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医務室のベッドの中で、頭に浮かんでくるのは、死んだ母親のことだった。
「お母さん、何しているの?」
まだ幼い面影を残している自分の問いかけに、母は答えようともせず、無言でグラスを口に運んでいた。父が死んでから、荒んだ毎日を過ごし、別人のようになってしまった母。真帆が中学生の頃だった。
次に母を求めたのは、兄妹を快く引き取ってくれた伯母だった。最初はこの人が本当の母親だったのではないか、と錯覚しそうになるほど、真帆たちのことをかわいがってくれた。自分でも当時は毎日が楽しかった記憶がある。父が死んでから母が死ぬまでの何年間の分を取り戻すかのように、伯母に甘えもした。伯父夫婦が営む食堂の手伝いも充分にしたし、多少のわがままもいってみたりもした。はつらつとした日々を送っていたと思う。
しかし、そんな時間も長く続かなかった。そもそも伯母を母親のように思い込むこと事態が間違いだったのだ。
あの出来事も真帆の心に衝撃を与えたが、それ以上に心をえぐったのはあの日の前日に伯母が発したあの言葉だ。
「あの子を売ればいいわよ」
知らぬ間に涙が目尻から流れ落ちる。生暖かい感触が耳の中を濡らして、そのことに気づく。
信頼していた人の裏切りがこうも人の心を深く傷つけるとは知らなかった。あれから何年もの月日が流れていったのに、心の傷はあの日のままだ。傷口は深く、今だに癒えない。
袖口で涙を拭い、枕に顔を埋める。口も鼻もふさがれて、呼吸が苦しいが、これくらいでちょうどよいように思う。深く息を吸ったり吐いたりを繰り返す。
そうしているうちに、熱くなった頭の熱がだんだん覚めていくのを感じる。幾分、冷静さを取り戻すと、思い出したくないのに、あの出来事の記憶が蘇っていた。
衝撃的な伯母の言葉を耳にする何週間か前から、伯父夫妻の様子はおかしかった。それでも、店は通常通り営業していたし、朝も従兄弟たちと変わらなく御膳を並べて朝食をとっていた。最初に様子がおかしくなったのは、伯父だった。カラリとした江戸っ子風情の雰囲気が無くなり、かわりにおどおどとした印象を与えるようになった。店の厨房でフライパンを振っていても、客の出入りを気にしていて、落ち着きがなくなった。伯母はたいした変化は見えなかったが、客が引くと、すぐに伯父を自宅に続く廊下に呼び出し、こそこそと話をするようになった。
同じ家で毎日暮らしていて、気にならないわけがない。
夫婦を脅かしている原因を知るのに時間はかからなかった。伯父が電話をしているのを立ち聞きしたのだ。普段なら絶対そんなことはしない。伯父夫婦の家での新しい生活は、当時の真帆にはどうしても失いたくないものだった。息を潜めて、廊下の陰に立っている間、心臓の音が耳に届きそうなほど緊張していた。伯母がやってきたらどうしようか。なんと言い訳をすればいいだろうか。伯父の様子が心配でつい魔がさしたのだ、と言えば許してもらえるだろうか。そんなことを考えながらも、わずかに聞こえてくる伯父の声は断片的で、なかなか話が見えて来ない。電話は長かった。時間が経つに連れて、自分の立ち聞きなどという行為がひどく醜いことに思え、羞恥心から何度も立ち去ることも考えた。しかし、伯父の懇願するような声は、真帆を不安にさせ、その原因が知りたいという好奇心からは逃れられなかった。
「そんなに用意できませんよ」
「こんな馬鹿な話、ないですよ……ひどいじゃないですか」
「もう少し待ってもらえませんか」
「店を手放すわけにはいきません」
「いえ、家族にはまだ…」
「本当にそんな金額なんでしょうか」
「ほんとに、払えませんよ……なんとか、なんとかなりませんか」
濁す言葉が多かったが、だんだんに事態が飲み込めてきた。何かの事情で多額の借金を背負ったのだ。伯父の途方に暮れた様子を見ると、返せるあてもなさそうだ。もしかしたら、不本意ながらに背負わされたものなのかもしれない。しかも、返済を迫っている相手は銀行のような穏やかな相手ではなさそうだった。
結局、伯父が受話器を置くまで同じ場所に立っていた。電話を終えても、脱力した伯父は動こうとしない。
真帆は足音を立てぬように、忍び足で自分と兄に宛てがわれた部屋へと戻った。兄に早くこの話を聞かせなければ、と心拍数の上がった胸を抑えながら、兄の帰宅を待っていたが、この日も兄は帰らなかった。
電話を立ち聞きした翌日から、柄の悪そうな男たちが店の回りをうろつくようになった。声をかけられることはなかったが、自分がヘビに睨まれたカエルのようになるのが怖くて、目も合わせず、足早に通り過ぎた。少しも顔を上げなかったから、男たちが、真帆の容姿に興味を持ったことなど、到底気付かなかった。
伯父は、おどおどするばかりで、男たちを追い払うわけでも、話をつけるわけでもなく、ただ怯えていた。店に入ってきたことはないようだったが、確実に商売に影響が出ていた。客足が最初は少なくなり、やがてプツリと途切れたのだ。男たちの嫌な雰囲気は、誰しもが不快に感じているらしい。このままでは、店を取られるまでもなく、潰れてしまいそうだった。
兄に詳細を話して、不安を取り除いて欲しかったが、友人宅が気に入ったようで、帰ってくるのは着替えを取りに来る程度のことだった。
そんな日々が永遠に続くのかと、緊張も限界に達しようという頃、ようやく、伯父は重い重いおよびごしをあげた。交渉を申し出たのだ。男たちを店に招き入れ、こんな営業妨害されたのでは、返せる金だって返せない、と言った。彼等は、まともに働いてなんとかなる金額かい?と鼻で笑った。ボスが、夜電話を入れると一人の男が言った。いくつか返済方法を用意してやるから、そこから選ぶように、と言った。
店から自宅へ続く廊下でこっそりと話を聞いていた真帆は、男たちの提示してくる返済方法とは何なのか、見当もつかなかった。
その晩である。我が耳を疑うあの言葉を聞いたのは。しかも、伯父ではなく、伯母の口から。
「あの子を売ればいいわよ」
もはや自分の子供のようだなどとは思っていなかったのだろう。あるいは、最初からそうだったのかもしれない。真帆だけが、幻想を見ていただけだったのかもしれない。
伯父は即答せずに、迷っている様子だった。考え込む伯父を説得しようと真帆を売ってもよい理由を次々に並べたてる伯母の言葉は酷かった。
「私だってこんなことは言いたくないけど、葬儀の時に聞いたのよ。あの子の母親のうわさ。まあ、あなたの弟のお嫁さんなんだから、私もその時はまさかって思ったけど。今思えば、本当の話だったかもしれないわね」
「何の話だ?」
「ほら、酒浸りだったでしょ、あの人。ベランダから事故死した時も随分飲んでたっていうじゃない」
「その話か」
「違うわよ。そうじゃなくて、言いにくいけどね……身売りしてたって話よ。お酒を買うお金が無くなると、売春まがいのことをして、お金作ってたんだって」
「本当なのか?」
伯父は本気で驚いている。だが、真帆には初めて聞く話ではなかった。
「それらしい場所に似た人がいるのを見たっていう人もいたらしいって話よ」
伯母はまどろっこしい表現をした。真帆には現実味がない話に思えたが、第三者からすると、そうでもないらしかった。似ていると言うだけで、白かろうと、黒っぽく見えたりするのだろう。
「母親が同じようなことをしていたんだから、真帆だってその母親の血が半分は流れてるわけじゃない?血は争えないっていうし」
真偽もわからない話だというのに、夫婦の間では母が売春をしていたということになっている。
大好きな母ではなかったが、母が言われのないことで、不名誉な扱いを受けていることに、真帆の胸はチクリと痛んだ。
伯父に向けて発されている言葉はさらに真帆を傷つける。
「真帆だって、このまま生きてたって、どうせろくな人生送らないわよ」
酷かった。心がトラックで跳ねられたような衝撃があった。軽トラではない。ニトントラックより上だ。心が死んだ。
それからも、伯母は真帆の母親の悪口を並べ立てた。
「なあ、お前。死んだ者をそんなに悪く言うもんじゃないぞ」
伯父の飽き飽きしたような一言で、やっと怒涛の攻撃が止んだ。
もう、たくさんだ。真帆は泣いていた。苦しいくらいに込み上げてくる涙と胸の痛みをどうにか抱えて、自分の部屋に戻った。
その晩は、一人で祈るような気持ちで眠った。どうか、私をあいつらに売らないで。その晩は、一人で祈るような気持ちで眠った。どうか、私をあいつらに売らないで。
来ないでよいとどんなに願っても、朝が来た。そして、男たちがやってきて、真帆は伯母に呼ばれた。
「お母さん、何しているの?」
まだ幼い面影を残している自分の問いかけに、母は答えようともせず、無言でグラスを口に運んでいた。父が死んでから、荒んだ毎日を過ごし、別人のようになってしまった母。真帆が中学生の頃だった。
次に母を求めたのは、兄妹を快く引き取ってくれた伯母だった。最初はこの人が本当の母親だったのではないか、と錯覚しそうになるほど、真帆たちのことをかわいがってくれた。自分でも当時は毎日が楽しかった記憶がある。父が死んでから母が死ぬまでの何年間の分を取り戻すかのように、伯母に甘えもした。伯父夫婦が営む食堂の手伝いも充分にしたし、多少のわがままもいってみたりもした。はつらつとした日々を送っていたと思う。
しかし、そんな時間も長く続かなかった。そもそも伯母を母親のように思い込むこと事態が間違いだったのだ。
あの出来事も真帆の心に衝撃を与えたが、それ以上に心をえぐったのはあの日の前日に伯母が発したあの言葉だ。
「あの子を売ればいいわよ」
知らぬ間に涙が目尻から流れ落ちる。生暖かい感触が耳の中を濡らして、そのことに気づく。
信頼していた人の裏切りがこうも人の心を深く傷つけるとは知らなかった。あれから何年もの月日が流れていったのに、心の傷はあの日のままだ。傷口は深く、今だに癒えない。
袖口で涙を拭い、枕に顔を埋める。口も鼻もふさがれて、呼吸が苦しいが、これくらいでちょうどよいように思う。深く息を吸ったり吐いたりを繰り返す。
そうしているうちに、熱くなった頭の熱がだんだん覚めていくのを感じる。幾分、冷静さを取り戻すと、思い出したくないのに、あの出来事の記憶が蘇っていた。
衝撃的な伯母の言葉を耳にする何週間か前から、伯父夫妻の様子はおかしかった。それでも、店は通常通り営業していたし、朝も従兄弟たちと変わらなく御膳を並べて朝食をとっていた。最初に様子がおかしくなったのは、伯父だった。カラリとした江戸っ子風情の雰囲気が無くなり、かわりにおどおどとした印象を与えるようになった。店の厨房でフライパンを振っていても、客の出入りを気にしていて、落ち着きがなくなった。伯母はたいした変化は見えなかったが、客が引くと、すぐに伯父を自宅に続く廊下に呼び出し、こそこそと話をするようになった。
同じ家で毎日暮らしていて、気にならないわけがない。
夫婦を脅かしている原因を知るのに時間はかからなかった。伯父が電話をしているのを立ち聞きしたのだ。普段なら絶対そんなことはしない。伯父夫婦の家での新しい生活は、当時の真帆にはどうしても失いたくないものだった。息を潜めて、廊下の陰に立っている間、心臓の音が耳に届きそうなほど緊張していた。伯母がやってきたらどうしようか。なんと言い訳をすればいいだろうか。伯父の様子が心配でつい魔がさしたのだ、と言えば許してもらえるだろうか。そんなことを考えながらも、わずかに聞こえてくる伯父の声は断片的で、なかなか話が見えて来ない。電話は長かった。時間が経つに連れて、自分の立ち聞きなどという行為がひどく醜いことに思え、羞恥心から何度も立ち去ることも考えた。しかし、伯父の懇願するような声は、真帆を不安にさせ、その原因が知りたいという好奇心からは逃れられなかった。
「そんなに用意できませんよ」
「こんな馬鹿な話、ないですよ……ひどいじゃないですか」
「もう少し待ってもらえませんか」
「店を手放すわけにはいきません」
「いえ、家族にはまだ…」
「本当にそんな金額なんでしょうか」
「ほんとに、払えませんよ……なんとか、なんとかなりませんか」
濁す言葉が多かったが、だんだんに事態が飲み込めてきた。何かの事情で多額の借金を背負ったのだ。伯父の途方に暮れた様子を見ると、返せるあてもなさそうだ。もしかしたら、不本意ながらに背負わされたものなのかもしれない。しかも、返済を迫っている相手は銀行のような穏やかな相手ではなさそうだった。
結局、伯父が受話器を置くまで同じ場所に立っていた。電話を終えても、脱力した伯父は動こうとしない。
真帆は足音を立てぬように、忍び足で自分と兄に宛てがわれた部屋へと戻った。兄に早くこの話を聞かせなければ、と心拍数の上がった胸を抑えながら、兄の帰宅を待っていたが、この日も兄は帰らなかった。
電話を立ち聞きした翌日から、柄の悪そうな男たちが店の回りをうろつくようになった。声をかけられることはなかったが、自分がヘビに睨まれたカエルのようになるのが怖くて、目も合わせず、足早に通り過ぎた。少しも顔を上げなかったから、男たちが、真帆の容姿に興味を持ったことなど、到底気付かなかった。
伯父は、おどおどするばかりで、男たちを追い払うわけでも、話をつけるわけでもなく、ただ怯えていた。店に入ってきたことはないようだったが、確実に商売に影響が出ていた。客足が最初は少なくなり、やがてプツリと途切れたのだ。男たちの嫌な雰囲気は、誰しもが不快に感じているらしい。このままでは、店を取られるまでもなく、潰れてしまいそうだった。
兄に詳細を話して、不安を取り除いて欲しかったが、友人宅が気に入ったようで、帰ってくるのは着替えを取りに来る程度のことだった。
そんな日々が永遠に続くのかと、緊張も限界に達しようという頃、ようやく、伯父は重い重いおよびごしをあげた。交渉を申し出たのだ。男たちを店に招き入れ、こんな営業妨害されたのでは、返せる金だって返せない、と言った。彼等は、まともに働いてなんとかなる金額かい?と鼻で笑った。ボスが、夜電話を入れると一人の男が言った。いくつか返済方法を用意してやるから、そこから選ぶように、と言った。
店から自宅へ続く廊下でこっそりと話を聞いていた真帆は、男たちの提示してくる返済方法とは何なのか、見当もつかなかった。
その晩である。我が耳を疑うあの言葉を聞いたのは。しかも、伯父ではなく、伯母の口から。
「あの子を売ればいいわよ」
もはや自分の子供のようだなどとは思っていなかったのだろう。あるいは、最初からそうだったのかもしれない。真帆だけが、幻想を見ていただけだったのかもしれない。
伯父は即答せずに、迷っている様子だった。考え込む伯父を説得しようと真帆を売ってもよい理由を次々に並べたてる伯母の言葉は酷かった。
「私だってこんなことは言いたくないけど、葬儀の時に聞いたのよ。あの子の母親のうわさ。まあ、あなたの弟のお嫁さんなんだから、私もその時はまさかって思ったけど。今思えば、本当の話だったかもしれないわね」
「何の話だ?」
「ほら、酒浸りだったでしょ、あの人。ベランダから事故死した時も随分飲んでたっていうじゃない」
「その話か」
「違うわよ。そうじゃなくて、言いにくいけどね……身売りしてたって話よ。お酒を買うお金が無くなると、売春まがいのことをして、お金作ってたんだって」
「本当なのか?」
伯父は本気で驚いている。だが、真帆には初めて聞く話ではなかった。
「それらしい場所に似た人がいるのを見たっていう人もいたらしいって話よ」
伯母はまどろっこしい表現をした。真帆には現実味がない話に思えたが、第三者からすると、そうでもないらしかった。似ていると言うだけで、白かろうと、黒っぽく見えたりするのだろう。
「母親が同じようなことをしていたんだから、真帆だってその母親の血が半分は流れてるわけじゃない?血は争えないっていうし」
真偽もわからない話だというのに、夫婦の間では母が売春をしていたということになっている。
大好きな母ではなかったが、母が言われのないことで、不名誉な扱いを受けていることに、真帆の胸はチクリと痛んだ。
伯父に向けて発されている言葉はさらに真帆を傷つける。
「真帆だって、このまま生きてたって、どうせろくな人生送らないわよ」
酷かった。心がトラックで跳ねられたような衝撃があった。軽トラではない。ニトントラックより上だ。心が死んだ。
それからも、伯母は真帆の母親の悪口を並べ立てた。
「なあ、お前。死んだ者をそんなに悪く言うもんじゃないぞ」
伯父の飽き飽きしたような一言で、やっと怒涛の攻撃が止んだ。
もう、たくさんだ。真帆は泣いていた。苦しいくらいに込み上げてくる涙と胸の痛みをどうにか抱えて、自分の部屋に戻った。
その晩は、一人で祈るような気持ちで眠った。どうか、私をあいつらに売らないで。その晩は、一人で祈るような気持ちで眠った。どうか、私をあいつらに売らないで。
来ないでよいとどんなに願っても、朝が来た。そして、男たちがやってきて、真帆は伯母に呼ばれた。
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