼は俺じゃなくて上岡(カミオカ)さんたちに言ってくれないか。」
「そうだった。みなさん、ありがとうございます!あと、多分この場にはいないサンドイッチを作ってくれた方にもお礼を言ってたと伝えていただけますか?」
「分かりました。伝えておきます。」と俺にサンドイッチを渡してくれた使用人の方が言ってくれたので俺は安心して車に乗り込んだ。
俺は車に乗り込むと運転席にいるカミオカさんに「カミオカさんもありがとうございます。」とお礼を言った。
「いえいえ、こちらこそお礼を言っていただき、ありがとうございます。」
カミオカさんはキョウヘイ専属の使用人でキョウヘイを学校まで車で送り迎えをしている。パッと見た感じ50代くらいの温和なおじさんに見えるが、キョウヘイから聞いたところによると、いくつかの格闘技を習得していてかなり強いらしく、キョウヘイが不審者に襲われたりした時にキョウヘイを守るボディーガードの役割も兼務しているらしい。お礼を言っただけだが、こうやってカミオカさんと話したのは数回しかない。
「それじゃ、セイの家に向かって出発しようか。」
いつの間にか隣の席にキョウヘイが乗り込んでいたので、俺は、「キョウヘイ!お前付いてきていいのか?門限過ぎてるけど。」と疑問を口にしていた。
「大丈夫。大丈夫。親の許可はもらってるよ。セイのお母さんに話したいことがあるからな。」
「そっか。ならいいけど。」
「それでは出発します。」
そう言うとカミオカさんは車を発進させた。
俺はキョウヘイの発言が俺を笑わせようとしたボケだと思いツッコミを入れた。
ちなみに放課後漫画の話をしている4人の内、キョウヘイ以外は裕福でも貧乏でもない家庭の子だったので(今の日本だとそういう家庭も十分恵まれていることは理解しているが)、それほどひと月にもらえるお小遣いは多くなかったので、漫画をそんなに買えなかったため(おしゃれや他の娯楽にお小遣いを使うこともあったため)、漫画を読むとしたらスマホのアプリとかで無料で読めるものを読むくらいしか方法がなかった。
俺とカジワラとハタケはそれでも十分だったのだが、キョウヘイは自分が買って読んだ漫画の話をしたかったため、俺たちに「面白いから読んでみてくれ。」と自分が買った漫画を貸そうとしてくれた。
最初、俺たち3人はキョウヘイの背後に見えたキョウヘイの親の財力に甘えるのはいかがなものか?と考えて、その提案を断った。無料で読める漫画の話でも十分俺たち3人は楽しかったからだ。しかし、キョウヘイは自分が読んで面白かった漫画の話を俺たちとしたいと食い下がって来たので、俺たちは最後には「お金の貸し借りはしない」、「俺たち3人からキョウヘイに読みたい漫画の話はしない」という約束を取り決め、キョウヘイから漫画を借り始めた。
「スラ〇ダンク」は映画を見に行ったあと、原作が気になったキョウヘイが買いそろえた物を借りて読んでいたため知っていた。
しかし、キョウヘイは真面目な表情を一切変えずに、「ボケ?俺は本気だぞ。セイには1週間で2万本のシュート練習をしてもらう。そして1週間ごとにシュート位置を遠くして、最終的には3ポイントシュートが入るようになってもらう。」と返答してきた。
俺はボケにしては悪質だと思い、声を荒らげて「だからそんなの無理だって!『スラ〇ダンク』の桜〇花道がやったっていう1週間で2万本のシュート練習は現実には無理だってネットに書いてあったぞ!それに俺たちが使える時間は大体夕方6時から夜8時までの2時間で作中の桜〇花道よりも短いんだぞ!」と反論した。
「時間はこれから球技大会まで、放課後4人で集まって漫画の話をする時間を削ればいい。そうすれば1時間半はプラスできる。それにセイ、お前はやるって言ったよな?」
「それは1週間で2万本のシュート練習をするという目標を聞く前だ。勝手にそっちから条件を足してきたんだから、その約束は反故にできるはずだ。」
「反故にするのは勝手だが、いいのか?『愛人にしかなりたくない。』と言うカジワラを振り向かせたかったんじゃないのか?現実にはできそうにないと言い訳して、好きな女子を振り向かせるために努力することもできないのか?お前は?」
立てた目標が高すぎるという問題点はあるが、キョウヘイの言ってることはもっともな気がした。好きな女子を振り向かせるために努力もできないのか?俺は?それになかなか振り向いてくれない好きな女子を振り向かせる方法を考えてくれて、振り向かせるために特訓する場所や設備を提供してくれるだけでなく、特訓に付き合ってまでくれる友だちの思いを無駄にしていいのか?いや、良くない!
「分かった!俺やっぱりやるよ!1週間で2万本のシュート練習!」
「そうか。分かってくれたか。俺だって何もできるとは思ってない。それでもやろうとすることが大事だと思うんだ。とりあえず今6時40分過ぎだから、今から30分間、セットシュートの練習をしようか!」
「ああ、分かった。」
それから30分間、セットシュートの練習をした。体育の授業くらいでしかバスケをしたことがなかったが、授業中は3ポイントラインの内側でブロックがなければ3本に1本くらいはリングに入っていたので、シュートの練習中も3本に1本くらいはリングに入っているような気がした。俺が投げたボールはリングに入っても入らなくても、キョウヘイが拾ってくれた。おかげでボールを拾う時間を大分短縮できた。
「ストーーップ!30分経ったぞ!2分間休憩!シュート数63本中24本入ってたよ。まあ、まだまだこれからだよな!ほら、これ!喉渇いただろ?」
キョウヘイにそう言われて、やっぱり3本に1本くらいはリングに入っていたんだと確認できた。でも、それで満足していてはいけない!できれば3ポイントラインより内側でのシュートは全部入るくらいじゃなきゃ、球技大会で活躍するのは難しいだろう。
キョウヘイに渡されたボトルのドリンクを飲むとスポーツドリンクの味がした。ぬるくもなく冷たすぎることもなく、ちょうどいい温度で飲みやすかった。
「2分間休憩したら、また30分シュートの練習か?」
「いや、2分間休憩したら、今度は中間試験の勉強をする!体を動かしながら覚えると記憶に定着しやすくなるらしいからな!だから暗記系の勉強を30分しよう!」
「分かった!」
キョウヘイに促されて2分間の休憩のあとは、漢字や英単語、歴史の年号などを30分間暗記した。記憶に定着しているかは分からないが、とりあえず無理のない範囲で頭に詰め込めるだけ詰め込んだ。
そして30分間の暗記が終わったら、また30分間のシュート練習が始まった。とりあえずボールを投げる位置は9割ぐらいリングにボールが入るまでは変えないことにした。でもさっきのシュート練習のおかげでシュートの成功率が上がるようなことは全然なかった。むしろ授業でもここまでしないだろうというくらいシュート練習をしたため、腕に力が入らずシュート数もシュートの成功率も下がっているような気がした。
「はい!そこまで!お疲れ!セイ!シュート数54本中17本入ってたよ。まあ初日だからこんなもんかな。もう8時20分を過ぎてる!さあ、車で送らせるから早く戻ろう!」
キョウヘイは1週間で2万本のシュート練習をすると言ったわりには、初日から到底目標を達成できそうにないペースなのに厳しい言葉を投げかけるどころか優しい言葉を掛けてくれた。やっぱり1週間で2万本のシュート練習というのは俺を鼓舞するための目標であって、俺に本気で達成させようとする目標ではなかったのだと分かり、少し安心した。
俺とキョウヘイは車が停まっているキョウヘイの自宅の前まで走った。到着すると使用人らしき人が車に乗り込もうとする俺に布で包まれた何かと水筒を渡してくれた。
俺が訳が分からずにポカンとしていると、キョウヘイが、「それは夕飯のサンドイッチだよ。セイのお母さんに夕飯はこっちで用意してますって言ったけど、もう俺んちで食べる時間はないから車の中で食べられるように用意してもらったんだ。」と説明してくれた。
「気を遣わせて悪い。ありがとな。キョウヘイ。」
「うん。だけどお礼は俺じゃなくて上岡(カミオカ)さんたちに言ってくれないか。」
「そうだった。みなさん、ありがとうございます!あと、多分この場にはいないサンドイッチを作ってくれた方にもお礼を言ってたと伝えていただけますか?」
「分かりました。伝えておきます。」と俺にサンドイッチを渡してくれた使用人の方が言ってくれたので俺は安心して車に乗り込んだ。
俺は車に乗り込むと運転席にいるカミオカさんに「カミオカさんもありがとうございます。」とお礼を言った。
「いえいえ、こちらこそお礼を言っていただき、ありがとうございます。」
カミオカさんはキョウヘイ専属の使用人でキョウヘイを学校まで車で送り迎えをしている。パッと見た感じ50代くらいの温和なおじさんに見えるが、キョウヘイから聞いたところによると、いくつかの格闘技を習得していてかなり強いらしく、キョウヘイが不審者に襲われたりした時にキョウヘイを守るボディーガードの役割も兼務しているらしい。お礼を言っただけだが、こうやってカミオカさんと話したのは数回しかない。
「それじゃ、セイの家に向かって出発しようか。」
いつの間にか隣の席にキョウヘイが乗り込んでいたので、俺は、「キョウヘイ!お前付いてきていいのか?門限過ぎてるけど。」と疑問を口にしていた。
「大丈夫。大丈夫。親の許可はもらってるよ。セイのお母さんに話したいことがあるからな。」
「そっか。ならいいけど。」
「それでは出発します。」
そう言うとカミオカさんは車を発進させた。
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