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パーティに出ると、あいもかわらず僕の周りはぽっかりと空いていて、進むとざぁっとさざ波のように避けていく。
「ルイス様!」
人混みの中から、ディヴィス様がこちらに来た。ぽっかり空いた中に、ディヴィス様と僕だけになる。
「ディヴィス様、良かった、渡したい物があったんです。」
「俺に、なんでしょう?」
レシピと設計図、マジックバックに入った魔道具を渡した。
「これは……つまり、その、オリュ草が食べられるようになる、ということですか?」
「はい、まずは食べてみてください」
「美味い……このレシピどうりにすればオリュ草がこんなに美味しく食べられるようになると……」
「マジックバックの中に、精米するための魔道具が入っています。」
「素晴らしいレシピです。使用料はどれくらいなのでしょうか。」
「いりません、少しでも足しになれば」
「精米以外は鍋で作れるようになっています。」
「っありがとう、ございます!」
ディヴィス様が僕の前に跪いて、お礼を述べた。
「顔を上げてください!」
「いえ、これくらいでは足りません、俺に出来ることであれば、またいずれお礼を。」
ざわざわ……周りの人が騒ぎ出した。
「私も、食べてみていいかな?」
アーサー様がこちらに向かってきた。
「美味しい!これはすごいね、ルイス。」
リオン様も食べて、なにか考え込んでいた。美味しくなかったかな……
「あの、美味しくなかったですか?」
「いや、美味かった。」
また黙ってしまったリオン様。
アーサー様が食べたことで、周りの人も食べてくれた。
美味しいと言ってくれる人が多くて、とても良かった。
ディヴィス様と最後にお話をした、もう会うことはないだろう……ぎゅうっと胸が締め付けらる。
部屋に戻ったあと、なんだか現実味がなくて、ふわふわとしていた。
よく分からない気持ちがぐしゃぐしゃで、疲れていた体はあっという間に眠りに落ちていった。
しばらく僕はふわふわ、ぼーっとする日々を過ごしてしまった。
夜になって、窓の外を見ながら考える。物語を変えることができた……
なんだか今まで、夢を見ているような気分だったのだ。現実味がなくて、ふわふわとしていた。
「死ぬまでに、もう出来ることはないかな……」
この世界に生きているということ、今更ながら、死んでしまったという事実を僕はやっと実感した。
もう姉さんに会うことも出来ない。姉さん……寄りによって僕まで事故で死ぬなんて。
気丈に振舞っていたけれど、夜中に父さんと母さんの写真の前で泣いていたのを知っている。
「もっと……一緒にいたかったっ
もっと、一緒にご飯食べたかったっもっと話したかったっもっと……」
後から後から涙が溢れてきて、止まらない。僕はその時、異世界に転生してから初めて、泣くことができた。
「ふぅっく、うっく、ひっ」
なかなか涙が止まらなくて、ようやく落ち着いたのは明け方の、空がしらみ出した頃だった。
泣き明かしてしまった……でも、少しだけ前向きな気持ちになれた。
ゆっくり、受け止めようと思う。
そう、本でも読んで。
「ルイス様!」
人混みの中から、ディヴィス様がこちらに来た。ぽっかり空いた中に、ディヴィス様と僕だけになる。
「ディヴィス様、良かった、渡したい物があったんです。」
「俺に、なんでしょう?」
レシピと設計図、マジックバックに入った魔道具を渡した。
「これは……つまり、その、オリュ草が食べられるようになる、ということですか?」
「はい、まずは食べてみてください」
「美味い……このレシピどうりにすればオリュ草がこんなに美味しく食べられるようになると……」
「マジックバックの中に、精米するための魔道具が入っています。」
「素晴らしいレシピです。使用料はどれくらいなのでしょうか。」
「いりません、少しでも足しになれば」
「精米以外は鍋で作れるようになっています。」
「っありがとう、ございます!」
ディヴィス様が僕の前に跪いて、お礼を述べた。
「顔を上げてください!」
「いえ、これくらいでは足りません、俺に出来ることであれば、またいずれお礼を。」
ざわざわ……周りの人が騒ぎ出した。
「私も、食べてみていいかな?」
アーサー様がこちらに向かってきた。
「美味しい!これはすごいね、ルイス。」
リオン様も食べて、なにか考え込んでいた。美味しくなかったかな……
「あの、美味しくなかったですか?」
「いや、美味かった。」
また黙ってしまったリオン様。
アーサー様が食べたことで、周りの人も食べてくれた。
美味しいと言ってくれる人が多くて、とても良かった。
ディヴィス様と最後にお話をした、もう会うことはないだろう……ぎゅうっと胸が締め付けらる。
部屋に戻ったあと、なんだか現実味がなくて、ふわふわとしていた。
よく分からない気持ちがぐしゃぐしゃで、疲れていた体はあっという間に眠りに落ちていった。
しばらく僕はふわふわ、ぼーっとする日々を過ごしてしまった。
夜になって、窓の外を見ながら考える。物語を変えることができた……
なんだか今まで、夢を見ているような気分だったのだ。現実味がなくて、ふわふわとしていた。
「死ぬまでに、もう出来ることはないかな……」
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「もっと……一緒にいたかったっ
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「ふぅっく、うっく、ひっ」
なかなか涙が止まらなくて、ようやく落ち着いたのは明け方の、空がしらみ出した頃だった。
泣き明かしてしまった……でも、少しだけ前向きな気持ちになれた。
ゆっくり、受け止めようと思う。
そう、本でも読んで。
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